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マカロン

 「ただいまー。」

「あ、お帰り。」

「清太郎さん、お帰りなさーい!」

「お帰りなさい!」

「お帰りなさいまし。」

母親、バイトの女の子、男の子、千さんが、それぞれ声を掛けてくれた。俺は店に直接入って来たのだった。店はもうのれんを下ろし、片付けと明日の準備をしているところだった。うどん屋は朝が早く、終わるのも早い。夕飯時に開いている店もあるにはあるが、主に繁華街の中にある場合だ。うちは午後3時まで営業し、後は明日の仕込みなどをして終わりだ。みんながまだいたので、俺はマカロンを出した。

「これ、お土産。」

俺が箱をカウンターの上に出すと、

「わぁ!これ、マカロンですよね!銀座の!すごーい。」

と、バイトの女の子が喜んでくれた。

「マカロン?なんか聞いた事あるね。甘いのかい?」

母ちゃんも興味を持ったようだ。

「今食べるかい?俺、コーヒーいれてくるよ。」

俺は自宅の方へ渡り、自分の分も含めて5人分、コーヒーをいれてきた。そして、箱を一つ開ける。ちなみに、朝番の人たちもいるので、今開けるのは1つだけだ。

「すごい色ですね。」

千さんが言った。

「確かに。どぎついね。」

俺は苦笑した。田舎者には理解出来ない食べ物かもしれない。

「おいしー!」

「ほんとだ、上手い!」

若い子たちは、喜んでいるようだ。

「甘いねえ。良い香りだわ。」

いや、母親も喜んでいる。しかし、

「甘いっすね。」

千さんは苦笑して、無理矢理一つ食べたけれども、絶対にそれ以上は食べそうもなかった。女2人は2個目に手を出していた。俺も、実はこれは甘すぎて苦手。千さんは俺よりは少し若いからいいかと思ったが・・・千さん、すまん。

 千さんは、30代から雇って、かれこれ20年くらいこの店で働いてくれている。千田せんだなので千さんだ。調理場をしきってもらっている。千さんの揚げる天ぷらは、こんにゃく、なす、かぼちゃが絶品だった。俺は里帰りをするといつも、それらの天ぷらを毎日のように食べたものだった。

 千さんのお陰で、うちの店は成り立っている。ここで働いてくれてありがたい。けれども、この千さんのいる限り、この店に俺の出番はない。店先の掃除くらいしかやることはない。


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