テクニカルオフィシャー
2021年7月23日。東京オリンピックの開会式が行われた。開催には賛否両論あったが、直前に無観客と決まり、何とか開催にはこぎつけた。開会式の視聴率は50%近くに上り、国民の関心の高さがうかがえた。
ユニフォームの配布も、ボランティア中心だった今までとは違い、審判団への配布がメインになっていった。審判団はテクニカルオフィシャーと呼ばれる。彼らには赤いユニフォームを配布した。
外国人の審判も多く、試着ルームは時々戦場のように忙しかった。試着をしたがるのは女性が多く、お世話をするのは女性のボランティアなのだが、足りないサイズを聞いて取ってくるのは我々男性が担当した。
「すみませーん、パンツのSサイズが全然足りないです!」
「YシャツのXSサイズ、もっとください!」
などなど、試着を担当するボランティアさんから悲鳴のような要望が届く。
「はいはい、パンツのS持って来たよ。」
俺がパンツを3枚持って行くと、
「ありがとうございます!」
やはり忙しそうにお礼を言われた。と同時に、
「今度はXSも足りないんですけど。」
と言われて、また取りに行く。その間にも、試着をしている審判団はああでもない、こうでもないと試着を繰り返している模様。
「XS size? OK?」
「More small.」
「すみませーん、どこかに2XSのジャケットありませんかー?」
あっちでもこっちでも大忙しだった。