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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月30日(金)☁️/☂️
145/279

12-19 LUXURY Double Sweet


「こちらがお部屋になります。」


 部屋に案内されて驚いた。

 リビングエリアとベッドルームが別の作りになっている部屋=スイートルームだった。

 当初は漫画喫茶だったのが、もしかしたらラブホだったのが、こんな贅を凝らした部屋になるとは…


「素晴らしい部屋ですね。」

「LUXURY Double Sweet となっております。」

 彼女は部屋を案内してくれる小野山コンシェルジュと親しげに会話している。


 俺には今井コンシェルジュリーダーが付き添い、部屋から出られる「展望テラス」の説明を受けたが、生憎の雨でテラスには出られない。


 ベッドルームに入って別の意味で驚いた。

 キングサイズのダブルベッドが置かれている。


 もしかして彼女と一緒に寝るのか?

 後からエキストラベッドが来るのか?

 もう一部屋、同じ作りの部屋があるのか?


「あら、大きいベッド。」

「当ホテル自慢のWクイーンサイズです。」


「この大きさなら安心ね。」

 秦さん、何が安心なんですか?


「最後は、バスの使い方を案内させていただきます。」

 小野山コンシェルジュの後を彼女と一緒に着いて行く。

 バスはユニットタイプではなく、トイレと別になっており、洗い場にレインシャワー付き、湯槽が別にあったが実家のサイズには負けていた。


「当ホテルは部屋付きのバス以外に、地下2000メートルから汲み上げた天然温泉を使ったSPA施設がございます。」

 今井コンシェルジュリーダーが、少しドヤ顔で説明してくる。


 なるほど、最近のホテルはそうした施設を備えることが「売り」なんだと学ぶことが出来た。


「門守様、ご夕食ですが当ホテルで準備するビュッフェスタイル以外に、和洋中の専門レストランもございます。」


 小野山コンシェルジュの説明を、今井コンシェルジュリーダーが補足する。


「専門レストランであれば、ご予約も出来ます。お部屋でお召し上がりを希望されれば、ルームサービスとしてご提供可能です。」


 俺が彼女を見ると、口パクで何かを伝えようとしている。

 何が伝えたいのかわからず首を傾げると、諦めたかのように彼女自身が小野山コンシェルジュに伝えた。


「ビュッフェスタイルで、色々なものを食べたいです。この素晴らしいホテルの味を堪能させてください。」

「ありがとうございます。」

 彼女と小野山コンシェルジュが笑顔だ。


「ディナーの前に着替えてSPAを堪能したいのですが?」

「では、後程、ご案内しますので準備が整いましたら内線でご連絡をお願いします。」


「そうだ。宅配便をお願いできますか?」

「可能です。サイズはどうされます?」


「私のキャリーバックと同程度の荷物を送りたいんです。」

「では、早々に準備して参ります。」

 そう言って小野山コンシェルジュは今井コンシェルジュリーダーと言葉を交わして、再びダッシュで部屋を出て行った。


 残された今井コンシェルジュリーダーが問いかけてくる。


「他にご用はありますでしょうか?」


 彼女と顔を見合わせ軽く首をふると


「それでは、ご連絡をお待ちしております。」


 そう告げて、静かに部屋を出ていった。


「「ふう~。」肩が凝るね。」

 彼女と共に肩から力を抜きぐったりする。

 リビングエリアのソファーに座り込んで、互いに顔をみて思わず笑いだしそうになってしまう。


 俺も彼女も互いの知る範囲では一般市民だ。

 こんな贅沢な「おもてなし」を受ける身分ではないことは、お互いにわかっている。

 それなのに、ホテルを選んで電話をした途端に身分が変わってしまった。

 戸惑いつつも、何とかここまで対応できたと思う。

 詮索ぎみな問い掛けには、黙れば良いことも学んだ。


 彼女も沈黙が多かった。


「秦さん。随分と静かだったね(笑」

「当然です。沈黙は『金』と言いますよね。」

 う~ん。ちょっと違うよ。


コンコン


 部屋のドアをノックする音がする。

 俺がドアを開けると、小野山コンシェルジュが宅配便の段ボールとガムテープを手にしていた。


「荷造りのお手伝いが必要であれば、遠慮なく声をかけてください。」

「ありがとうございます。」

 俺が段ボールとガムテープを受け取ると、静かにドアが閉められた。

 小野山コンシェルジュ。少し息が荒かったね。

 もしかして走ってきたのかな?


「秦さん。宅配便の段ボールが来たよ。」

 そう言ってリビングエリアを見たが、彼女の姿がない。

 ベッドルームで着替えでもしているのだろうと考え、着替えが終わるまでソファに座って待つことにした。


 …ガサガサ

 ゴソゴソ……


 何をしてるんだ?


「秦さん。そっちに行っても大丈夫?」

「センパイ。これ着ないですよね?」

 ??

 何をしてるんだ?


 そう考えてベッドルームに行くと、彼女は既にラフな姿に着替えていた。

 そして俺のキャリーバックが開かれ、全ての中見がベッドの上に出されていた。

 しかも二つの山に分けられている。


「お、俺のバッグ…」

「はい。お婆ちゃんの言いつけどおりにしますね(ニッコリ」


 え、笑顔が可愛いけど。

 やってることは凄いことだよ。


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