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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月30日(金)☁️/☂️
130/279

12-4 宿の手配


 鈴木さんと田中君には、彼女が電話で連絡をした。

 結果的には、二人とも外出中で直ぐにネット会議には至らなかった。

 彼女は俺とのラブラブを、鈴木さんと田中君に見せつけてやると息巻いていたが、肩透かしを喰らった感じだ。


 さて、旅支度に戻ろうと考えて、気になることが出てきた。

 明後日に隠岐の島行きの飛行機に乗るのは良いが、今日と明日の宿を決めていない。


「秦さんは、今日と明日の宿は決めてるの?」

「いえ、決めてないです。」

 待て待て。

 明後日の飛行機まで野宿でもするの?


「けど、明日の予定は決めてます。」

「明日の予定?」


「USJでセンパイとデートです(ハート」

 秦さん。俺の予定ガン無視ですね。


「秦さん。デートも良いけど宿を取ろうよ。」

「来る前に見たけど、どこも一杯でしたよ。最終手段は漫画喫茶で考えてましたけど…」


「秦さん。結構タフだね(笑」

「センパイ。言い方。」


 俺も人の事を言えないな。

 大阪で夜遊びして一泊しようとか考えていたけど、宿の手配はしていなかった。

 よくよく考えてみれば、世の中は今日からGWに入っている。

 同然のように、どの宿も予約が一杯の可能性が高い。



ガラリ


「二郎。イチャついとるか!」

 はい。イチャつく1000歩前です(謎


 お爺ちゃんの部屋の戸が開いて、バーチャんがスマホ片手に乱入してきた。


「眼鏡が来たがっとる。」

「しつこいなぁ~」


 俺とバーチャんの話を、彼女はキョトンとした顔で見ている。


「ほれ、電話だ。」


 俺はバーチャんから渡されたスマホを受け取った。


「はい。二郎です。」

「眼鏡です。昨日は貴重なものを頂き、ありがとうございます。」


「用件をお願いします。今、取り込み中なんです。」

「エリック・セグレ氏と会われる件で、どうしてもお話しを聞きたく、お時間を貰えませんか?」


 眼鏡の声を聞いて、俺の心の中の悪魔が囁いた。


"無理難題で困らせちゃえ(By 悪魔"


「話しても良いですが条件があります。」

「条件ですか?すいません。聞き漏らさないため通話を録音させていただきます。」


 暫くして、眼鏡の声が聞こえた。


「お待たせしました。お願いします。」

「今夜と明日の夜、大阪市内で2名が2泊する宿が必要ですが見つからないんです。」


「今日と明日で2名で2泊すね。(カキカキ」

「その宿が取れたら、お話しする時間も作れると思います。」


 電話の向こうでメモ書きをするような音が聞こえる。

 時計を見れば既に10時になろうとしている。


「11時30分には大阪へ出発しますので、それがリミットです。」

「11時30分出発の制限あり(カキカキ」


「一旦切りますね。」


 俺は期待することもなく、バーチャんから受け取ったスマホの通話を切った。


 通話を切ったスマホをバーチャんに渡すと、バーチャんが口を開いた。


「なんじゃ二郎。宿が取れんのか?」

「うん。明後日の飛行機で隠岐の島に行くから今日と明日は大阪に泊まろうと思ったけど宿が取れないんだ。」


「由美子さんの方は宿が取れとるんか?」

「お婆ちゃん。ごめんなさい。私も頑張ってみたけど取れなくて…」


「そうか……ラブホじゃダメか?」


 バーチャんから衝撃的な言葉が飛び出した。



 バーチャんの衝撃的な言葉から30分後、バーチャん、俺、眼鏡の3名が仏間で談話中です。

 彼女は巻き込みたくないので、お爺ちゃんの部屋で待機して貰った。


「二郎さんがお困りの件。解決させていただきました。また、大阪への移動は私共で車を用意させていただきます。」

「はあ…そうですか…」


 俺はこの眼鏡さんを舐めていた。

 いや、今回の宿の手配から車の用意まで、眼鏡が一人で出来ることではない。

 『国の人』の組織力を舐めていた。


 盗聴器を仕掛けられた時は、怒りや哀れみを感じた。

 俺が日記を書けば、直ぐにUSBメモリーを持って訪問してくる。

 そして今、GWで宿の予約が困難なのに僅かな時間で済ませてしまう。

 これら全てを眼鏡が一人で出来る訳がない。


 先程の電話を切って彼女と一緒に宿探しで苦悩していたら、20分後にはバーチャんのスマホに眼鏡が連絡してきたのだ。

 訪問を断る口実を乗り越えてきた以上は、眼鏡の訪問を断れなかった。


「11:30の出発とお聞きして、勝手に調べさせて頂きました。15:00に大阪に着ければよろしいですか?」

「はい。」


「大阪駅でしたら車で移動して2時間ほどですので、13:00の出発でよろしいですか?」

「はい。」


 もう。『はい。』しか言えない俺です。

 無理難題で困らせようとしたバチが当たった気分だ。


「では、二郎さんがエリック・セグレ氏と会われる件について、お話しをお聞かせください。」


 いよいよ本題を話す時が来た。


 だが、どこまで話して良いのだろう。

 心のどこかで、心の片隅で、『国の人』に対する疑念が残っている自分を感じながら俺は話を始めた。


「今の眼鏡さんは録音されていますか?」

「桂子さんが同席されているので録音はしておりません。」

「ホッホッホ。二郎。安心せい。」


「ここからの話は『他言無用』でお願いします。」

 部長の台詞をお借りします。


「まずは事実からの方が良いでしょう。

私は今日の午後、15時にアスカラ・セグレ社を訪問します。これは私が勤める会社の社命で行くものです。アスカラ・セグレ社側での担当者が Eric G.Segre 氏です。」

「どういったご用件で行かれるのでしょうか?」


 なるほど、眼鏡の態度や表情を見る限り、俺が話した範囲は気にならないのだろう。

 それと、眼鏡が知りたいのは、俺が訪問する目的なのだと理解できる。


 それでも俺がアスカラ・セグレ社を訪問する目的は話しづらい。

 アスカラ・セグレ社訪問の背景には、会社が危ない話しとか、フランス系外資が買収を進めてる話しとか、米国の財団とかの話があるからだ。

 俺も部長から『他言無用』を言われていると共に、この話は『国の人』である眼鏡には無縁な話だからだ。


「先程も述べましたが、社命で行くので俺が訪問する目的についてはお話しできません。」


 そこまで話した時に、眼鏡が背にしていた廊下へ振り返った。

 眼鏡が振り返った先には、彼女が仏間を覗くように廊下に立っていた。


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