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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月28日(水)☀️/☀️
108/279

10-4 USBメモリー


 その後、店長は開けていないキャリーバックからワイシャツを2枚出して去っていった。

 俺は店長が持ってきてくれたキャリーバックをワゴン車まで運び、深くお礼を述べてお見送りした。


 店長をお見送りし、母家に戻った俺の手元にはキャリーバックとスーツ3着にワイシャツ2枚が残った。

 改めてワイシャツのサイズを見れば、俺が着ているものと同じだった。


 店長さん。本当にありがとう。


 俺は寝泊まりしている部屋にキャリーバックとワイシャツを片付ける。

 これで残るは靴とベルトにネクタイだ。

 晩御飯の買い物途中で購入すれば済ませられそうだと考えて、仏間に行くとバーチャんがスマホで電話していた。


「二郎。眼鏡がもうすぐ来るぞ。」


 おっと、忘れていた。

 昨日書いた日記の件で『国の人』の眼鏡スーツが3時に来るんだった。

 時計を見れば、ちょうど3時だ。


「バーチャん。家に上げることになるけど良いかな?」

「ワシは構わんぞ。いつもの事じゃ。」


 ああ、そうだった。

 眼鏡スーツはお爺ちゃんの部屋にも入っていたんだ。


「そうだったね。忘れてた(笑」

「眼鏡が来るのも忘れとったじゃろ。」


「はい。忘れてました。」


 バーチャん。そこでニヤニヤしないで。



「未だ私は名乗りをしない方が良いでしょうか?」

「そうじゃな。まだじゃ。」


「では、一方的になってすいませんが私からは、『二郎さん』と呼ばせていただきます。」


 あの5分後に眼鏡スーツがやって来た。

 彼を実家に上げて、眼鏡スーツ、バーチャん、俺の3人で仏間で談話中。


 バーチャんと眼鏡スーツの会話は、今の俺には何となくだが察することが出来る。

 以前にバーチャんが言っていた『継ぐ』に関わることだろう。

 俺が『継ぐ』と意思表示しないと、『国の人』な眼鏡スーツは本名を名乗れないのだ。


「『眼鏡』じゃ嫌か?」

「私は構いません。二郎さんは宜しいですか?」

「はい。」


「では、二郎さん。今後は私を『眼鏡』と呼んでください。」

「ワシも眼鏡で良いか(笑」


 バーチャんは白い増設コンセント(盗聴器)の件もあるのに、冗談交じりに会話をしている。

 やっぱりバーチャんは強者つわものだ。


 ちなみにその白い増設コンセントは、3人が囲む座卓の中央に置かれている。

 眼鏡スーツは、その白い増設コンセントについて、一切、口にしない。


「本日、二郎さんへお渡しするのは…」


 眼鏡スーツは、USBメモリーを出してきた。


「このUSBメモリーから、二郎さんの希望されるパソコンにソフトを導入してください。」


 俺は眼鏡スーツの出してきたUSBメモリーに触れる気になれない。


「導入した後は、以前にお渡ししたユーザーIDとパスワードでログインしていただければ継続してお使いいただけます。」

「わかりました。」


 俺は努めて冷静に返事をした。


「それと桂子さんの古い方のPadですが、現状のままで遠方からでもご使用になれます。」


 なるほど。

 Padは、実家の中と実家の外からで、接続を自動で切り換えるのだと理解した。


「他にご用はありますでしょうか?」

「…」


「無ければ、本日はこれで退散させていただきます。」


 そう言って眼鏡スーツは立ち上がろうとした。

 俺は、白い増設コンセントについて一言も触れない眼鏡スーツの態度にしびれを切らしてしまった。


「こちらは良いんですか?」


 俺は白い増設コンセントを指差した。


「二郎さん。申し訳ありませんが『私共では知らぬもの』です。どうかご理解ください。」

「このUSBメモリーは?」


「そちらは、私共がお渡ししたものです。」


 俺は、それ以上は言葉が出なかった。

 やはり眼鏡スーツに『哀れみ』な感情しか沸いてこない。

 きっと、今の俺は自分でも信じられないような目線で眼鏡スーツを見ていると思う。


 その後、眼鏡スーツを玄関の外まで見送ったが、俺は最後までお礼の言葉を口にできなかった。


 何とも心にモヤモヤした物を抱えながら、仏間でお茶を啜るバーチャんに声をかけた。


「いいの?バーチャん。」

「何がじゃ?」


「なんか、釈然としないんだ。」

「それより、二郎の顔が怖かったぞ。」


「やっぱり?」

「ホッホッホ」


 バーチャん。そこでサンダース笑いですか?


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