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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月30日(金)☁️/☂️
138/279

12-12 休憩


「すいません。ちょっと休憩にして貰えますか?」

 俺は思考が纏まらなくなって、休憩をお願いした。


「ええ、休憩にして貰えると助かります。」

 彼女も着いて来れないようだ。


「積もる話しもあるでしょう。佐々木さん、二人と休憩してきて。」

 マリコさんが休憩に同意して、佐々木さん(元課長)に案内を頼んでいる。


「エリック、ちょっと話があるの。来てくれる。」

 マリコさんは、エッリクさんが入ってきた扉の前で、こっちに来いと言わんばかりだ。

 呼ばれたエリックさんは、急ぎ足でマリコさんに続いて壁の向こうに消えた。


「秦さん、大丈夫か?門守君は?」

「何とか…」

「俺は大丈夫です。」


 佐々木さん(元課長)に連れられ、彼女に気遣いながら重役室の外に出た。


 正直に言って、エリック(偽物)が出てくるは、佐々木さん(元課長)が登場するは、彼女の兄との繋がりで自社製品の話が出て、俺は思考が追い付かなくなった。

 彼女は何とか話しに着いてきたが、佐々木さん(元課長)の登場や、兄の話と自社製品の話が出て、俺と同じく混乱したのかも知れない。



 広いオフィスエリアの窓際は、カフェスペースになっていた。

 複数台の自動販売機が並んでいる。

 佐々木さん(元課長)の話では、飲み物の全てが無料だと言う。

 さすがは外資系企業だ。

 俺と佐々木さん(元課長)は缶珈琲を手にし、彼女はカフェオレを選んだ。


 ここまで3人で歩いてきたオフィスエリアには、誰一人として人がいなかった。


「佐々木さん。今日はGWで皆が休みですか。誰とも会っていないんですが?」

「マリコさんが人払いしたかな?」

 あっさりと人が居ない理由を告げられた。


「それにしても、お久し振りです。」

「そうです。課長。お久し振りです。」

「秦さんも再起動したか?(笑」


「課長が登場して気が動転して、兄の話が出て、自社製品の話が出て……」

「ハハハ。驚かそうとは思ったが、そこまで驚くことか?」

 何とか彼女も思考が回る準備ができたようだ。


「課長、兄は自社製品を使ってるんですか?」

 彼女が佐々木さん(元課長)に問いかけた。


「秦さん、質問に答える前に『自社製品』の呼び名を止めて『Saikas』にしてくれるか?」

 何だ?佐々木さん(元課長)が製品の呼び名に『なぜ』こだわるんだ?


「はい、これからは『Saikas』と呼びます。改めて聞きますが、兄は『Saikas』を使ってるんですか?」

「ああ、使ってる。」


 佐々木さん(元課長)が彼女に答えると、彼女は俺に歩み寄ってきた。


「センパイ。センパイも使ってるんですか?」

「はい。使ってます。いえ、使い始めたところです。」

 つい、彼女の気迫に押されて言い直してしまう。


「センパイのお婆ちゃんも使ってますよね?」

「はい。使ってます。えっ?秦さん、見たの?」


「見ました。お婆ちゃんが操作してるPadにロゴが見えたから…センパイのお婆ちゃん凄いなと思ったんです。」

 確かに、あの年齢でPadを操作するのは凄いかも。


「二人に聞きますけど、自社製…そのSaikasで見てるのって、兄もセンパイもお婆ちゃんも、3人とも同じものを見てるんですか?」


 繋がる。

 彼女の言葉で、全てが繋がる感じがする。


「兄もセンパイもお婆ちゃんも、それとエリックさんも…課長もSaikasを使って同じ何かを見てるんですよね?」

「そうだね。」

 佐々木さん(元課長)がハッキリと答えた。


「それって、英語と日本語の両方で書いてますか?」

「英語と日本語?秦さん、何で知ってるの?」


「昨日の夜、お婆ちゃんがPadで翻訳してる様子を見せてくれたんです。私も英語は自信があったんで…」

「そう言えば、秦さん。さっき英語を喋ってたよね?」

「あれ?門守君は知らなかったの?彼女は英語力が高いと社内でも評判なんだよ。」


「センパイ。教えてあげましょうか?」

 秦さん。ニヤリとしないで。


「秦さん。話を戻すよ。君の言う通り、門守君のところも、君の兄も、そしてエリックさんも同じものを見ている。もちろんだが僕も見ている。」

 えっ?佐々木さん(元課長)も見ている?


「それって、日記のような物ですか?」

「門守君、答えられる?」

 佐々木さん(元課長)が俺にフッテ来た。


「いや、俺では正確には答えられない。秦さんの兄さんが同じものを見ている確証が無いから。」

「センパイとお婆ちゃんは?」

「ちょ、ちょっと待って。」

 佐々木さん(元課長)の問いに俺が答え、彼女が次の問いを口に出した時に、元の問いを出してきた当人の佐々木さん(元課長)が話を止めてきた。


「質問した俺が悪かった。君らがどのくらいSaikasで学んでいるかを確認したかったんだ。」

「課長、何を言ってるんですか?意味不明です。」


 彼女は問いを止められ納得しないようだが、俺は佐々木さん(元課長)の言葉に答えが含まれている気がした。


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