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14.相談! ジョーカーを倒すには…②

「…………お前、今何つった?」


 わけのわからないといった顔。


「だから、スターレンジャーに協力するの。そしてジョーカーを倒すのよ」

「……まさか本気で言ってるんじゃねぇよな?」

「もちろん本気よ。こんなこと冗談で言えるわけないでしょ」


 私は大マジなのだ。


「突然で驚いたかもしれないけど、もう決めたの」


 決意をにじませ、断固とした口調で言う。


「もちろん、簡単なことだとは思ってないけど……」


 チラッ、チラッ。龍司の反応を窺う。


「私なりに色々考えて出した結論なの」


 うんうんと大きく頷く。


「スターレンジャーとの交渉は難しいかもしれないけど、勝算はあるわ」


 ぐっと拳を固める。 


「……ねぇ、聞いてる?」


 なんで全然反応してくれないの?

 私一人でしゃべって、バカみたいじゃない。


「龍司?」


 やっぱり反応がない。

 心配になって彼の顔を覗き込む。


 すると、彼は力なくつぶやいた。


「頭、痛ぇ……」

 

 そのまま額を押さえて黙り込んでしまう。


 えっと……。


「あのね、龍司」


 説明しようと声をかけても


「……」


 こっちを見てくれない。


 ……困ったな。

 どうしよう? これ。


 あっ、そうだ!


「ほらね、だから驚かないでって言ったでしょ?」


 冗談っぽく言ってみせる。


 ギロッ。龍司は顔を上げると私を思いっきり睨み付けた。

 こ、恐い……。


「何が“ほらね”だ! ふざけてんじゃねぇぞ! 何考えてんだよ、お前は」

「何って別に……。さっきも言ったけど、色々と考えた結果、こういう結論にいたったの」

「ほー、何をどう考えたか説明してもらおうじゃねぇか?」


 そ、そんなに怒らなくても……。


「だって龍司言ってたじゃない。スターレンジャーは強い。彼らの力は大幹部にも匹敵するって」

「確かに言ったな」

「でしょ。たくさん怪人がやられているし、彼らの力は本物よ。このままだと、ジョーカーだって危ないと思うの」

「そうかぁ? いくら強いって言っても、あいつら5人しかいねぇんだぜ? どう考えてもこっちが有利だろうが」


 でも、舞の記憶では、ジョーカーはスターレンジャーに倒されてるのよ。


「本当に5人かどうかわからないじゃない。バックに強い組織がついてるかもしれないし」

「それはそうだけどよ……」

「それで、私思ったの。スターレンジャーに頼めばいいんだって。私たち怪人は無理矢理言うこと聞かされているだけだし、協力するからこれ以上怪人を傷つけないでってお願いすればいいのよ。そうすれば、誰も死ななくてすむわ」

「お願いって、お前……」

「私たちだって元はジョーカーの被害者なんだし、きっとわかり合えるって」

「はぁ……」


 私の言葉に、龍司が微妙な顔をする。

 全然響いていないわね、これは……。


「……で?」

「えっ? なに?」

「色々考えたって言ってたろ? 他には何を考えたんだよ?」

「えっーと……」


 他? 他と言っても、龍司に伝えられることはこれぐらいしか……。

 スターレンジャーの正体とか、舞の記憶とか言うのは無理だし。


「おい、まさかこれで終わりじゃねぇよな?」


 不穏な空気が漂う。

 ま、まずい。


「そのまさかだったりして」

「……」


 龍司の顔からスッと表情が消える。

 彼はいきなり手を伸ばすと私の両頬を掴んで、思いっきり引っ張った。


「いひゃい!」


 抵抗するも、龍司は一向に力をゆるめようとしない。


「いひゃいってば! ひゃめて!」


 涙目になりながら、無我夢中で龍司の手を振り払う。


 ひ、ひどい……。


「もう! 子供じゃないんだから、こういうのはやめてよね!」


 頬が伸びちゃったらどうするのよ? 責任とれるの?


「うっせぇ。お前はもっと反省しろ」

「なんでよ」

「それがわからねぇほど、バカか? 今言ったことがジョーカーにバレてみろ。問答無用で処分されるぞ」

「わかってるわよ、そんなこと」

「いいや、わかってねぇ。わかってたらこんなこと言うはずねぇ。だいたいお前ときたら……」


 ガミガミ。普段から私がいかに無鉄砲で考えなしかを言い立ててくる。

 なによ!


「わかったか? わかったら、もう二度とバカなこと言うな」

「嫌よ!」

「綾、お前いい加減にしろよ!」


 我慢の限界とでも言わんばかりに龍司が怒鳴る。

 私はそれに対抗するように、声を張り上げた。


「だって、これはチャンスなんだもん!」

「チャンス?」


 龍司が怪訝な顔をする。


「そう。ジョーカーから抜け出すチャンス」

「……どういうことだ?」


 龍司が声を低める。


「私ね、このままジョーカーにいいようにされているのが嫌なの。自由になりたいの」

「お前……」

「だって、龍司は平気なの? 勝手に体改造されて、いいように扱われて。このままジョーカーにいたら、何命令されるかわかったものじゃないわ。明日には、人を殺せって言われるかもしれない。私、そんなの無理よ」


