第37話 クリムvsレッドドラゴン その3
クリムが怒ったら怖いです。
そしてクリムとリコットの2度目の……。
「マズいよね……」
早く倒したいけれどさすが脅威度SAとあってかなり手強い。
しかもビキニ姿が気になって力が出せないせいか決定打に欠ける。
地割れもさっきより酷くなってきた。
「あれ、もう1匹のレッドドラゴンは?」
「お姉さまっ、祠が狙われています!」
「えっ!?」
片翼のレッドドラゴンに気を取られている間にもう1匹のレッドドラゴンが祠に襲い掛かろうとしていた。
「お姉さま、私にお任せください!」
大盾に隠れていたリコットさんがいつの間にか祠の前に移動していた。
そして魔法を唱えるとリコットさんと祠の周囲に薄い膜のような物が現れた瞬間、レッドドラゴンの炎の息吹がリコットさんに直撃する。
「リコットさんっ!?」
「……だ、大丈夫です、お姉さま」
薄い膜は炎を軽減するための防御魔法だろうか。
けれどレッドドラゴンの炎の息吹を完全に防ぎ切るのは不可能だった。
リコットさんはその場で片膝を地面について大きく肩で息をしている。
「お姉さま、ほ、祠が……」
レッドドラゴンの炎の息吹を受けて小さな祠は半壊していた。
その中からバレーボールくらいの卵のような物が転がり落ちる。
「えっ?」
確か祠にはアヴェハイム帝国の神様が祀ってあるって聞いていたけれどこの国の神様って卵なの?
呆気に取られていると炎の息吹を防いだことが気に入らないのかレッドドラゴンは巨大な尻尾を振り回して卵ごとリコットさんを吹き飛ばそうとしている。
あの状態で攻撃を受ければ命の保証すら危うい。
片翼のレッドドラゴンを蹴り飛ばしてリコットさんの元へ急ぐ!
そして卵を抱き上げてリコットさんを庇うように覆いかぶさった瞬間、レッドドラゴンの巨大な尻尾の攻撃で私と一緒に卵とリコットさんが吹き飛ばされて岩壁に激突した。
「……ふぅ、なんて力なのよ。っとリコットさん、大丈夫!?」
岩壁に激突する前に私が背後に回ってクッションの役目を果たせたと思うけれどそれでもかなりの衝撃だった。
リコットさんを見るとグッタリして意識が朦朧としている。
「リコットさん!? リコットっ、しっかり!」
すぐに<無限収納>から回復薬を取り出すがジャイアントトロール戦でかなりの量を消費したからあまり残っていなかった。
何とかリコットに飲ませようとするが意識が朦朧としているのか口の端から零れ落ちてしまう。
「こうなったら!」
回復薬を自分の口に含んでリコットへ口移しで少しずつ飲ませる。
少し零れたけれど半分以上は飲ませることができた。
そして数本の回復薬を直接リコットの体へ振りかける。
少し効果は落ちるけれど応急処置だ。
「ごほっ……うっ、お、お姉……さま」
「リコット、気が付いた!?」
回復薬の効果が出たのか少し意識を取り戻す。
「わ、私のせいで、お姉さまも怪我を……」
「これくらい平気よ。だからこの回復薬を飲んで休んでて」
「で、でも……」
「もう大丈夫、絶対に負けないから。だから安心して見てて?」
無理やり立ち上がろうとするリコットを座らせる。
さて、後ろで暴れている赤いトカゲたちを倒しますか。
「よくも私の可愛い妹に大怪我を負わせてくれたわね?」
レッドドラゴン2匹へ向かって歩きながら邪魔な布を取り払う。
恥ずかしさで動きが鈍くなりその結果リコットに大怪我を負わせてしまった。
だから今しばらくは自分の姿を忘れよう。
「少しだけ私の本気を見せてあげる」
一気に飛び出して片翼のレッドドラゴンへ怒りの正拳を叩き込む。
そのまま真上へジャンプして頭に飛び膝蹴りを放つと生命活動を停止した片翼のレッドドラゴンは地面へ倒れた。
私の動きに驚いたのかもう1匹のレッドドラゴンは炎の息吹を吐き出すが今さらそんな攻撃は効かないよ?
全身に炎の息吹を浴びながらレッドドラゴンへ歩みを進める。
もちろん全裸にもかかわらず火傷すらしていない。
「私を怒らせたのが悪いのよ」
空へ逃げようとするレッドドラゴンよりさらに上空へジャンプして地上に向かって蹴り飛ばす。
大きな地響きと共に落下したレッドドラゴンの頭部を目掛けて両足を揃えて一気に踏みつけると何かが砕ける音と共に地面へめり込んだまま動かなくなった。
「ふぅ、最初からこうしておけばよかったよ」
倒れたレッドドラゴンはそのまま放置してリコットの元へ向かう。
回復薬の効果はあるけれど早く街へ戻って適切な治療を受けさせないと。
「リコット、大丈夫?」
「お、お姉さま、凄かっ……た、です」
まだあちこちが痛むのだろう会話するのも辛そう。
こんな時に回復魔法が使えたらどんなに便利か。
「すぐに街へ連れて帰るからそれまで我慢してね」
取り去った布を拾って全裸からビキニ姿へ戻る。
風が吹いて布が捲れると見えてはイケない部分が見えそうになるけれどリコットの命には代えられない。
お嬢様抱っこでリコットを持ち上げるとさっきの卵が目に入った。
「念のためにこの卵を持って帰ろう」
そう思って卵を拾うために手を伸ばすと淡く光り出す。
今度は何が始まるのか知らないけれど私は忙しいんだってば!
何があってもリコットを守れるように卵から離すと誰かの声が聞こえる。
『そこの少女よ。暫し待つのだ』
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