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19.決着! 綾&白鳥 VS スターレンジャー

「あなたはどう思うのん?」

「どうって……?」


 急に話を振られて、戸惑うスターブルー。


「スターブルー! 私とこの怪人、どっちの言っていることが正しいと思う?」


 スターピンクが強い口調で詰問する。


「い、いや、俺は……」


 二人に迫力に押されて、スターブルーが後ずさりする。

 ……蒼二君、どうするんだろ?


「はっきりしなさいよ! 男でしょ!」

「やっぱり大きい方がいいわよねん」


 スターピンクと白鳥が圧力をかける。

 はっきり言って、恐い。


「俺は、その、別に……」


 返答に困るスターブルー。

 助けを求めるようにスターグリーンとスターレッドの方を見る。

 しかし、すげなく顔を逸らされてしまう。


 “そんな……”、彼の声が虚しく響いた。


「早く答えなさいよ!」

「決断力がない男はだめよん」


 容赦なく答えを迫るスターピンクと白鳥。


 どうしよう? 蒼二君が困っている。

 友達として助けるべきだろうか? でも、ちょっと彼の答えが気になる。


 ドキドキ。


 皆の視線がスターブルーに集まる。


 もはや逃げられないと悟ったのだろう。

 スターブルーは、かすれた声で言った。


「俺は好きな相手なら大きさは別に……」


 ……蒼二君らしい答えね。


 でも、大丈夫かしら?

 それであの二人が納得するとは思えないけど……。


「逃げたわね」

「つまらない答えねん」


 やっぱり。

 スターブルーの答えはお気に召さなかったらしい。

 二人は冷めた様子で、彼の言葉を切り捨てた。


「そういうこと言う男に限って、実は好みがうるさかったりするのよ」

「所詮、口だけなのよん」


 スターピンクの言葉に白鳥が同調する。

 さっきまで言い争っていたのに、仲良いわね。


「理不尽だ……。どうせ何を言っても怒るくせに」


 スターブルーがポツリとつぶやく。


 どんまい! 蒼二君。

 大丈夫、私は蒼二君の味方だから。


「茶番はそこまでよ! とにかく、私たちが来たからにはあなたたちはもう終わり。ジョーカーに刃向かったこと、後悔するのね!」


 流れを無視して、戦闘開始のゴングを鳴らす。


「やれるならやってみなさい」


 スターピンクが獰猛に笑う。

 そして、まるで檻から解き放たれた獣のように、猛スピードでこちらに突っ込んできた。


 速い!


