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22.告白! スターレンジャーの秘密

「俺に隠していたこと?」

「……うん」

「隠していたことって何だ?」


 龍司が怪訝な顔をする。


「あのね、驚かないで聞いてほしいんだけど……」

「また、それか……」


 うんざりとした声。


「そんな嫌そうな顔しないでよ。傷つくでしょ」

「うるせぇ。お前のそれはいつもロクでもねぇだろうが」

「そんな言い方しなくたって」

「いいからさっさと言え」


 もう! いつもこう。

 落ち着いて話もできない。


「じゃあ言うけど……」


 龍司の様子をチラチラと伺いながら、話を切り出す。


「実はね、スターレンジャーは私の友達かもしれないの」

「…………はぁ?」


 口開いてるわよ、口。


「お前、何言ってんだ?」

「何って……」

「スターレンジャーがお前の友達?」

「そうよ」

「なんだ? どういう意味だそれ?」


 龍司が困惑している。

 無理もない。私だって、こんなこといきなり言われたらきっと混乱する。


「つまりね、つまり、スターレンジャーの正体は、私の友達じゃないかってこと」

「……友達って、学校の友達か?」

「えっと、それは……」


 どこまで言っていいんだろう? さすがに全てをバラすのはまずい気がする。


「……お前、俺をからかってんじゃねぇだろうな?」

「そんなわけないでしょ。こんな時に、そんなくだらないことしないわよ」

「そうは言ってもな……」

「本当なんだって。私だって、色々調べたのよ。そしてある日、気付いてしまったの。友達がスターレンジャーだってことに」


 ちょっぴり大げさに言う。だって、龍司が信じてくれないんだもの。


「証拠はあるのか?」

「声が同じ」

「似た声の人間ぐらい、いくらでもいるだろ?」

「三人いて三人とも声も背格好も同じ」

「五人じゃねぇの?」

「私が知っているのは三人。赤と青とピンク」

「……間違いねぇのか?」

「間違いない、と思う」


 龍司は微妙な顔をしている。まだ納得いかないようだ。


「直接本人に確認したわけじゃないの。でもそうとしか思えないところがあって……」

「お前の思いすごしじゃねぇの?」

「そんなことない! どうして信じてくれないの?」

「だって、お前友達なんてほとんどいねぇだろ。それなのに、なんでよりによってそれがスターレンジャーなんだ? 話ができすぎだろ」

「それは……」


 口ごもる私。確かに私には友達がいない。それは龍司にもバレている。


 高校に入ってすぐの頃、友達ができなかった私は龍司に言ったのだ。“仕方ないの。だって、あんな低レベルなヤツらと仲良くできるわけないもの”って。以来、ずっと一人ぼっち。


 そんな私がいきなり友達を作って、しかもそれがスターレンジャーだって言うんだから、龍司が変に思うのも無理はない。

 まぁ、友達っていっても、正式に友達になったのは蒼二君だけなんだけど……。


「いや、待てよ。逆の可能性ならあるか……」

「逆の可能性?」


 逆の可能性って何?


