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第39話 主従の契約

聖女様に何があったのかは読者様に委ねます。


「どうやって魔力を見せるの?」


 守護神様に魔力を示せと言われたけれどやり方がわからない。

 卵の殻にヒビを入れるだけなら殴る方が早いと思うんだけれど。


「こっちの方法じゃダメなの?」


 腕をぐるぐる回し始めると慌てた守護神様とリコットに止められた。

 やっぱり魔力じゃないとダメらしい。


『これだから脳筋(のうきん)は困るのだ』


 ちょっと、その言葉をどこで覚えたのよ!?

 守護神様がその気なら私も本気で卵にヒビを入れてやるんだから。


 やり方は卵に手をかざして魔法を使うだけらしい。

 私が限界だと思うまで魔力を込めて守護神様が判断する。


「それじゃやるよ?」

「お姉さま、頑張って下さい!」


 リコットを腕に抱きながらなので少しやり難いけれど、いつものパンを作る魔法を使うように魔力を込める。


『ふむ。これは純粋な魔力だな。だがまだまだ足りぬ』

「これがお姉さまの魔力なのですね……、とても綺麗」


 なぜかリコットにも私の魔力が送られているっぽい。

 どんな原理なのかわからないけれど少しパワーをあげてみた。

 魔力を送り込んでいる間はヒマなので今後のことを考えてみる。


 今回のドラゴン退治は冒険者ギルドの依頼だから報告に帰るけれど問題はその後に城から呼び出しがありそうなんだよね。

 リコットを監視役に付けてる時点で何だか変だし。

 あの宰相(さいしょう)や大臣たちに会うのは面倒だけれど仕方ないか。

 もしこれでも御託を並べるようならその時は……。


 タルコットに戻ったら久しぶりに新作のパンを出そうかな。

 そう言えばベルトランドさんやソフィアさんにはすぐに帰るって言っちゃったけれど心配してるかな。

 帰りにアヴェハイムの特産品をたくさん買ってご近所さんにも配らなきゃ。

 他にもユーウィンのギルド長クレマールさんに光風の宿でお世話になったメイテさんやテオも元気かな。

 私のパンを売り出したいって言ってたしこれが終わったら行ってみようかな。

 そんなことをぼんやり考えてみる。




『お主、まだ大丈夫なのか? もの凄い魔力量だぞ?』

「うっ、く、はぁはぁ、お、お姉さま……」


 守護神様が心配してくれているみたいだけれど全然平気。

 ただリコットの方は顔色が赤く上気して艶っぽい。

 普通に魔力を送ってるだけで煽情的(せんじょうてき)なことはしていないよ?


「も、もう、ダメですっ!」


 その言葉を最後に大きな声をあげると私の腕の中でグッタリしているリコット。

 まさかこれって……!?

 慌てて地面に降ろすと肩で息をしながら顔が赤くなっている。

 そして私を見つめる目はとろんとしていて……これはやり過ぎたかも。

 意識はしっかりしてるようだからしばらく地面に座っててもらおう。


「それじゃもっとパワーをあげるわよ?」

『な、なんだと! お主はまだ大丈夫なのか!?』


 何が大丈夫なのかわからないけれど、このままだと時間がかかって面倒だしもっとパワーをあげて一気に魔力を送り込んでみる。


『ぬっ、ぐぐっ……、まさかこれほどの人間がおるとは』


 レッドドラゴンとの戦いでお腹が減ったから魔力をかざしていない方の手でチョコパンを作ってみた。

 1口サイズにしてあるので用事をしながらでも食べやすい。

 まずは2個ほど作って1個は口に放り込んでもう1個はリコットに手渡す。


「私が作ったパンだけどよかったらどう? 無理して食べなくていいからね」

「こ、これがお姉さまが作ったパンですか?」


 まだ頬が赤いけれど幾分マシになったみたい。

 私のパンを手に取ってマジマジと見ている。


『お、お主、我に魔力を送りながら別の魔法を使って平気なのか……?』


 守護神様は心配してくれるけれど体には何も変化はない。

 それならもっと上げても問題なさそうかな。


「時間かかりそうだし100倍くらいパワー上げても平気だよね?」

「えっ!?」

『なにっ!?』


 私の言葉にパンを頬張ったリコットの動きが止まって唖然としている。

 守護神様も声が出ないのか静かだった。


「お、お姉さま。100倍って……本当にお体は何ともないのですか?」

「うーん、別に何ともないよ?」

「魔力が減ってるような感覚とかは?」

「そもそも魔力が減ってるって感じがわからないんだよね」


 そう言うと半分残ってたパンが地面に落ちる。


『お主、もうそろそろ……』

「それじゃいくよーっ!」


 私が大魔力を送り込んだ途端、卵が真っ白に輝き出した。

 それと同時にバキバキと変な音まで聞こえる。



 ――バリッッ!



「「あっ……」」

『あ……』


 ヒビでよかったはずの卵の殻が完全に割れると中から美しい鳥が姿を現す。


「「……綺麗」」


 体毛は炎のように真っ赤だけれど熱はまったく感じない。

 翼を広げると炎が具現化したようにも感じる。

 大きさはバレーボールの入るくらいかな。


『……まさか我が1人の人間の魔力で解放されるとは』


 そう言って赤い鳥は私の前に来て頭を下げた。


『お主……いえ、あなた様のお名前をお聞きしてもよろしいか?』

「えっと、私? 名前はクリムだよ」

『クリム様……』


 何度か口に出すと私の顔を見る。


『我は赤の(みかど)と申します。クリム様は我が主にふさわしいお方であるとお見受けしました。ぜひ我と主従の契約を』


 そこまで言うと頭を下げる赤の帝さん。

 リコットは驚きのあまり目を見開いたまま帰って来ない。


「うーん、そうしたいんだけれど赤の帝さんってアヴェハイムの守護神様なんでしょ? 勝手に離れても大丈夫なの?」

『我はすでにアヴェハイムではなくクリム様を主に決めました』


 どうなのかなとリコットを見てみると小さく(うなず)いている。

 まあ本人が大丈夫ならそれでいいかな。


「わかったわよ。えっと主従の契約ってどうすればいいのかな?」

『我に名を与えて下さい。そうすればその名が主従関係の証となりましょう』

「それなら……、カレンでどう?」


 赤い鳥を見ていてやっぱりパンの赤と言えばカレーかなと。

 私はカレーパンが好きなのだ。


『カレン……、素敵な響きの名ですね。ありがたく拝命します』


 そう言うと赤の帝――、カレンの体が輝き出し人の姿に変身する。

 肩まで伸びた髪は炎のように赤く、深紅の瞳はまるで宝石のよう。

 190センチはありそうな長身で腰には日本刀のような武器を()いている。

 元世界だったら間違いなくモデルかアイドルで大成功していると思う。

 そんな超イケメンが私の前に立っていた。


 つい見惚れているとリコットが私を呼ぶ声がする。


「お、お姉さま……、布が落ちて……」


 自分の体を見てみるといつの間にか覆っていた布が外れて全裸でした。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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