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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月28日(水)☀️/☀️
113/279

10-9 前泊


「他に証拠になりそうなのは…」

「秦さん。今、手が届くのに限定しよう。」


「じゃあ、鈴木さんと田中君には次の事項で証拠集めを依頼します。」


 そう言って、彼女は話し始めた。


1.各々の経理台帳とメールの突き合わせ結果。

2.経理台帳に漏れがないかの確認。

3.課長に出した書類のコピー

4.他に想定できる証拠の類い。


「こんな感じで良いですか?」

「一個付け加えて、全ての証拠は社内システムに残さない。ローカルに残し出来ればUSBメモリーなどにも保存する。」


「はい。伝えます。」

「他にあるかな?」


「明日、部長に伝えますか?」


 そうだ、彼女は俺と会った後、俺を迎えに来た事を部長に連絡することになっている。

 その際に、課長の不正を部長に伝えるか否かを考えておく必要がある。

 部長は課長の不正を知っているのか?

 そして部長は課長の不正を容認してるのか?


「私は迷ってます。」

「迷ってる?」


「センパイは迷いませんか?」

「…」


「センパイは、部長が課長の仲間だったらどうします?」

「それは、俺も考えてる。部長がどちら側かがわからないんだ。」


「部長が課長側だったら、課長の不正を部長に訴えても無駄になりませんか?」

「確かにそうだな。」


「不正は正したいし、自分の成績を理由もなく奪われるなんて耐えられません。」

「俺も同じだよ。それに鈴木さんや田中君の気持ちも考えたい。」


「そうですよね。」

「さっきの証拠保全に付け加えれるかな?」


「鈴木さんと田中君の考えの確認ですね。」

「うん。頼めるかな?」


「この後で電話が来る予定なので、確認しておきます。」

「出張前夜に申し訳ないね。」


 他に確認することは無いよな?

 何か大事なことを忘れてる気もするが…


「そうだ!秦さん。宿は取ったの?」

「そうそう、それなんですけど。どこも一杯なんです。」


「困ったなぁ~。やっぱり当日に大阪で待ち合わせるか?」

「センパイ!泊めてください!」


 おいおい。マジかよ?


「マジ?」

「他に手段はありますが聞きたいですか?」


「他の手段?どんな方法?」

「まず、明日ですが。私が迎えに行きます。」


「うんうん。」

「そこでセンパイと私が大阪で落ち合います。」


「なるほど。前日に俺と一緒に大阪に前泊するわけだ。」


 ネット会議に写る彼女が、また手を振り始めた。

 慌てて振り返るとバーチャんが立っていた。


「お婆ちゃ~ん。」

「おお、さっきと違う…いや同じ娘じゃ。素顔も可愛いのぉ~」


「そうだ!お婆ちゃん。明日泊めてください。」

「良いぞぉ~。ワシもそのつもりじゃ。」


 マジかよ!


「やったぁ~。センパイの実家、見たかったんです。」

「じゃぁ。待っとるぞぉ。」


「はぁ~い。あ、センパイ。鈴木さんから電話なんで一旦切りますね。お婆ちゃん。おやすみなさーい。」

「おお、おやすみなさい。」


 ネット会議の画面が真っ暗になった。


「二郎。先に風呂に入って良いか?」

「ううん。良いけど。」


「今日は飲めんかったで、湯上がりに飲まんか?」


 はいはい。

 やっぱりバーチャんは飲みたいんですね。

 俺は昼にシャワーを浴びたから、今日は風呂に入らなくても良いか…


 違う違う。

 今はそんなことより、明日、彼女が来たら泊まるんだよ。

 そっちの方が大事だろ!



「二郎。この酒は湯上がりでも旨いぞ!」


 はいはい。バーチャん。

 ビールとハイボールをチャンポンしたら悪酔いするよ。


 バーチャんを先に入浴させて湯上りのビールを飲ませてる間に、俺はシャワーだけ浴びた。

 俺がシャワーから出ると、ハイボールも飲みたいと言うので一杯だけと出してみた。

 結果的にバーチャんは湯上りビール+ハイボール。俺は湯上りハイボールとなった。


「二郎。日記の方はどうじゃ?」

「良くないね。大筋はわかったけど。」


「急ぐ話じゃない。東京に戻っても続けるが良かろう。」

「そうだね。ゆっくりになるけど続けるよ。」


「そう言えば店長のスーツはどうじゃ?」

「3着も貰った。」


「ほぉ~。大盤振舞い(おおばんぶるまい)じゃな。」

「これで大阪でエリックさんにも会えるよ(笑」


「おお、会って話を聞いてこい。」


 そこで俺は気がついた。

 靴とベルトとネクタイ。


 明日中に買い揃えないと。


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