 固く握られた拳が、容赦なく私に向かって繰り出される。


 ――当たればただではすまない。けれど避けることもできない。


 彼女の拳が自分に向かってくるのが、まるでスローモーションのようにはっきりと見えた。

 思わず両腕で顔を庇う。


 衝撃は――こない。


「くっ……!」


 唸り声が聞こえた。


 スターピンクが、歯がみをし、全身に力をこめ、必死に抵抗している。

 ――彼女の体には、蜘蛛の糸が巻き付いている。


 私はホッとため息をつく。


 よかった、うまくいった。


 スターレンジャーと遭遇すれば、戦闘になることは分かっていた。当然前もって準備はしている。あらかじめ周囲に糸を張り巡らしておいたのだ。


 それでも恐かった。本当に殴られてしまうかと思ったもの。まだ心臓がバクバクいっている。


「どう? 私の糸は」


 余裕の笑みを浮かべ、彼女に話しかける。

 ビクビクしていたのがバレなきゃいいけど。


「こんなもの!」


 無茶苦茶に暴れまくる彼女。

 しかし、もがけばもがくほど、糸は彼女に絡みついていく。


「スターピンク!」

「待て、スターブルー」


 助けに飛び出そうとしたスターブルーを、スターレッドが止める。


「どうして止めるんだ? スターレッド!」

「よく見ろ、周りを。糸が張り巡らされている」

「何っ!」

「本当だ……」


 スターレッドの言葉に、スターブルーとスターグリーンが慌てて当りを見回す。


 どうやら気がついたみたいね。


 自分の周りだけじゃない。

 このビルの至る所に、蜘蛛の糸を張り巡らせておいた。これで彼らは下手に動くことができない。


 私、真っ向からの戦いは苦手だけど、待ち伏せは得意なのよね。なんせ、蜘蛛だし。


「気がついた? あなたたちは私の巣の中にのこのこ飛び込んできたのよ?」


 そう言って笑うと、スターピンクに近づく。


「くっ!」


 必死でもがく彼女。しかし、糸は解けない。


「残念でした」


 私は指から大量の糸を発射し、彼女に巻き付けていく。

 みるみるうちに彼女の体は蜘蛛の糸に絡め取られ、頭を残して見えなくなった。蜘蛛の糸団子の出来上がりである。


「このままじゃ、スターピンクが……うわっ!」


 突然、スターブルーが声を上げ尻餅をつく。


「どうした? スターブルー」

「足に何かが……」


 言い終わらないうちに、スターブルーの体がズルズルと引きずられる。そして、足を起点にグルグルと回転し出した。


「うわわわわ……」


 回転力が増していく。

 今や彼の体は宙を浮き、風を切る勢いで回っている。


「スターブルー!」


 スターレンジャーは何が起こっているのかわからない様子だ。

 手を出せないでいる。


 スターブルーの体は、まるでハンマー投げのハンマーのように勢いよく投げ出され――頭からそのまま壁に突っ込んでいく。


 ――ぶつかる!


 私は素早く蜘蛛の網を作り、投げ縄よろしくスターブルーに向かって放つ。

 彼は壁に激突する寸前に網に捕らえられ、地面に叩きつけられた。


 そのままズリズリと網ごとスターブルーを自分の方へと引きずり寄せる。

 彼も抵抗しようとするが、先程の回転で平衡感覚を奪われたのか、体に力が入らないようだ。フラフラしている。


 網を自分の目の前まで引き寄せると、私は彼に微笑みかけた。


「……大丈夫?」

「えっ?」


 スターブルーの戸惑った声。


 私は黙って蜘蛛の糸を放ち、スターピンクと同じ要領で彼の体に糸を巻き付けていく。二人目の団子の出来上がりである。


「スターブルーまで……!」


 スターグリーンが焦りの声をあげる……と同時にすっころんだ。


「うわぁ」

「またか……!」


 スターレッドが唸る。


 さて、何が起こっているのか? 犯人はもちろん白鳥である。

 彼女が能力を使ってスターレンジャーを投げ飛ばしているのだ。


 白鳥は体を周囲の色に溶け込ませ、姿を消すことができるのだ。擬態ってヤツね。姿を消した白鳥はスターブルーの両足を掴み、ジャイアントスイングをかましたってわけ。


 ああ見えて、白鳥は怪力の持ち主なのだ。全身が筋肉でできているといっても過言ではない。

 彼女に力一杯抱きつかれたら、怪人だってただではすまない。現に、彼女の恋人である杉本は何度も死にかけている。あわれ……。


 スターグリーンが近くの柱にしがみつき、振り回されまいと踏ん張る。


「スターグリーン!」


 スターレッドがスターグリーンに駆け寄り、手を差し伸べる。

 スターグリーンがその手を取った瞬間――


「びぇええええ」


 すさまじい悲鳴が響き渡った。

 な、何! どうしたの?


 見ると、白鳥とスターグリーンがプスプスと焦げている!


「一体、何が……?」


 私の叫びに、スターレッドが飄々とした様子で答える。


「電流を流したのさ。ちょうど、そういう装置を作ってたんだ」


 電流? 装置? スターレンジャーって、そんなの使ってたっけ? いや、それよりも……


「電流って、あなたの仲間も一緒に焦げてるじゃない!」

「グリーンなら大丈夫だ。スーツを着ているから、死にはしない」


 死にはしないって……。思いっきりダメージ受けてるじゃないのよ。

 何考えているの、この人! 危なすぎる!


 だめだ。オロオロしてちゃ。

 早く、白鳥を回収しなきゃ。


 私は糸を白鳥に引っ掛けて、彼女を自分の近くに引き寄せる。


「オクトパス子、オクトパス子。大丈夫? ねぇ?」


 ペチペチと彼女の顔を叩く。


 白鳥は答えない。電撃で体が痺れているようだ。

 し、白鳥……。


「ちょっと、オクトパス子が死んじゃったらどうするのよ!」


 涙目になりながら、スターレッドを睨み付ける。


「大丈夫だ。死ぬほどの電撃じゃないよ」

「そんなのわかんないじゃない! オクトパス子に何かあったら許さないわよ!」

「ふーん、仲間意識はあるんだな」

「うるさい!」


 怒りにまかせて、スターレッドに攻撃を仕掛けようとする。

 と、その時……


「ズバイダーデディ……」


 白鳥が声を出す。

 なに? どうかした?


 と、同時に白鳥の体がどんどん膨らんで――


 ブワッ。

 辺り一面が黒い煙に包まれる。白鳥のタコ墨だ。


「うわっ」

「なんだ?」


 スターレンジャーが戸惑いの声を上げる。


 今がチャンス!

 私は白鳥を抱きかかえて、その場から撤退した。

次回、日曜日に更新。


「追跡! スターレンジャーを追え!」

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