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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月2日(日)☀️/☀️
159/279

14-10 隔世遺伝


「由美子、二郎君。もう一度聞くが、お伊勢様には行ってないんだな?」

「「ええ、行ってないです」」


「父さん。二人の様子だと行ってないみたいだよ。安心と言うか…二人が一緒になるなら結果的に行くことになるさ」

 進一さん。少しニヤニヤしてるね。


「それもそうね。由美子、後がないんだから直ぐ行きなさい!」

 吉江さん。また変な言葉がついてますけど?


「まてまて、みんな慌てるな」

 吉江さんの急く言葉を、剛志さんが制止する。


「そうです。皆さんの話が理解できません」

 俺は自分の理解できない方向に話が進むのを止めたくて、剛志さんの言葉に便乗して声を上げた。


 その時、金髪の恭平君が赤福を見つめながら、助け船の言葉を発した。


「ママ~ おばちゃんの おみやげ たべれないの?」

「おやおや、恭平は食べたいのかい?」

 恭平君と京子お婆ちゃん。皆の話を止めてくれて、ありがとう。


「うん。ぼく たべたい!」

「恭平ちゃん。おばちゃんじゃないよぉ~ おねえさんだよぉ~」

 秦さん(由美子さん)。恭平君の『おばちゃん』発言に拘る(こだわる)のは、そろそろ諦めようね。



 女性陣と恭平君は、ソファーで赤福とお茶でおやつの時間となった。


「里依紗。悪いけど恭平を見てて欲しいんだ」

「吉江も心配しないで、京子母さんを見てて欲しい」

 進一さんが里依紗さんへ恭平君に気をやる声をかけ、剛志さんは母親を気遣う。

 二人の言葉を聞いて、剛志さんと進一さんは、俺と男同士で話しをしたいんだと感じた。

 ふと彼女と目線が合ったので、軽く頷くと彼女も頷いた。

 どうやら場の雰囲気を彼女は分かってくれたようだ。


 俺は進一さんと剛志さんに連れられ、ダイニングテーブルで一献傾けることになった。


「「じゃあ、男同士で話をしよう」」

 ああ、やっぱりな…

 剛志さんと進一さんの言葉に納得しつつも、少し嵌められた気分になった。


 けれどもこれは、通るべき道だろう。

 そして避けられない道だろう。

 むしろ避けるのは適切ではない道だろう。


 但し、少し歩が悪い。

 彼女の父親と兄さんが相手なのだ。


「二郎くんも父さんもビールで良いね」

 そう言って進一さんは冷蔵庫から瓶ビールを2本、冷やしたグラスを3つ持ってきた。

 進一さんの酌で冷されたグラスにビールが注がれる。

 3人でグラスを手に持ち、軽く持ち上げて乾杯の仕草をする。


「二郎くんは、お伊勢様の話を本当に知らないんだね」

「ワシも早まってしまったな」

「ええ、お伊勢様って伊勢神宮のことですよね?私が知ってるのは、その程度です」

 進一さんの言葉で始まり、剛志さんの訂正、そして俺の無知が続く。


「二郎くん、端的に言うね。『門』に関わってる者が婚姻する際には、お伊勢様に詣でるんだよ」

「うんうん」

 進一さんの言葉に、剛志さんが頷く。


「じゃあ、進一さんも伊勢神宮に?」

「ああ、里依紗と結婚する際にお伊勢様に詣でたよ」

「ワシも婿入りする際には、吉江とお伊勢様に詣でたぞ」

 なるほど。

 二人の言葉から、伊勢神宮に詣でる話しに察しが着いた。

 けれども俺は、お伊勢様へ詣でる事については驚きは抱かなかった。

 むしろ彼女の父親である剛志さんが、入り婿なことに興味を抱いてしまった。


「あの…変なことを聞いても良いですか?」

「何かな?」

「聞きにくそうだね。二郎くん」


「その、進一さんの髪の毛なんですが…」

「ハッハッハ。進一、やっぱり目立つんだよその金髪は」

「クックック。二郎くんは気になるかい?」


「息子さんの恭平君も金髪ですが、由美子さんのお父さんは黒髪ですよね」

「その件か。進一、市之助さんの写真があったろ。直ぐに出せるか?」

「ちょっと待って。持ってくるから」

 そう言って、進一さんは席を立った。

 剛志さんの言った、市之助さんの写真を取りに行ったのだろう。


「市之助さんって、隠岐の島の門からやってきたハーフエルフの…」

「二郎君は由美子から聞いたのかい?」


「ええ。そう聞きました」

 少し脚色してしまった。

 正しくは、佐々木さんから聞いた言葉


〉市之助さん。隠岐の島の門から出てきたハーフエルフだよね?


 を、彼女が肯定したのだ。


「市之助さんは既に亡くなってるんだが、ワシの義理の父で吉江のお父さんだ。それが見事な金髪だったんだよ。進一や恭平が金髪なのは、カクセイ遺伝とか言うやつだな」

 剛志さん。『隔世遺伝』の事ですね。


「私が見た記念写真では、皆が黒髪だったんで…」

「ああ、あの写真だね(笑」


「ええ、市之助さんを見たのは、あの写真だけでしたし、皆が黒髪だったんで気になってしまって」

「あの写真だろ?市之助さん、家族旅行だからって染めたんだよ。自分が目立つと、家族に迷惑をかけそうだからって言ってたのを思い出すよ」


 そう言って、剛志さんは懐かしむような顔をする。


「あの写真って何年前なんですか?」

「二郎君は桂子さんから聞いてないのかい?」


「ええ、写真を見せられて、皆さんが淡路島に訪れた話だけ聞かされて…」

「桂子さんらしいな。進一が生まれる前だから35年?いや34年前か?」


 やはり、俺が生まれる以前だ。

 そんなに昔から、家族ぐるみの付き合いがあるなんて驚きだ。

 俺が知る限り、バーチャんが秦家と交流があるなんて全く知らなかった。

 剛志さんの言うバーチャんらしいの言葉に、何かこう納得できる感じもする。


 俺はこの有給休暇を取るまで、『門』の存在を知らなかった。

 バーチャんは一言も俺に話さなかった。

 あのサンダースさん=神様、若奥様=女神様、メイドさん=見習い女神、そして執事さんの存在も知らなかった。

 『国の人』な存在や眼鏡なんて、一度も会ったことがなかった。

 それらがあっという間に俺の前に現れたのだ。

 バーチャんは、俺が『門』との関わりを持たないように、とことん伏せていたのだろう。


「その…『門』についてはご存じなんですよね?」

「ああ、それな。詳しい話は進一から聞くと良いよ。俺は継げなかったからな。実際、市之助さんの跡継ぎは進一だしな」


「ええ、継ぐ継がないは進一さんに教えてもらおうと思ってます。実を言うと、『門』について私は何も知らなかったんです」

「ハッハッハ。桂子さんは徹底してるな。お伊勢様の件もそうだが、二郎君は桂子さんから何も聞かされて無かったんだね」


「ええ、本当に無知でして…」

「ふむ。それならワシも同じだよ」


 えっ?剛志さんも同じ?

 さっき、継げなかったとか言ってたけど?


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