 知らず知らずのうちに言葉に熱がこもる。


 だって、小さい頃からずっと思っていた。普通に生きたいと。自由がほしいと。

 無理だと思ってずっとあきらめていたけど、もしかしたら……。


「お前の本音はそっちか?」

「……」

「要はジョーカーを抜けたいって話なんだろ。それにスターレンジャーを利用するつもりなんだな」


 龍司が鋭い目で私を見る。

 その視線を受け止めきれず、思わず目を逸らしてしまう。


「利用するっていうか、お互い協力しあえる部分があるんじゃないかって……」

「綾。それは無理だ」

「どうしてよ?」

「スターレンジャーがお前の頼みを聞くわけねぇ」


 龍司がきっぱりと言い放つ。


「なんでそう言い切れるの? だって、彼らは正義のために戦ってるんでしょ? 私たちの話もきっと聞いてくれるわ」


 顔なじみなんだし、きっと私の頼みを無下にはしないと思う。

 蒼二君、いい人だし。


「甘い。お前は甘すぎる」


 なによ……。


「そもそもお前、スターレンジャーがどんな奴らか知ってるのか?」

「それは……、まだ会ったことはないけど」


 でも、変身する前の人物には会っているのよ? 言えないけど。


「俺はあいつらと会って話したが、ひどいもんだったぜ」

「えっ! 龍司、スターレンジャーとしゃべったの?」


 そういえば、会議でそんなこと言ってたっけ?


「ああ、少しだけな。だが、全く話が通じなかった。聞く耳を持たないって感じでな。俺らみたいな悪党には、奴らの崇高な使命は理解できないんだと」

「えっ……」

「ありゃ、相当ヤバい。言ってることもほとんど意味がわからなかったしな」

「そ、そうなんだ……」


 どんな会話をしたんだろう? 気になる。


「悪いことは言わねぇ。奴らに期待するのはやめとけ」

「でも……。そうだ、スターレンジャーは5人いるんでしょ。龍司は5人全員と話したの」

「いや、主にピンクの奴だけだな」


 桃ちゃんかぁ……。

 彼女の暴走っぷりをしっているだけに、何ともいえない気分になる。


「相手が悪かったんじゃない? 他の色はまともかもしれないじゃない」


 蒼二君とか蒼二君とか。紅一君は、ちょっとどうかな……。


「あんな格好してる奴らなんざ、どう考えてもまともじゃねぇだろ」

「それはそうだけど……」

「だろ。やめとけ」


 そういうわけにはいかないのよ。

 なにか龍司を説得する方法は……。

 そうだ!


「わかった! 話を聞いてくれなかったのは、相手が龍司だったからよ」

「あ? どういう意味だ?」

「ほら、龍司って目つきが悪くて恐いから、誤解されちゃったのよ。その点、私ならカワイイから、きっと大丈夫。お願いしたら聞いてくれるって」

「…………はぁ?」


 “何言ってんだコイツ”って顔された! 


「……お前なぁ、俺は真面目に話してんだぜ?」


 ため息つかれた!


 なによ、なによ。ちょっと言ってみただけじゃないのよ。そんな反応することないでしょ!


「私だって、真面目に話してるわ!」

「そうかぁ?」

「何よ、バカにして。私の能力、なんだと思ってるのよ」

「催眠と誘惑だっけか。でも、成功率低いんだろ?」

「そんなことありません! 最近は6、ううん、7割方成功するんだから!」

「へぇー……」

「私が本気になればスターレンジャーだって、イチコロよ」

「イチコロねぇ……。ああ、そうだな。オマエハカワイイカラナ」


 ぼ、棒読み!

 ムカつく! ムカつく! ムカつく!


「それは置いといてだ。お前、肝心なこと忘れてんじゃねぇか? そもそも俺らは、ジョーカーの薬がないと生きていけねぇんだぜ?」


 勝手に置いとかないでよ。私は納得してないわよ。

 でも、薬ね。当然ひっかかるわよね。薬に関しては、何も解決してないのよね。

 それもひとえにアイツが無能なせい。ホント、役に立たないったら。


「それは……がんばって薬の製法を手に入れるから大丈夫!」


 “ノープランかよ”と龍司がつぶやく。

 うっ……。


「昆虫化を抑える薬はジョーカーのトップシークレットなんだぞ。知ろうと思っただけで処分対象になるヤベェ代物だ。それに薬の製法がわかったとしても、俺たちでは作れねぇだろ? どうするんだよ?」


 痛い所を突かれる。

 薬を作るとなると、ちゃんとした知識や技術、設備といったものが必要となる。材料だってすぐに手に入るものとは限らない。でも……。


「スターレンジャーなら作れるかもしれないわ」

「はぁ?」

「だって、怪人を探知するレーダーを作れるのよ? そんな技術があるなら、薬も作れるんじゃないの?」


 あっちには黒田博士がいる。何とかしてくれる……はず。


「そんなのお前の都合のいい想像だろ? レーダーのことだって、カマキリの推測だしな」

「だから、スターレンジャーに直接確認するんじゃない!」

「何でそうなるんだよ! そもそもヤツらは話が通じねぇって言ってるだろ」


 龍司が疲れた顔をする。“どうしてお前はそうなんだ”と言いたげな様子だ。

 そんな顔しなくてもいいじゃない……。


「それに、怪人たちのことはどうするんだよ?」


 怪人たちのこと?

次回、木曜日に更新。

「相談! ジョーカーを倒すには…③」

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