13.美味! サンフランシスコ観光
「さて、任務も終わったし、綾ちゃんこれからどうするの?」
「飛行機の時間、夕方だっけ? それまでは特にやることないから、適当に時間を潰すつもりだけど」
ホテルをチェックアウトした後は、暇ね。どうしようかな?
「あら。特に予定がないんだったら、私と一緒に観光しない? 案内するわよ」
えっ、ホントに?
「B・B、この辺り詳しいの?」
「詳しいってほどじゃないけど、サンフランシスコへは何回か仕事で来たことがあるの」
仕事か。ジョーカーの仕事かしら? それとも……。
「ねぇ、どうする?」
「観光ねぇ……」
別に興味ないけど、B・Bがそこまで言うなら、行ってもいいかな。
私はできるだけ素っ気なく答えた。
「まぁ、せっかくだから、行ってみようかしら……」
「本当? じゃあ、決まりね!」
B・Bは驚いた顔をした後、なんだか嬉しそうに笑った。
◆◇◆◇◆
B・Bが案内してくれたのは、サンフランシスコにある漁港の町だった。観光地としてとても有名な場所で、博物館や水族館がある他、ショッピングエリアも充実しているらしい。そして、なによりシーフードが美味しいとのこと。これ、大事!
「B・B、私、ここの名物が食べたいわ」
「ここの名物ねぇ。なら、ロブスターロールなんてどうかしら? ちょうど朝ご飯の時間だし」
ロブスターってザリガニだっけ? 美味しいの?
早速、ロブスターロールを売っているという屋台に行く。
わぁ、朝早いっていうのに、たくさんの人が並んでいる。これは、期待できる!
B・Bと二人で、屋台に並ぶ。順番が回ってくるまでの間に、メニューをチェックする。
ふむふむ、ロブスターロール以外にも色々あるのね。クラブロールにシュリンプロールかぁ。
あ、クラムチャウダーなどのスープ類も売っているんだ。何にしようかなー。
真剣に悩んでいると、私の順番が回ってきた。よし、決めた!
『ロブスターロールとクラムチャウダーを一つずつください』
やっぱり名物は外せない!
うきうきした気分で、料理ができあがるのを待つ。
ロブスターロールはホットドッグのエビバージョンって見た目。ふわふわのコッペパンにロブスターの身がこれでもかっていうぐらい詰められている。うー、できたての香りが、食欲をそそる!
渡された料理を持って、屋台近くに設置されているイートインスペースに移動する。私とB・Bは、向かい合うような形で、椅子に座った。
「いただきまーす!」
さっそくロブスターロールにかぶりつく。
うん! プリプリしててジューシー! レモンの酸味がいい味を出している。
こっちはどうかしら? 私はクラムチャウダーを飲む。濃厚なシーフードの味が口いっぱいに広がる。うーん、幸せ。
「綾ちゃん、美味しそうに食べるわねー」
B・Bが興味深そうに私を見ている。……やめて、恥ずかしい。
「……そうかしら? 普通でしょ」
もしかしたら、顔が崩れていたかもしれない。急いで、すました顔を作る。
「ねぇ、よかったら私のも食べる? 色々買ったから、味見したらいいわよ」
えっ、いいの?
いやいや、ここで飛びつくのは、さすがにはしたない。食い意地が張ってると思われてしまう。
……たとえ、それが真実であっても、私にもプライドがあるのだ。
「じゃあ、スープを一口いただこうかしら……」
控えめに言う。
「あら、それだけでいいの? 遠慮しなくていいのよ?」
……これ以上、私を誘惑しないで。
B・Bにクラブチャウダーをわけてもらう。クラブなので、カニね、カニ。
なるほど、こういう味ね。アサリよりも濃厚で、カニの出汁がよくきいている。うむ、いい感じ。
ごちそうさま!
