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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月27日(火)☀️/☁️
102/279

9-9 三者会談


 お爺ちゃんの部屋に入り、自分のノートパソコンを開いて社内ネットにログインする。

 ネット会議のソフトを立ち上げたら、スマホで彼女にLINEを送る。


「門守りです。準備できました」18:34


 既読が着いた途端に、ネット会議に彼女と鈴木さん、そして田中君。計3名の顔が写る。


「門守りです。見えてますか聞こえますか?」

「「「はい。大丈夫です」」」


 おいおい、ハモってるぞ。


「4通のメール。発信しました」

「みんな、お疲れ様です」


 秦さんの言葉に、俺はねぎらいの言葉をかえす。

 3人とも良い笑顔だ。俺は心底嬉しい気持ちになった。


「じゃあ、秦さん帰りますね」

「秦センパイ有給休暇楽しんでくださいね」


 そう告げて、鈴木さんと田中君は帰る素振りをしている。

 鈴木さんと田中君は、俺がネット会議に参加するのを待っていたのか?

 インカムを着けようとする彼女の後ろでは、田中君と鈴木さんは鞄を持って既に帰宅姿だ。


「秦さん。二人は俺を待ってたの?」

「帰って良いって言ったんだけど、センパイに伝えたかったみたいですよ」


「なんか悪いことしたなぁ~」

「あの二人は放置しましょう」


 何やら意味深な言葉だな?


「あれ?もしかして、あの二人って?」

「センパイ、知らないんですか?」


「知らない」

「そういうことですので、放置で」


 彼女はインカムを着けた状態で、ニッコリと笑う。


「センパイは、まだメールは見てないですよね?」

「ごめん見てない。今から見た方が良い?」


「いえ、あの内容なら大丈夫です」

「じゃあ後で見ます。秦さんは当日出発するの?」


「それなんですけど、部長に呼ばれたんです」

「部長に呼ばれた?」


 アスカラ・セグレ社訪問で、部長は彼女に何かを依頼したのか?


「部長は何だって?」

「迎えに行けって言われました」


「迎えに?誰を?」

「センパイを」


 えっ?俺を迎えに行く?

 俺は幼稚園児じゃないぞ。部長は何を考えてるんだ?


「センパイと落ち合ったら、電話しろって言われました」

「まてまて。どう言うことだ?」


「それが出張扱いの条件に含まれるって暗に言われたんです」

「な、なんだよそれ!」


「なので迎えに行きます」

「それって当日じゃダメなの?」


「私もそう言ったんですが、今回の訪問で先方が示した絶対条件が、センパイと私なんだって言われたんです」

「⋯」


「それで部長が、念のために迎えに行け。旅費も宿泊費も出す。これも出張扱いにする。と言われました」


 秦さん。そこで笑顔ですか?


 それにしてもアスカラ・セグレ社の訪問で、俺が絶対条件に入ってるなんて⋯

 これって明らかにエリック・セグレさん。俺に会うのを目的にしている。

 エリックさんの思惑に、部長も彼女も巻き込まれている。


「秦さんはどうする?」

「えっ?!」


「秦さんは、どうしたいのかなと思って⋯」

「センパイ!ズルいです!私に決めさせるんですか?!」


「そうじゃ、二郎はズルいぞ」


 バーチャんの声に振り返れば、空のジョッキを片手にしたバーチャんが俺の後ろに立って手を振っていた。


「二郎はワシに餃子を食べさせんのじゃ」

「バ、バーチャん。今仕事中だから」

「バーチャん?センパイのお婆さんですか?」


 そう言う彼女も手を振っている。


「ほぉ~可愛いのぉ~」

「えぇ~そうですかぁ~(テレ」

「⋯」


「二郎。空じゃ」


 そう言ってバーチャんは空のジョッキを突き出す。

 バーチャん。飲めば空になります。


「お婆さん。何を飲んでるんですかぁ~」

「二郎特性の酒じゃ。これがめっぽう旨いんっじゃ」


 そう言ってバーチャんは空のジョッキを持ったまま、俺を押し退けるようにノートパソコンの前に座った。


「お婆さんからも言ってください。私が迎えに行くって言ったら自分で決めろって言うんですよ」

「なんじゃと!女に決めさせるのか!ひどい話じゃ!」


 俺はそんなこと言ってません。


「センパイと大阪に行くんですが、迎えに行かないと私の負担になっちゃうんです」

「ますます、ひどい話じゃ。二郎。空じゃ。作ってこい!」


 秦さん。やっぱり出張扱いに釣られてるんですね。


「二郎。ワシはこの可愛い娘と話しとるから、早よ作ってこい。餃子も焼くんじゃ!」


 ダメだ。これ以上はバーチャんの乱入を続けるのは危険だ。

 そう思った時、バーチャんが強く言い出した。


「二郎が決めれんなら、ワシが決めちゃる。娘!遠慮せず迎えに来い!」

「やったー!じゃあセンパイ。詳しくはLINEで♪」


「良か良か」

「お婆さん。ありがとうございます」


 そう言って彼女は手を振る。

 バーチャんも手を振る。


 そしてネット会議の画面は真っ暗になった。


 バーチャんは真っ暗なネット会議の画面を指差して言った。


「あの可愛い娘は、いつ来るんじゃ?」


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