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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月2日(日)☀️/☀️
158/279

14-9 お土産


「センパイ、挨拶」

 彼女に囁かれて、何とか自分を取り戻した。


「まずは、私から挨拶させてください」

 俺がそう告げると、皆が軽く頷いてくれたので言葉を続ける。


「由美子さんとお付き合いをさせてもらってます。門守二郎といいます。『門守カドモリ』では仰々しいので『二郎じろう』と呼んでください。今後も末長くよろしくお願いします」

 パチパチパチパチ。

 秦さん(由美子さん)。そこで拍手は変だよ。


「よし!なかなかきちんと挨拶できるじゃないか。それに由美子も二郎君を好いとるようだ。安心したぞ。なあ母さん」

 彼女の父親(剛志さん)が中老の女性(吉江さん)に問いかける。


「本当に安心しました。二郎さんは一郎さんにそっくりだし、礼子さんの面影も感じるわ。桂子さんから聞いた時は驚いたけど由美子も年が歳だから心配してたの」

 彼女のお母さん(吉江さん)から、一郎父さんと礼子母さんの名が出てきた。


「母さんは桂子さんから聞いてたのかい?」

「ええ、最初は驚いたわよ。由美子が一郎さんと礼子さんの息子さんと知り合いと聞いてビックリしたの」


「あらあら、吉江は桂子さんと話したのかい?桂子さん元気にしてた?」

「ええ、元気そうだったわ。今年の新玉ねぎは、出来が悪くて送れないって。代わりに、一郎さんと礼子さんの息子を送るって言われて驚いたの」

 バーチャん。俺は新玉ねぎの代わりですか?


「一番驚いたのが、由美子が二郎さんの会社の同僚だと聞いたときよぉ~」

「「会社の同僚?」」

 秦さんのお父さん(剛志さん)とお婆さん(京子さん)。声がハモりましたね。


「由美子ったら、今まで何も言わないんだもん。桂子さんから聞いて本当に驚いたの」

「お父さんお母さん、それにお婆ちゃん。私もビックリしたの。桂子お婆ちゃんから聞いて、皆が顔見知りだなんて本当に驚いたんだから」


「あらあら、由美子は桂子さんと会ったのかい?」

「うん。昨日…一昨日…その前だね。桂子お婆ちゃんの家に、一晩、泊めさせてもらったの。記念写真も見せてもらいました」


 ピシッ


 彼女の言葉で、彼女の父親(剛志さん)と俺の間に何かが走った気がする。


「じ、二郎君… 由美子がお世話になったようだね」

 こ、怖いです。

 秦さんのお父さん(剛志さん)。視線が怖いです。


 その時、彼女の兄(進一さん)から俺を助ける言葉が出た。


「次は父さんから?それともお婆ちゃんから?」

 ナイスです。由美子さんのお兄さん(進一さん)、見事な助け船です。


「次はワシだな。由美子と進一の父で『剛志つよし』と言う。二郎君、由美子をよろしく頼むぞ」

 そう言って、剛志さんから右手を差し出された。

 これって握手を求めてるんだよな?


「こちらこそ、よろしくお願いします」

 剛志さん。

 笑顔だけど目が笑ってないです。

 それに握手の力が強くて痛いぐらいです。


「それでこちらがワシの母で由美子と進一の祖母になる『京子きょうこ』だ。お婆ちゃん、彼が桂子さんのお孫の二郎君ですよ」

「二郎さん。今日は桂子さんは一緒なのかい?」


「申し訳ありません。今日は私一人です」

「そうかそうか。今度は桂子さんを連れて来てな」

 京子お婆ちゃんはバーチャんに会いたいんですね。


「次は私ね。由美子の母で『吉江よしえ』です。後が無い由美子をよろしくお願いしますね」

 秦さんのお母さん。

 彼女の名前の前に、変な言葉がついてますよ。


「じゃあ次は僕だね。由美子の兄の『進一しんいち』です。二郎くんは、僕に聞きたいことがあるんだよね?それは別に時間を作るから」

「ありがとうございます」

 やはり進一さんは良識派だ。

 助かる。本当に助かる。


「それで、こちらが僕の妻で『里依紗りいさ』だ。それと息子の『恭平きょうへい』だ」

「二郎さん、はじめまして。里依紗です」

「きょうへいです」

 恭平くん。そこでVサインが可愛すぎます。


「二郎君、今日は泊まって行くんだろ?進一とも話があるようだが、まずは一献だな」

「すいません。その前にお渡ししたいものが…」


 お酒を進められたが、まずはお土産を渡したいと思い彼女を見る。

 彼女は慌てて、お土産の詰まった袋を取り出した。

 彼女の親族全員が、何が出てくるかと期待する視線が集まる。


「はい。お土産です」


 彼女がそう言って伊丹空港で購入した『赤福』を出すと、剛志さんと吉江さんが顔を見合わせた。

 進一さんと里依紗さんも、驚いた顔をする。


「おやおや。赤福かい。もうお伊勢様に行ってきたんだねぇ」


 最初に口を開いたのは、彼女の祖母の京子さんだ。

 お伊勢様?

 伊勢神宮のことですよね?


「ちょっと待ってくれ。まさか由美子と二郎君は、もうお伊勢様へ行ったのか?!」

「桂子さんには、お伊勢様の話しはしたけど…」


 彼女の両親、剛志さんと吉江さんからそんな言葉が出るが、少々、理解できない。


 『赤福』を見せただけで、どうしてこんな会話になるんだ?

 もしかして赤福が気に入らなかった?


「申し訳ありません。お気に召さなかったでしょうか?」

「いや、赤福は好物だが…由美子、二郎君。お伊勢様には行ったのかい?」


「「行ってません」けど…」

 思わず彼女とハモってしまった。


「ふぅ~」

 前のめりになっていた剛志さんと吉江さんが、安堵の息をつきながら座り直した。


 よく見れば進一さんも里依紗さんも座り直した。


「もしかして、二郎くんはお伊勢様の事を知らないのかい?」

「お伊勢様=伊勢神宮ですよね?」


 俺は進一さんの問いかけに、その程度しか答えられなかった。


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