ふー、美味しかった。お腹いっぱいになっちゃった。だってボリュームがすごいの。さすがアメリカ。
最後の方は味に飽きてきて、食べるのが苦しかったぐらい。B・Bはペロリと平らげていたけど。
「綾ちゃん、どこか行きたいところある?」
B・Bが食べたあとを片付けながら言う。
うーん、そういわれても、何があるかよく知らないのよね。
「ショッピングモールとか、どう? 地元デザイナーによるアクセサリーや民工芸品が売っているのよ」
私が困っていると、B・Bが行き先を提案してくれた。
「なら、それでいいわ」
我ながら、偉そうな返事だ。よくないとは思うけど、そう簡単にキャラは変えられない。
「じゃあ、案内するわね。ついてきて」
気を悪くした様子もなく、B・Bはニコニコしている。……いい人すぎる。
B・Bは、誰とでもすぐに打ち解けられるタイプなの。他の大幹部ともよく飲みに行ってる。
見た目と言動の不一致はあるけど、B・Bのコミュニケーション能力は、ジョーカーの中でもピカイチ! まぁ、他の怪人が低すぎるってのもあるけど。
B・Bに連れられて、赤レンガ造りのショッピングモールに到着する。昔、缶詰工場だった建物を改装したらしい。ワクワクしながら、中に入る。
食器や雑貨、駄菓子、オーガニックの化粧品、色々なものが並んでいる。
あっ、これかわいい。サンフランシスコをデザインしたティーカップ。二つセットになっている。値段も手頃だ。
私がティーカップを手に取ってじっと見ていると、B・Bがそれに気付いて声をかけてきた。
「綾ちゃん、気に入ったの?」
「ええ。でも、二つもいらないし、バラで売ってないかしら」
「あら、二つあったっていいじゃない。客にも出せるし」
「誰かを家に招く予定なんてないし……」
「これからあるかもしれないじゃない。セットで買っときなさいよ」
いや、ないでしょ。私の交友関係、ゼロどころかマイナスだから。
しかし、B・Bの強いススメで、結局カップをセットで買うことになった。ま、いいか。かわいいし。
ちなみに、B・Bはオーガニックな化粧水を買っていた。うん、女子力高いね……。
ショッピングをしていたらまたお腹がすいてきちゃった。私は育ち盛りなのだ、……たぶん。
B・Bに甘い物が食べたいって言うと、チョコレートショップを案内してくれた。カフェが併設されていて、美味しいチョコレートパフェが食べられるらしい。
「ケーブルカーに乗って行くのよ。サンフランシスコの町並みが見渡せるわ」
B・Bの言葉に、期待で胸がふくらむ。坂道が多いサンフランシスコでは、多くのケーブルカーが路面を走っているらしい。ケーブルカーに乗って坂道を登っていく。
「わぁ、きれい!」
海に面した美しい町並みが目の前に広がっていく。風光明媚な景色って、こういうのをいうのね。
潮風を感じながら、異国の風景を堪能する。昨日の刑務所での任務が嘘のよう。いつもこうだったらいいのに。
街の景色に見とれていると、B・Bがサンフランシスコのことを色々教えてくれた。世界中から移民が集まるこの街は、地区ごとに個性的な文化が根付いているんだって。今回は時間がないから行かないけど、大きなチャイナタウンや古い映画館などもあって面白いらしい。
あと、有名なのが野生のアシカの群れ。普段は波止場に、たくさんのアシカが日なたぼっこをして寝そべっているのだそうだ。でも夏のこの時期は、アシカがいないらしい。残念! 見たかったのに。
今度来たときはぜひアシカを見たい! でも、任務で来るのはちょっとね。
アイツを誘うとかは……無理だろうな。日本ならともかく、海外だし。
さて、チョコレートショップに到着! ここもレンガ造りだ。チョコレート工場を改装したんだって。そういうの多いのね。
カフェにはたくさんの人が並んでた。
むっ! これは順番がくるまで時間がかかりそう。私は、B・Bの方を見る。
「B・B、結構並ぶみたいだけど、平気?」
「別に構わないわよ。時間は大丈夫だし、私もパフェを食べたいもの」
嫌な顔一つせずに言う。……B・Bって、ジョーカー1の人格者だと思うの!
でも、パフェ目当てでカフェに並んでいる筋肉マッチョの姿は、言っちゃ悪いけど、かなり浮いていた。ごめんね、B・B。
◆◇◆◇◆
やっと私たちの順番が回ってきて、B・Bと一緒にカフェの椅子に腰掛ける。
メニューを見ると、美味しそうなパフェの写真がたくさん載っていた。
うわー、どれもおいしそう! しかし、ボリュームがすごい。これはお昼ご飯を抜いた方がいいかもしれない。
悩みに悩んだ末、私はお店の定番メニューと思われるシンプルなチョコレートパフェを頼む。食べ物に関しては、冒険しないタイプなのだ。
B・Bは新作のパフェを頼んでた。うん、そっちも美味しそうだったよね。
ドリンクとして、私は紅茶、B・Bはコーヒーを頼む。
パフェが出てくるまで待っていると、ふとB・Bの視線を感じた。私の方をじっと見ている。
ん、どうかした?
「綾ちゃん、変わったわね」
「えっ?」
「だって、前は私が誘っても絶対に来なかったじゃない? 雰囲気もやわらかいし。何かあったの?」
「別に何にも……。今日はそういう気分だっただけ」
「ふーん、そう?」
「そうよ」
B・Bは疑わしそうにこっちを見ている。
……そんなに違うかしら? 自分ではもはやよくわからない。ただ、舞の記憶を思い出して、私に変化があったのは確かだ。
今日は少しはしゃぎすぎたかもしれない。
何も言えないで困っていたら、B・Bは何かを思いついたって顔をした。
なんだ? 嫌な予感がする。
「もしかして、綾ちゃん、好きな人でもできた?」
「はぁ?」
いきなり何を言い出すのよ、このオヤジは!
次回は日曜に更新。
いきなり恋愛話を振ってくるB・B。
戸惑う綾がだした答えは?
次回、『秘密! ガールズ(?)トーク』




