表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月18日(日)☀️/☁️
1/279

プロローグ


 久しぶりに郷里が見えてきた。

 見えてるよな?真っ暗だけど。


 何年ぶりだろう?


 俺は大学を就職留年している。


 就職留年する際には、祖母に相談する為に帰省した。


 なぜ、祖母に相談したかだって?

 俺は記憶の無い幼い頃に両親を失くして、祖父母に育てられたからだ。

 もっとも祖父も小学校に入る前に亡くなり、いわば祖母が育ての親だ。

 そうなれば、当然、育ててくれた祖母に相談するよな。


 就職留年の翌年、無事に就職が決まった際にも、祖母を安心させたく帰省した。

 そんな就職留年した俺がようやく入れた会社。

 その会社に入社した直後に、郷里を大きな地震が襲った。


 実家に連絡しても、


『大丈夫じゃ、心配いらん』


 そう気丈夫に答えてくれた祖母。


 当時の俺は入社直後だった。

 当然ながら年次有給休暇も発生していない。

 そんな俺に当時の部長と課長が厚い配慮をしてくれて、出張扱いで実家に帰省することができた。


 祖母は大丈夫だと言ってはいたが、実家に戻ってみれば道沿いの壁が崩れるなどした有り様。

 それでも人的被害は無く、心が落ち着いたのを覚えている。


 実家に帰ってきたのは、あのとき以来だ。


 それからの俺は、厚い配慮をしてくれた当時の部長や課長に報いる思いで、お盆も年末年始も帰省せずに頑張ってきた。


 それでも実家の祖母とは、互いの生存確認を電話でしていた。


 お盆は帰れない。

 今度の年末も無理そうだ。

 来年のお盆には帰りたいけど⋯


 そんな電話を昨年末までは、数回した記憶がある。


 就職留年までして入社した会社。

 俺に良くしてくれた部長と課長が去り、その後釜に昨年の秋に着任した課長が最悪だ。


 最悪な課長は、着任早々に無理難題な仕事ばかりを持ち込み、課の連中は残業が増え始めた。

 そして今年に入ってからは、毎日が終電帰りとなり、仕事が終わらず休日出勤が当たり前になった。


 そんな日々の中、休日出勤で終電帰りした俺は、独り暮らしのアパートの郵便受けから取り出した宅配便の不在票を手にした。


 祖母からの宅配便。その不在票。


 目が熱くなってきた。


 祖母の顔が見たい。声が聞きたい。

 祖母は元気なんだろか?

 あの年齢では、いつまでも独り暮らしはまずいだろう。


 連日の終電帰りが続く会社。

 休日出勤が続く会社。


 俺、最近、疲れてるのか?

 やっぱり会社がブラックだったのか?

 あのパワハラ課長が来てから、ブラックな企業に変わってしまったのか?


 目から汗が出そうだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