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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月30日(金)☁️/☂️
127/279

12-1 作戦会議


 チュンチュン

 鳥の鳴き声で目が覚めた。

 トイレに行き顔を洗い普段着に着替える。


 神棚に手を合わせるために座敷に入ろうとして、一瞬、止まった。

 多分だが、彼女は座敷で寝たはずだ。

 俺がこのまま座敷に入って大丈夫だろうか?

 念のために仏間を覗いてみたが、バーチャんも彼女もいない。

 食堂(台所と食卓のある場所)を見れば、二人で台所に立っていた。


「おはよう。」

「二郎、起きたか。」

「センパイ。おはようございます。」

 秦さんどうしたの?

 俺の顔を見て顔が赤くなったけど?

 そのジーンズ姿。大学時代を思い出すよ。

 う~ん。バーチャんの言う通り、可愛いは正義ですね。


 彼女が台所に居るなら大丈夫だろうと思い座敷に入ると、布団は綺麗に畳まれており、彼女のキャリーバッグが置かれ、彼女のパンツスーツはハンガーに掛けられ鴨居にぶら下がっている。

 やはり俺が寝てる間に移動したんだ。


 神棚に続いて仏間で仏壇に手を合わせ、朝御飯を食べるため食卓に向かう。

 台所に繋がる食卓に座れば湯気の立つ白飯と味噌汁。そして生卵。

 机の中央には漬け物が山盛りの大皿。いつもの朝食だ。

 今朝はこれに昨夜の晩御飯の残りで『赤魚の煮付』が置かれている。


「「「いただきます。」」」


 3人で手を合わせ、食事前の挨拶をする。

 まずは味噌汁からと椀の中を見れば、俺の好きな『玉ねぎと卵』だ。


「どうですか?」

「「合格」じゃ。」

 バーチャんとハモってしまった。

 彼女は嬉しそうだ。


「秦さんが作ったの?」

「はい♪」

 秦さん。笑顔が素敵です。


「昨日は先に寝ちゃってゴメンな。」

「気にしないでください。」


「いいもんが撮れたで(笑」

「お婆ちゃん。しー!」

 彼女は口の前で指を立て、バーチャんに黙りを求める仕草をする。

 二人で何をしてるんだ?


「荷物の移動を手伝わないで、先に寝ちゃってごめんな。」

「寝顔が可愛かったです(笑」


「ハハハハ」

「へへへへ」

「ニヤニヤ」

 バーチャん。横でニヤニヤしないで。


「そうじゃ、二郎。」

「何?バーチャん?」


「今朝から由美子さんと話とったんだが、隠岐の島に行ってみんか?」


 ブフッ

 たまごかけご飯を吹き出しそうになった。


「バーチャん。急に何を言い出すの?」

「二郎は『隠岐の島の門』に興味があるじゃろ。」


「『隠岐の島の門』か…」


 昨夜二人に聞きたかった話が出てきた。

 だが、彼女が何も言わないのが気になった。


「二人とも聞いてくれる。」

「何じゃ改まって。」

「何ですか?」


 それから俺は、今日のアスカラ・セグレ社訪問で会う『エリック』さんは『米軍の門』の関係者である話をした。

 バーチャんは『うんうん』と頷いて聞いてくれた。

 だが、彼女はうんざりするような顔をする。


「センパイ。『門』に関しては任せていいですか?」

「秦さん。俺に丸投げ?」

「ホッホッホ」

 バーチャん。そこは笑うところですか?


「ダメですか?」

「秦さんが嫌なら、今日はやめとく?」


「う~ん…と言うか、『門』については全て兄に任せてるんです。もし今日の大阪行きが『門』に関わる話なら、兄の許可が必要です。」


 俺は彼女の言葉を聞いて、改めて思った。

 俺は確かに『隠岐の島の門』に興味はあるが、一番の興味は彼女の兄さんが『継いだ』ことだ。

 バーチャんや若奥様(女神)が口にする、『継ぐ』が『どういうことなのか』を知りたいのだ。


「私が気になるのは、行かないと出張扱いにならないことですね。」

「体調不良とかで誤魔化すか…」


 俺がそういった時に、バーチャんが口を開いた。


「二郎。今日の出発は何時じゃ?」

「御陵前のバス停で11:58だから11:30には出ようと思う。」


「エリックとの待ち合わせは何時じゃ。」

「15:30だよ。」


「なら、まだ時間があるな…ワシがエリックと話すか?」

「「えっ?」」


「何を驚いとるんじゃ?」

「エリックさんと話せるの?」

「お婆ちゃん。話せるならお願いします!」


「由美子さんに確認しとくが、『門』に関わる話なら行きたくないんじゃな?」

「兄の許可があれば…けど、私は『門』については何も知らないんですよ。」


 俺は彼女の言葉に少し驚いた。

 バーチャんの言葉では、彼女の一家は『隠岐の島の門』に関わっているはずだ。

 なのに彼女は『門については何も知らない』と言い切り、『門』については関わりたく無い感じを伝えてくる。


 けれども考えてみれば、俺も1週間前は彼女と同じで『門』については何も知らなかった。

 全てはバーチャんの「日本人じゃない」と言う衝撃発言から始まった。

 俺の親である一郎父さんや礼子母さん、育ての親である零士お爺ちゃんや目の前のバーチャん、全てが別世界から来たと言うのだ。

 それから今日まで、自社製品で日記を学習してきた知識しかない。


 そうだ!自社製品の件がある。


「二郎はどうする?」

「俺は行くよ。自社製品の件もあるから。」

「あっ!部長が言ってた話ですね。」


 俺は部長の話を思い出した。

 彼女も思い出したようだ。


》明日の訪問の後に説明させてくれ

》明日の訪問が終われば理解できる


「迷いますね。『門』に関わる話じゃなければいいんですけど…」

「秦さん。『門』に関しては俺が引き受けるよ。」


「センパイ。お願いします。」

「じゃあ、ワシはエリックには電話せんぞ。」

「秦さん、任せて。バーチャん、ありがとう。電話しなくても大丈夫。」


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