プロローグ:暗黒界に差す光
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!」
赤黒い体液が至る所にこびり付いた人を苦しめる為の施設にて、発狂の様な怨嗟の声と、鞭が叩かれる音が響き渡る。
「馬鹿、死んだら駄目だろう。殺さずに拷問を続けなければ駄目だろ」
と鞭を持つ男の隣にやって来た男は溜息混じりに嘆く。
「……それもそうだな。平常心を失っていた」
鞭を振り回していた男は鞭を下ろした。精神病の症状が一時的に止まったかの様だ。
「分かってくれればいい。それはそうと、やはりこの拷問中の男、拷問に慣れてきた様に見えるんだよな」
「なんだと……!?」
「そう歯を食いしばるな。俺にはこいつを更に苦しめるいい案があってそれを伝えにきたんだ。それは――」
最初に感じた事は孤独でした。私は静寂に包まれた個室のベッドの中で目を覚ましました。上半身を起こすと、質素な机、鏡、タンスなどが目に入ってきます。
それだけです。お部屋には私と家具しか存在していません……。更に寂しい事に何故ここにいるのかとか、私の家族の事とか一切思い出せません。記憶が無いんです……。
このままだと孤独で死んでしまいそうです。人を探しましょう。……いや、その前に身嗜みのチェックをしましょうかね。
鏡の前までとことこと歩きます。……!鏡に映ったのはあどけないドレスを着た少女でした……!ドレスはリボン、コルセット、フリルなどで構成されておりキュートです……!
長く、先端にカールがかかった白い髪もおしゃれです……!喜悦になってきました。身嗜みは問題ありませんね。
じゃあ人探しにします。私はスキップをする様な足取りで個室のドアを開けました。すぐ右に下へ続く階段がありますね。
どこに人がいるのか手がかりがある訳でもないですし階段を降ります。すると、
「起きたのだな……」
やったあ!人です。階段下のリビングの様な場所に、王子様の様な服装の男性が居ました。でも、その王子様は縄にぶら下がっている様な目をしています。
精神病院に居そうです。男性にしては長めの髪も気鬱さを出していますし……。出来れば明るい人と出会いたかったんだけど……。まあ、人が見つかったのだし有り難く思うべきですかね。
「人が見つかって良かったです。あの、ここはどこですか?私は誰ですか?貴方は?」
「ここはとある炭鉱の近くにある無人の小屋だ……。私はネメジス、天界という場所から訳あってここに来た大天使だ……。お前はサンティ、私がさっき魔法で生んだ使い魔だ……」
私は記憶を失っているのではなく、さっき誕生したばかりだから記憶がからっぽという事は分かりました。でも、
「天界って……?ネメジスさんがここに来た訳とは……?何故私を生んだのですか……?」
パズルのピースが大量に欠けている様でした。
「叙述しよう……。まず、天界とはこの世界の遥か上空に存在するこの世界よりも時間の流れが遅い別世界だ……。また、天界には魔法という特殊な力が使える天使という生物達が住んでいる……。
天使達はこの世界に関わる事は殆どなかった。太古の時代にこの世界の人間に少し知識を与えてやったくらいだ……。だが、最近になってある天使が地上に興味を持ち、地上に降りると愕然とした……。
地上の世界は滅んでいたのだ……」
……!!世界が一気に色褪せた様に感じました……。
「更に奇妙な事に、今まで存在していなかった惑星の様な何かがこの世界の上空に現れていた……。他にも、この世界の至る所に強大な力を持った謎の生物が観測されている……。
天使達はこの世界に得体の知れない何かを感じ忌んだ。だが天界の王は謎を謎のままにしておくのは嫌だそうで、
私に、『地上に降り立ち、地上の世界の謎を完全に解明しろ、謎の生物は不気味で仕方がないから殺せ』と命じた……。だから私はこの地上に来た訳だ……」
得心しました。……あれ?ネメジスさんが全ての質問に答えていない事に気付きました。
「ネメジスさん、貴方が私を生んだ理由についての説明は?」
「それはだな……」
口籠ってしまいました。何か後ろめたい事が……?
「言って下さいよ……。まさか何か言えない理由でも……?」
「違う……!そんな事はない……。孤独だったんだよ……。1人でこの世界の謎を解き明かすなんて……寂しいではないか……」
「あはは。何ですかそれ……!」
拍子抜けしかしません。ネメジスさんも孤独を感じるんですね……。
「笑わないでほしい……死にたい……」
「ごめんなさい」
ネメジスさんは直ぐに自殺してしまいそうな感じがするので謝罪はしっかりします。
「謝るなら許すよ……」
「ほっとしました」
「じゃあ謎の生物を殺しに行くか……」
「はい!」