12-14 ハーフエルフ
佐々木さん(元課長)が、俺達の荷物の件でマリコさんを追いかけ戻ってくるまでの間、彼女と二人での会話が続く。
「これで、アスカラ・セグレ社訪問は達成ですよね?」
「いや、マリコさんが佐々木さんに伝えてた自社製…Saikasと魔石の件が残ってるな。」
「Saikasの件は、部長が削除した理由がわかる話ですよね?」
「うん。そうだね。削除した理由がわかるって部長が言ってたね。」
「もう一つの魔石って光る石のことですか?」
「秦さん魔石を知ってるの?」
「小さい時に祖父に見せてもらいました。祖父が念じると石が綺麗に光るんです。」
驚いた。彼女は『米軍の門』を開けるのに使う魔石の実物を、幼少期に見ているのだ。
「その魔石って、隠岐の島の実家に今もあるの?」
「あるんじゃないかな?」
見てみたい。明後日、彼女の実家に行ったら見せてもらえるかな?
そうだ、今は彼女と二人だ。
バーチャんの言ってた『エルフの娘』と、マリコさんが言ってた『エルフ』の話を聞いておこう。
「秦さんって、エルフなの?」
「う~ん。祖父はハーフエルフでしたから私は…」
ハーフエルフ?何ですかそれ?
その時、佐々木さん(元課長)が戻ってきた。
「マリコさん謝ってたよ。荷物は警備員が継続して見てるから安心して。」
「お手数をおかけします。」
「ありがとうございます。」
「さっき、エルフとか聞こえたけど?」
「ああ、それですね。私の祖父がハーフエルフってセンパイと話してたんです。」
秦さん、佐々木さん(元課長)に話して良いの?
「ああ、秦さんの祖父って言うと…」
「市之助です。」
「そうそう、市之助さん。隠岐の島の門から出てきたハーフエルフだよね?」
「やっぱり、課長は知ってるんですね。」
ちょっと待て。俺より詳しくないか?
それと秦さんのお祖父さんはハーフエルフで、門から出てきたの?
「さっきも言ったけど、門守君の実家と秦さんの実家のSaikasに登録されてる日記は読んでるからね。」
「佐々木さん、それなら俺の両親の話しも…」
「お母さんが勇者の娘だろ?それにさっきも言ったけど桂子さんはドワーフのクォーターだろ?」
「ぇえ、そうですけど…」
「センパイ、もしかしてお婆ちゃんも門から出てきたんですか?!」
秦さん、微妙なところに食いつくね。
「うん…まぁ、そうだけど…」
「門守君の所は、祖父母も両親も門から出てきたんだよ。」
待って、佐々木さん(元課長)。
そこまで喋ると個人情報ダダ漏れです。
「センパイ、随分とファンタジーな一家なんですねぇ~」
秦さん。どうしてニヤニヤするの?
◆
「さて、どうする?僕としては2つ話が残ってるんだが?」
そうだった、佐々木さん(元課長)は、残り2つの話をする使命がある。
「さっきマリコさんが言ってたSaikasの件と魔石の件ですよね?」
「そう、どっちから話す?」
「課長、簡単な順でお願いします。」
秦さん。その提案に俺も同意です。
「じゃあ、魔石からだな。君達は魔石を持ってるかい?」
「俺は持ってないです。」
「私もです。けど、明後日、センパイと実家に行くので聞いてみますか?」
「ごめん。ちょっと確認したいけど、君ら二人は結婚間近なの?」
「「……」」
佐々木さん(元課長)、急に何を言い出すんですか!
「課長。やっぱり、新婚に見えます?」
秦さん、とっさに腕に絡まないで。
「秦さんが門守君の祖母、桂子さんに会ってるんだろ?それに、明後日には秦さんの実家に一緒に行くんだろ?」
「佐々木さん。ちょっと待ってください。秦さんも腕を放して。お願いだから。」
「ぶー」
秦さん。アヒル口でブーたれない。
「佐々木さん、魔石の件はこれで回答になります?」
「うん。まあ最初から無いと思ってたから。明後日のご両親の挨拶で聞けるなら聞いといて。」
佐々木さん(元課長)。
ニヤニヤ顔で怖いことを言わないでください。
彼女の実家に行くのは違う理由です。
誤解しないでください。
「後は、Saikasの件だね。この話しは長くなるよ、場所を変えるかい?」
「課長、今日は誰もこのフロアにはいないんですよね?」
「ああ、マリコさんが人払いしてるから大丈夫だよ。」
「それなら、ここでお茶を飲みながらでお願いします。」
「ハハハ。秦さんらしいな(笑」
「それと、トイレに行きたいんですけど…」
「場所はわかるかな?門守君は?」
「えぇ、さっき見かけたんで大体は…」
「佐々木さん、俺も一緒に行きます。」
「じゃぁ。戻ってきたら話そう。」
佐々木さん(元課長)の言葉と共に、俺と彼女は二人でトイレへと向かった。