11-13 睡魔
眠い。
日中は朝から畑仕事。
眼鏡スーツの撃退。
彼女を迎えに行き。
パワハラ課長の不正の解決。
部長との対話。
『隠岐の島の門』の存在。
彼女の『門』との関わり。
今日は色々な出来事があった。
酒をのみながらの食事。
風呂に入って体が温まり。
とどめと言わんばかりに、目の前には興味の無いテレビドラマ。
眠い。
『隠岐の島の門』について二人から話を聞きたい俺は、二人がテレビドラマな人から戻ってくるのを眠気と闘いながら待っていた。
「このドラマは『当たり』じゃな。」
「来週が楽しみです。」
テレビドラマな二人が戻ってきた。
「ワシは風呂に入ってくる。見たいドラマがあれば、そのリモコンで見れるぞ。二郎に教えてもらえ。」
「お婆ちゃん。録画してるんですか!ありがとうございます~。」
そう言ってバーチャんは立ち上がり、風呂に入る支度を始めたようだ。
一方の彼女は、バーチャんが指差したリモコンをテレビの脇から取ろうとして、四つん這いで俺に尻を見せる。
中々にセクスぃ~で良い形だ。
って、違う違う。
俺は明日のアスカラ・セグレ社への訪問に関わり、彼女に『隠岐の島の門』について聞きたいことがあったのだ。
「センパイ。お願いします。」
そう言って、彼女は笑顔で俺にリモコン渡してきた。
可愛いなぁ~。
って、違う違う。
笑顔に負けそうだが、言葉を続けた。
「秦さん。話がある。」
俺の言葉に、入浴の準備をしようとしたバーチャんが動きを止めた気がする。
けれども俺は彼女への質問を続けた。
「センパイ。それって今ですか?」
「そうだ。」
「ここで、愛の告白ですか?」
秦さん。何を言い出すの?!
「今のドラマの先週分を見直したいんです。その後じゃダメですか?」
秦さん。キラキラした目で俺を見ないで。
はぁ~。これは無理そうだ。
俺は諦め気味にリモコンを操作して録画一覧を彼女に見せた。
簡単にだが、彼女にリモコンの操作方法を教える。
「これなら私でも出来そうです。」
そう言って彼女は再びテレビドラマな人へと戻って行った。
俺達の様子を見ていたバーチャんが呟いた。
「ちっ、残念じゃ。」
バーチャん。何が残念なの?
少しだけ彼女の見入るテレビドラマに付き合ったが、再び眠気が襲ってきた。
この眠気に俺は耐えられるのか?
無理だ。
「秦さん。ゴメン。先に寝る。」
テレビドラマな人である彼女から返事はなかった。
俺は歯を磨き、トイレに行き、寝泊まりしている部屋でPadを充電器に繋いで布団を敷く。
彼女の荷物が気になったが、眠気に勝てず布団に潜り込んだ。
あぁ、明日は起きたら直ぐに大阪行きの準備をしないと…
◆
「もうちっと近くて良いぞ。」
俺の胸元に彼女が顔を寄せる。
そんな俺と彼女をバーチャんがスマホで撮影している。
「そうじゃ。撮るぞ。」
…ああ。また夢を見てるんだな…
…集合写真を見たから写真撮影の夢か…
…俺は脇に立つ彼女を抱き締める…
…抱き締めた彼女の顔を見れば…
…はにかみつつも嬉しそうな顔だ…
…やっぱり彼女は可愛いなぁ…
…ああ。これは丸まった布団だな…
…こうすると抱き枕な感じで気持ち良いな…
……もう少し寝かせて……
◆
なんか猛烈にトイレに行きたい。
やばい、このままでは漏らしそうだ。
俺は尿意で目が覚めた。
スマホを見れば03:33。
急いでトイレに行き用を足した俺は、部屋に戻って彼女のキャリーバッグが無くなっている事に気がついた。
朝の寒さに抗い再び布団に潜り込む。
鴨居にぶら下がっていた彼女のパンツスーツもない。
俺が寝ている間に、座敷にでも移動したんだな…
座敷ならば干した来客用の布団もあるから、ゆっくりと寝れるだろう…
彼女の荷物はバーチャんが協力して移動してくれたんだろう…
…もう少し寝れるな…
今日は畑仕事も無い…
…朝から大阪行きの準備をしないと…
もう少し寝かしてもらおう…
『隠岐の島の門』の話は…
…大阪行きのバスの中でも良いか…
…寝直そう…
再び睡魔が俺を包んでくれた。