「お前、奴らに正体バレてんじゃねぇのか?」

「……いきなり何を言い出すのよ」

「それなら辻褄が合う。いいか? 奴らはお前がジョーカーの怪人であることに気付いた。だから、お前に近づくことにした」

「えっ?」

「お前に取り入って、情報を聞き出す。それが奴らの狙いだ」


 ……どこかで聞いたことがある話ね。


「どうだ? 心当たりあるんじゃねぇのか?」


 心当たりはある。別の意味で、だけど。


「それはないわ。だって彼らに近付いたのは私からだもの」

「お前が?」

「そうよ」

「なんでまた? お前、他人に興味ないって言ってなかったか?」

「それはそうなんだけど……。自分でもどうしてかわからないんだけど、初めて会ったときから彼らのことが気になって仕方がなかったの。ほら、私って勘が鋭いじゃない?」

「そうかぁ?」


 むっ、何が言いたいのよ、何が。


「そうなの! それで勘が働いたのよ。彼らには何かあるって」

「何かねぇ……」

「それで私にしては珍しく声をかけてみたの。そして気づいたら仲良くなってたってわけ」

「へぇ……」


 何よ。その疑わしげな目は。


「だから、彼らが私を騙してるってことはないわ。私の正体は彼らにバレてないし、私が彼らの正体を知っていることも気づかれてないはずよ」

「……それは本当なんだろうな?」

「本当だってば。私を信じて」


 龍司はまだ疑いの目で私を見ている。


「どうしてすぐ俺に相談しなかったんだ?」

「だって、龍司に言ったら、ジョーカーに報告しちゃうんじゃないかと思って」

「じゃあ、なんで今俺に話したんだ?」

「それは……」


 続きが言えず、口ごもってしまう。


「なんだよ? 言えよ」

「……龍司が助けに来てくれたことが嬉しかったから」


 ポツリとつぶやく。言葉にすると、どうしようもなく恥ずかしい。

 でも――


 本当に嬉しかった。龍司が私を心配してくれたことが。助けに来てくれたことが。白鳥に頼まれなくても、彼はきっと来てくれた。

 龍司にだけは、ちゃんと本当の事を伝えたい。たとえ全ては話せなくたって、できる限りのことは話しておきたい。そう思ったの。


「龍司、私にチャンスをちょうだい。彼らと話し合うチャンスを」


 ひたと彼の目を見据える。


「私、彼らがジョーカーに殺されるのは嫌なの。つらいの。だから、できる限りのことはしたい。うまくいかないかもしれない。もしかしたら、皆の命を危険にさらしてしまうかもしれない。それでも、何もしないまま諦めるのはもう嫌なの」


 今まで、どうせ無駄だと思って何もせずに生きてきた。でも、これを機に変われるかもしれない。


「だからお願い。私を彼らの元に行かせて」


 静かに龍司の目を見つめる。

 彼は、何ともいえない複雑そうな表情を浮かべた。


 長い長い沈黙の後――


「……………………チッ、仕方ねぇな」


 龍司がポツリとつぶやく。

 そして、諦めたように私を見た。


「話し合いをすれば、お前の気はすむんだな?」

「……許してくれるの?」


 本当に?


「仕方ねぇだろ。だってお前、ダメだって言っても絶対納得しねぇもんな。ここで止めたとしても、後で奴らに会いに行く気だろ?」

「それは……」

「俺の知らないところで変なことされるよりは、見ているところでされた方がマシだ」

「うん……」

「いいか、綾。許すのは話し合いだけだ。この話し合いで、俺が奴らを見定める。無理だと判断したら、そこで終わりだ。たとえお前がなんと言おうともな」

「……うん、わかった」

「最初に言っておくが、俺は奴らと手を組むのには反対だからな」

「うん、わかってる。ありがとう」


 素直に礼を言う。

 それでも私のわがままに付き合ってくれるのだ。やっぱり龍司は優しい。


「もう隠し事はないだろうな?」


 龍司が念を押してくる。


「えっと……」

「おいおい、まだあんのかよ?」


 “勘弁してくれよ”と龍司がつぶやく。

 私だって、別に隠し事したくてしてるわけじゃ……。


「いい機会だ。今言え、全て言え。ほら、早く」

「でも……」

「でもじゃねぇ。後で知らされる俺の身にもなれ」

「しゃべったら、龍司の身が危険にさらされるかも……」

「今さらだろ。第一お前はどうなんだよ?」

「私はまぁ、それこそ今さらだし」

「いいから早く言え」


 どうやら譲る気はなさそうだ。


 ……仕方ない。


 ごにょごにょ。龍司の耳元で、ある情報をささやく。


「……奴が!」

「うん、間違いない。能力を使って聞き出したもの」


 龍司が唸る。スターレンジャーの話を聞いたときよりも、ずっと厳しい表情をしている。


「綾、このことは誰にも言うな。今までどおり知らないフリをするんだ」

「それはそのつもりだけど、龍司はどうするの?」

「俺もとりあえず知らないフリをする。下手に探ると、奴に気付かれるかもしれねぇからな」

「上には報告しない?」

「ああ。今の状況だと、誰がどこまで信用できるかわからねぇ。報告した相手が奴の仲間だったら、目も当てられねぇだろ? 奴に仲間がいるのか、そして目的がなんなのか、わからねぇうちに行動するのは危険だ」

「そうね……」

「どちらにせよ、ジョーカーは混乱するだろうな。外からはスターレンジャー、そして内には裏切り者がいるんだからよ」

「うん」


 不安なことばかりだ。どうしてこんなにトラブルが続出するのだろう。今まで、こんなことはなかったのに。


「……それにしても」


 龍司が自らに問いかけるようにつぶやく。


「スターレンジャーと裏切り者……。無関係なのか?」

次回、木曜日に更新。

「突撃! スターレンジャとの交渉」

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