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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月27日(火)☀️/☁️
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9-11 借りを返す


 ゴーゴーゴー

 ジャグジーの音の中。

 一人で反省する。


 大阪で一泊とか、夜遊び以前だ。

 お客様へ訪問するのに、サラリーマンの戦闘服(スーツ、靴、ワイシャツ、ネクタイ)が無いなんて論外だ。

 俺に与えられた猶予は、明日と明後日の2日間だけ。


 4月28日(水)新玉ねぎの収穫

 4月29日(木)新玉ねぎの出荷

 4月30日(金)大阪行き


 気持ちを落ち着けて、最も遅いプランから考えよう。

 彼女が迎えに来ると言ってたが30日に大阪で落ち合う。

 明後日の新玉ねぎを出荷した後に東京に戻って、30日の朝に出れば大阪での訪問には間に合う。

 いやいやダメだ。

 明後日の29日は整備工場のオヤジさんにトラクターを出してもらうんだ。俺が不在だなんて不義理は不味いだろう。


 じゃあ、一番早いプランを考えよう。

 明日の朝一番で、実家を出れば昼過ぎには東京に着けるだろう。

 戦闘服一式を着こんでとんぼ返りすれば、夜には実家に戻ってこれるだろう。

 そうなると明日の新玉ねぎの収穫がバーチャん一人になる。

 う~ん。悩ましい。


 買うか。

 戦闘服一式だと、かなりの出費になるが仕方がない。

 明日の新玉ねぎの収穫が終わったら買いに行って、急ぎで裾上げを頼めば何とかなるか?

 前に量販店で購入した時は、裾上げに1週間かかった。

 風呂から上がったら、裾上げを即日仕上げで頼める店がないかも探そう。


 これで行こう。

 急な出費で痛いが、これが最良だな。

 大阪での夜遊びなんて考えるから、バチが当たったな。

 というか、この出費を考えたら夜遊びなんて無理だな。



「バーチャん。お風呂上がったよ。」


 風呂から上がり、仏間のバーチャんに声をかけるとバーチャんは電話中だった。


「じゃあ、行く前に電話するで。すまんのう。」

 そう言ってバーチャんは電話を切った。


「あれ、テレビドラマは?」

「ハズレじゃった。そうじゃ二郎。スーツが借りれるぞ。」


「えっ?借りれる?」

「マクドの店長なら二郎と一緒じゃろ。」


 あぁ~。

 確かにマクド店長なら体格が近い。

 けど、いいのかな。スーツを借りるなんて。

 けど、出費を考えるとかなり助かるのは事実だ。


「明日の新玉を取ったら家に行くで。」

「店長、休みなの?」


「休みらしい。もう着ないのもあると言うとった。」

「う~ん。いいのかなぁ…」


「じゃあ、どうするんじゃ?」

「実は買おうと思ってた。」


 俺は風呂場で考えていた、購入の話をバーチャんにした。


「そんな金があるんか?二郎は金持ちじゃのう(笑」

「金銭的には、かなりきついね。」


「店長のスーツが着れんかったら買うか?」

「そうなるかも知れない。」


「気まずいんか?」

「気まずい。確かに気まずい。」


「気にするな。あの親子は借りを返したいんじゃ。甘えとけ。」


 借りを返したい?何のことだ?

 聞かない方が良いのか?


 そもそもスーツが無いのに、仕事を入れたのは俺の不手際だ。

 孫の不手際をバーチャんの口から他人に話させるなんて、バーチャんには悪いことをした。


「バーチャん。ありがとう。」

「気にするな。風呂に行ってくるで。」


 って、バーチャん!

 もう、酔いがさめてるの?


「バーチャん。酔ってないよね?お風呂に入って大丈夫なの?」

「ドワーフは酔わん。というか昔っから一眠りすると覚めるんじゃ。」


「本当に大丈夫?さっき酔って寝てたでしょ。」

「大丈夫じゃ。ハズレを見たで余計に目が覚めた。」


 店長に電話するぐらいだし、大丈夫なんだろう。

 ドワーフの血ってかなり凄いな。


「風呂から出たら湯上りビールじゃ。」

「それはダメです。飲み過ぎです。俺は付き合わないからね。」


「なんと、二郎が飲まんのか?!」

「うん。俺が飲まないとバーチャん一人だよね?」


「ワシ、一人か…飲めんのう…」

「じゃあ、おやすみなさい(笑」


 これで技あり2つで合わせて一本かな?


 ちょっと可哀想だが、バーチャんの飲み過ぎを防ぐ為には致し方ない。



 お爺ちゃんの部屋で自分のノートパソコンを開き社内ネットにログインする。


 バーチャんの乱入と彼女の「あの内容なら大丈夫です」の言葉で、後回しにしていた彼女と鈴木さんに田中君が発信したメールを読む。


 かなりの出来栄えだ。

 これならパワハラ課長が返信せずとも十分だ。

 鈴木さんも田中君も彼女も、これ程までにしっかりとした内容で課長の代返が出来るとは思いもよらなかった。

 鈴木さんも田中君も、新入社員の頃から面倒を見てきたつもりだが、これは既に俺を追い抜いてるだろう。

 二人とも素晴らしい成長ぶりだ。


 元部長と元課長が会社を去りパワハラ課長が着任した際には、辞めたいと漏らしていた2年後輩の田中君。

 パワハラ課長と山田が大っ嫌いで、夏の賞与をもらったら辞めると言っていた田中君と同期の鈴木さん。

 

 パワハラ課長が反面教師となり、二人の成長に寄与したのかも知れない。

 もう俺の手助けなんて不要そうだ。

 東京に戻ったら、以前に決断した課内での話し合いをしてパワハラ課長に改善を要求しよう。


 そう考えながら社内ネットからログアウトして夜のテレワークを終わらせた。



 夜のテレワークを終えて、先程のスーツを借りるか買うかを含めて、明日のざっくりとした予定を改めて考える。


 新玉ねぎの収穫は、前回より量は多いが午前中には終わるだろう。

 直ぐに実家に戻って早目の昼御飯を食べて、店長の家に向かうならば1時頃になるか。

 それから1時間程度、借りられそうなスーツを合わせれる。

 スーツが合わなければ、2時過ぎ、遅くとも3時頃には買いに行ける。

 紳士服を販売している店をネットで検索すると、3件ほど見つかった。

 裾上げの即日仕上げもネットで検索する。車で30分程度の距離にある。裾上げは、最も遅くて明後日に完了すれば良い。

 靴とワイシャツとネクタイは明後日でも何とかなりそうだ。


「これなら大丈夫だ。」


 ここまで考えて調べて、ようやく安心できた。


 俺はようやく安心して自分のノートパソコンを閉じた。



 寝る前の歯磨きとトイレを終わらせ、寝泊まりしている部屋に向かう。


 布団を敷き潜り込む。

 今夜はPadもスマホも持ち込まない。


 今日は干した布団が嬉しくて、何もしないで寝たい気分なのだ。


 おやすみなさい。



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