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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月2日(日)☀️/☀️
160/279

14-11 長命


 彼女の父、剛志さんが語り続ける。


「ワシの場合は…吉江と知り合って、結婚の話が出て、入り婿で話が決まって、そこで市之助さんから『門』の話が出たんだ。そりゃ最初は驚いたなんてもんじゃないよ」

「あっ、そうか!そうですよね」


「二郎君は、わかってくれそうだね」

「ええ、この年齢まで『門』の存在すら知らないで生きてきました。急に『門』の話を聞いた時には信じられなかったんです」


「そうだろ、そうだろ。ワシもそうだったよ。吉江は一言も言わないし、初めて会った市之助さんは金髪だし、あん時は驚いた以前に頭がおかしくなりそうだったよ」

 全くその通りだと思う。

 いや、剛志さんの言う通りだ。


 今まで何も知らないで生きてきた人間に、急に別次元?別世界?な話をされても素直に受け入れられる訳がない。


 その時に進一さんが数冊のアルバムを抱えて戻ってきた。


「二郎くんも父さんもお待たせ」


 進一さんが持ってきた数冊のアルバムをテーブルの上に置く。

 そのアルバムを剛志さんがめくり、中身を確認している。

 剛志さんが順番を気にしながら、1冊目のアルバムを選んで渡してきた。


「二郎君、これが俺が初めて会った頃の市之助さんだよ」


 渡されたアルバムを開くと、そこにはハリウッドスターが写っていた。

 イケメンとは、こんな感じの男性の事を言うのだろう。

 彼女の両親への挨拶で、こんなイケメンが出てきたら、こんなイケメンが父親ですと彼女に紹介されたら、俺だったら目が点になるだろう。


「市之助さんって俳優でも通用しますね」

「二郎君もそう思うか!ワシも初めてあった時にハリウッドスターが出てきたと思ったよ。しかも吉江と付き合うなら婿入りしろと言われて何かのドッキリかと思ったほどだ」

 剛志さん、少し酔ってきました?

 何か饒舌な感じですが…

 おっとグラスが空ですね。俺のお酌ですいません。


 何枚かアルバムのページをめくると、全てに金髪イケメンの市之助さんが写っている。

 なかなかの写真の量だ。

 これって、誰が撮影したんだ?


「なかなかの量の市之助さんですね」

「京子お婆ちゃんが、市之助さんのファンでこうなったらしいよ」

 進一さんは女性陣が座るソファーを見ながら、俺の疑問に小声で答える。


 何で小声なんだ?


「二郎くんも父さんも小声でね。京子お婆ちゃんに見つかると長くなるからね(笑」

「うんうん」

 そこで剛志さんも頷くんですね。


「次のこれが、僕が生まれた時だ」

 そう言って、今度は進一さんが別のアルバムを渡してきた。

 そのアルバムには、生後半年ぐらいの金髪の幼子を抱く、これまた金髪イケメンの笑顔な市之助さんが写っていた。


 先程の写真を思い出しながら見ていたが、不思議なことを感じた。

 最初に見せられた市之助さんの写真と、今見ている写真では市之助さんに老化が少ない感じがする。


「市之助さんの年齢に疑問を感じるんですが…」

「ハッハッハ」「ククク」

 二人で顔を見合わせて小声で笑うんですか?


「二郎くん、エルフの寿命ってどのくらいだと思う?」

「エルフの寿命?」

 俺は進一さんの問いかけに首を傾げる。


「ハーフエルフの寿命でも良いよ」

「進一さん、その付近は勘弁してください。ついこの間、バーチャん…桂子お婆ちゃんがドワーフとか聞いて、その後に市之助さんがハーフエルフの話を聞いたばかりなんです」

「そう言えば、桂子さんはドワーフだったな。二郎君はドワーフの寿命を知ってるかい?」

 剛志さん。酔ってるでしょ。

 見ればグラスは空だし瓶ビールは2本とも飲み干したし。


 俺は初心者なんだから、エルフの寿命なんて知らないよ。

 ドワーフ=バーチャんの寿命は気になるが。


「まずはエルフの寿命だが短命でも400年らしいんだ」

「400年?!」

「「シーっ」声が大きい」

 剛志さんと進一さんに叱られてしまった。

 慌てて口を押さえ女性陣を見たが、向こうは向こうで盛り上がっていた。


「二郎くん、その、もう少し静かに驚いて欲しい」

「ハッハッハ。進一、静かに驚くなんて無理だろ」

「す、すいません驚きばかりで…」


「進一、さっきから二郎君と話してたが、彼はかなりの初心者だぞ?」

「父さんはどこまで話したの?」


「ワシが婿入りした付近だな。今見た写真、進一が生まれた時ぐらいか」

「父さんが継げなかった話は?」


「継げなかった話しはしたが、継ぐ継がないは進一に譲るぞ」

「そうだね。その方が良いね」


 継ぐ継がないの話になりそうだ。

 だが、その前に聞いておきたいことがある。

 バーチャん=ドワーフの寿命だ。


「エルフが長命なのはわかりました。ドワーフはどうなんですか?」

「そうか二郎君は桂子さんが心配だよな」

「驚くなよ二郎くん」

 そう言って進一さんは小声で囁いた。


「エルフと同じぐらいで400年は生きるらしい」

「よっ…」

 その言葉を聞いて、思わず俺は自分の口を押さえた。

 また大きな声を出しそうになっていた。


「ハッハッハ」「ククク」

 剛志さんと進一さん。小声で笑わないで。


「だが安心しろ。市之助さんの享年は78歳だ」

「父さん。それは安心できないよ。二郎くんは桂子さんが心配なんだよ」

 はい。俺はバーチャんの寿命が心配です。

 長命なエルフが78歳で亡くなってるんだったら、バーチャんも近い年齢だ。


「それを言ったら、ワシはお前が心配だぞ。いくら長命とはいえ最近は無理をしとるじゃないか」

「そこは控えるようにしてるだろ。それに、二郎くんに話すには早過ぎるよ」


「おっと、そうだな。二郎君に話すには早過ぎた。すまんすまん」

「二郎くん、詳しい話は飲みながらにしよう。ささ、グラスが空いてるじゃないか、もう一本ビールを開けるか?」


「そうだ二郎君。日本酒や焼酎はどうだ?島の名産があるんだ」


 ビールで良いかを聞いてくる進一さん。

 日本酒と焼酎もあると言い出す剛志さん。


 これって、何も知りたいことがわからないままで、酒で潰されそうな気がする。


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