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門の守人  作者: 圭太朗
2021年5月2日(日)☀️/☀️
151/279

14-2 伊丹空港


「遅延10分」


 バス車内の前方に掲げられた液晶板の表示が切り替わった。

 先程までは『遅延5分』の表示だったが、10分の遅延に切り替わったのだ。


「10分遅れなら大丈夫ですね」

「大丈夫だよ。まだ余裕がある」

 彼女は少しだけ心配なのだろう。

 それでも1時間以上余裕がある。


「秦さん。実家へのお土産は何が良いかな?さすがに手ぶらではまずいよね」

「そうですね。伊丹空港で買いませんか?」


「そうか、空港で買えば良いね。秦さんのお父さんやお母さん。それにお兄さんへのお土産を買わないとね」

「センパイ。そんなに買うんですか?気を使い過ぎじゃないですか?」


「いやいや。そう言うのって意外と大切だと思うんだ」

「センパイは何が良いと思います?」


「秦さん。待って、選ぶの手伝ってくれないの?」

「手伝って欲しいですかぁ~」


「だって、好みじゃないお土産を持っていったら、印象が悪くなるよね?」

「う~ん。どうしようかなぁ~」


 秦さん。

 何か悪いことを考えてるでしょ?

 顔が小悪魔に見えますよ。


「そもそも、私がセンパイを連れて行くだけで印象は悪いと思います」

「何だよそれ」


「大事な娘が男を連れて来るんですよ。それだけでも印象が悪いと思いませんか?」

「やっぱり、そう言うものなの?」


「もしかしたら、お父さん怒りだすかも?」


 秦さん。どうしてそこでニヤニヤするの?


「センパイ。どうしますぅ~」

「行くの止めて良い?(笑」


「それ、最悪ですよ」

「そうだよね。実家にお邪魔すると言っておいて、お父さんやお兄さんが怖くて来ませんでしたなんて…笑えないよね」



 結果的に、リムジンバスは5分遅延で伊丹空港に到着した。

 それにしても、このリムジンバスはかなり便利だ。

 空港施設の建物に直結するように降りることが出来る。


「センパイ。先にお土産を買いましょう」

「秦さん待って。お願いがある」

 お土産物屋に向かおうとする彼女を、俺は呼び止めた。


「何ですか?センパイ?」

「俺、飛行機に乗るのは始めてなんだ。手続きとか、何をどうしたらよいのか全く何も知らないんだ」


「センパイなら知ってると思ってました」

「それでこそ、お土産を先に買うのが良いかとか、そう言ったことも知らないんだ」


「うんうん。それって教えて欲しいてことですね」

「そう。お願いできる?」


「はい。私のやり方で良ければ?」

「うん。お願いします」


「私の場合は、基本的に荷物は全て預けます。お土産も何もかも預けます。だから先に買いに行きましょう!」


 彼女に連れられ、伊丹空港内のお土産物を販売する店に向かう。


 お土産物を多く取り揃える店に彼女の案内で入ると、『伊勢名物 赤福』を見つけた。

 赤福を見ていると、サンダースさんや若奥様、執事さんとメイドさんを思い出される。

 メイドさんが仏壇に供えた赤福は、その後は眼鏡の手に渡った筈だが、どうなったのだろう。

 あの一行が持参したものだから、何処どこ何時いつ購入したか、購入したのはどんな人物だったかなどを詳細に調べたのだろう。

 神様と女神様が購入したのだ、実際にはあの二人ではなくメイドさんが購入しているとは思う。

 だが、神様が本当に存在していると考えている方々からすれば、神様の容姿を捉える絶好の機会だ。

 それに、包み紙から指紋の採取だって可能かも知れない。


 あっ!

 指紋の採取を考えたら、あの時に出した湯呑み茶碗なんて『国の人』は、まさしく欲しがるものだろう。


「センパイ。赤福にします?」

 俺が赤福を手にしているのを見て、彼女が話しかけてきた。


「えっ?大丈夫なの赤福でも?」

「父や義叔父さん達は喜びますね」


「へぇ~ ちょっと心配なのは、隠岐の島の空港で買えたりしないよね?」

「……センパイ。隠岐の島をなめないでください」

 秦さん。ちょっと言葉が悪いよ。


「隠岐の島の空港には、本土のお土産は売ってないんです」

「なるほど、買い忘れのためのお土産は売ってないんだね」


「はい。むしろ隠岐の島のお土産が多いですね」


 地方空港だからだろう。

 地元の特産品を扱うのが主体で、買い忘れ用なんて準備していないのも頷ける。


 そんな情報を仕入れれたので、安心してお土産を購入して行く。

 彼女のお父さんや義叔父さん達のためにも、赤福は購入した。



「次にチェックインをして、荷物も預けちゃうんです」


 彼女の後をキャリーバッグを引き連れ、購入したお土産も持ちながらJALのカウンターに向かう。


 隠岐の島行きの飛行機に乗る手順や手続きは、全てを彼女に指導してもらった。

 彼女は優しく教えてくれた。

 JALカウンターのお姉さんも、優しく教えてくれた。

 なるほどと理解を深めながら、飛行機に乗るための手順を学んで行く。


 その初めての学びの中、荷物を預ける段階で、俺は更に知識を増やした。


 キャリーバッグの中に『モバイルバッテリー』の存在を問われたのだ。

 モバイルバッテリーが含まれていると、飛行機に乗せられないと言うのだ。


 飛行機に乗せられる基準が160Whだと言うが、これってどのぐらいなのだろうと思案した。


「かなり大容量ですよ」

 JALカウンターのお姉さんが、笑顔で教えてくれる。


 もっとも、キャリーバッグの中にはモバイルバッテリーは入れていないので問題にはならなかった。

 だが、ノートパソコン専用バッグの段階で俺は考えてしまった。

 これって預けて大丈夫だろうか?


「ご心配であれば、手荷物で機内持ち込みをお勧めします」

 JALカウンターのお姉さんが、優しく教えてくれる。


「変なことを聞いて良いですか?」

「はい。何でしょう?」


「お姉さんはノートパソコンを預け入れたことってあります?」

「私は手荷物で機内持ち込みにします」


「ありがとう。これは機内持ち込みにします」

 やはり経験者の知識に従おう。


「では、キャリーバッグはこのままで。お土産物が入った袋はガムテープで口を閉じますね」


 JALカウンターのお姉さんは、テキパキと作業を進めて行った。


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