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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月28日(水)☀️/☀️
106/279

10-2 廃棄センター


 一昨日のニラの収穫で出たゴミと、今日の新玉ねぎの収穫で出たゴミを軽トラに積み込み廃棄センターに向かう。


 廃棄センターは、農協組合が農業ゴミを集める場所だ。

 俺が大学時代の記憶を頼りに廃棄センターに向かって運転していると、新しい大きな道案内が見えてきた。


「あれ?廃棄センターって移転したの?」

「新しく建てたんじゃ。」


 新しい道案内の看板に従って進むと、開けた丘の上に大きな新しい建物が出現した。

 バーチャんの言葉のとおりに新しい建物で実に綺麗だ。

 以前の廃棄センターは農業廃棄物の香りや堆肥を製造する上での香りがしていたが、この新しい施設の敷地内に入ってからはそんな香りも無い。

 それに旧来の施設では焼却炉が2基ほどあったのか煙突が2本見えていたが、新たな施設には煙突らしきものが見当たらない。


「随分と綺麗になったんだね。」

「国から金が出て施設が新しくなったでな。」


 案内板に従い、軽トラを廃棄物の搬入口に移動させると残念だが少し香ってきた。

 さすがにゴミの搬入口は農業廃棄物が集まるからだなと思っていたら、大きな文字で『プラスチック・ビニールは旧施設へ』と書かれている。


「なるほど、農作物での廃棄物に限定なんだ。」

「ビニールのマルチから肥料は作れんでな。」


 バーチャんの言うとおりです。

 マルチとは『マルチシート』と呼ばれる畑の畝にかける農業用の黒いビニールの事だ。


 廃棄センターの係員の誘導に従い、軽トラに積んだゴミを降ろしたら実家に戻る。


「バーチャんは、今度のサツマイモのマルチはシートを使うの?」

「手間だが稲ワラで考えとる。組合の薦めで1度シートを使ったが、ありゃゴミを増やすだけじゃ。」


「確かにビニールのマルチは使い終わるとゴミだからね。」

「ワシはゴミを増やしとう無いんじゃ。組合もそろそろ考えて欲しいぞ。」


 バーチャんがエコロジーな考えで嬉しい。俺もそう思います。



 実家に戻り軽トラを駐めて充電装置に繋ぐ。

 母家に入り作業着から着替えるついでにシャワーも浴びた。

 台所に続く食卓で、いつもの実家の昼御飯を終えたら洗い物をする。


 農作業後の実家でのルーチンを終えて仏間でお茶を啜っていると、バーチャんのスマホが鳴った。

 時計を見れば1時を10分ほど過ぎていた。

 たぶん店長からの電話だろう。

 バーチャんがスマホで少し話してから、


「二郎に代わるで。」


 そう言われてバーチャんからスマホを受けとる。


「はい。代わりました。二郎です。」

「御陵の管理を担当している者です。」


 『国の人』の眼鏡スーツの声だ。

 慌ててスマホの画面を見ると、通話相手の名前に『眼鏡』と出ている。


「日記を拝見しました。」


 眼鏡スーツの言葉に、俺は次の言葉につまった。


「日記の件で、お伺いしたいのです。今日これからはお時間ありますか?」

「ちょ、ちょっと待ってください。」


 俺は思わずバーチャんに助けを求めた。


「バーチャん。これから来るって言ってるけど?」

「そろそろ店長が来るじゃろ。その後はどうじゃ。」


 バーチャんの提案に従うことにした。


「すいません。3時頃でお願いできますか?」

「では、3時頃に電話させていただきます。お手数ですがもう一度、桂子さんに代わっていただけますか?」


 そう言ってバーチャんにスマホを戻した時に、玄関から店長の声がした。


『こんにちはー』


 俺は急いで玄関に向かい、土間口に降りて玄関を開けると店長が立っていた。


「遅くなってすまん。二郎ちゃん。持ってきたぞ。」

「ありがとうございます。」


「実家にあるのも持ってきた。ワゴンに積んであるんだが、手伝ってくれるか?」

「はい。もちろん手伝います。」


 店長の言葉に導かれ、玄関前に駐車されたワゴンに向かう。

 店長の後ろ姿を見ながら、確かに俺と店長は同じぐらいの体格だと感じた。

 いや、店長の方が背中に肉がついているような…ごめん失礼なことを考えました。


「二郎ちゃん。身長はどのくらいだ?」

「172です。」


「俺と同じぐらいだな。ウエストは?」

「スンマセン。最近、計ってなくて。」


 そう言うと店長は自身の腹をさすりながら、俺の腹を見る。


「最近は貫禄が着いたからな(笑」

 はい。その腹回りは貫禄です。


 そう言って、店長がワゴン車後部座席のスライドドアを開けると車内にはキャリーバッグが4個入っていた。

 中型のキャリーバッグが2個と小型サイズのが2個ある。

 小型のキャリーバッグは小旅行には便利そうだ。


 それぞれ2個を持ち、実家の母家に運ぶ。

 玄関から土間口に入るとバーチャんが待っていた。


「随分と持って来てくれたんじゃな。」

「親父が全部持って行け。出し惜しみするなって言われたよ(笑」

「俺の為に、ありがとうございます。」


「二郎ちゃん。雑巾か何かあるか?家に上げるなら底を拭いた方が良いだろ。」

「二郎。脱衣所の棚に新しい雑巾がある。濡らして持ってこい。」

「はい。」


 そう言って、俺だけ先に母家に上がりバーチャんに言われた場所で雑巾を探すと新品の雑巾が何枚か見つかった。


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