第35話 クリムvsレッドドラゴン その1
「パン屋が異世界で無双してなぜ悪い!?」を投稿してから1ヶ月が経ちました。
当初は5話完結の短編集のつもりで書き始めた小説ですが、たくさんの方に読んでいただきここまで続けることができました。本当にありがとうございます。
今後ともお付き合いの程、よろしくお願いします。
「確かメリレトス火山はこっちだよね」
今日は火山に住み着いたドラゴン退治の依頼でやって来た。
アヴェハイムの冒険者ギルドで火山の場所も聞いてある。
私の足なら半日かからず到着予定だったけれど……。
「お姉さま、火山はこちらの方が近道ですよ?」
なぜかリコットさんが一緒に付いて来た。
昨日、魔物の買い取りが終わった帰りに受付のギルド職員に火山の場所を聞くと食い気味で「一緒に行きたい!」とお願いされたのだ。
最初は危険だからと断ったけれどリコットさんってSランク冒険者なのね。
それなら大丈夫かなってことで初めてパーティーを組んだよ。
ちなみに床に倒れていた冒険者たちは見ないようにしておきました。
「リコットさん、ここってどんな火山なの?」
「メリレトス火山はアヴェハイム帝国が祀る神聖な山で大きな儀式の時には頂上にある祠で祈りを捧げるのです」
「その祠には何かあるの?」
「はい。アヴェハイムを見守る神様がいらっしゃるんですよ。誰もお姿を見た人はいませんけれどね」
そう言って可愛く舌をペロッと出すリコットさん。
みんなの大切な場所みたいだし私も頑張って早く解決しますか。
リコットさんと雑談しながら歩いて行くと山の麓が見えてくる。
周辺に連なる山々より遥かに大きく頂上付近は火山の影響で赤々と燃えて空気が揺らいでいるようにも見えた。
「お姉さま、ここが入り口になります」
リコットさんに言われた方を見ると長い階段が見えた。
上の方は霞んで見えないけれど頂上まで続いてるとか?
途中で転んだら麓まで止まらないよね……。
「もしかしてこの階段を上るの?」
「儀式の時は数日かけて頂上まで歩いて向かいますけれど今回は依頼なので魔法を使いますね」
リコットさんはそう言って私たちに<飛翔>の魔法をかける。
「わ、体が浮いた!?」
「お姉さまは魔法が使えないのですか?」
「使えるけど私のはパンを作る魔法だからね」
「パン……ですか? そんな魔法が存在するのですね!」
さすがお姉さまと言って私に抱き付いてくるリコットさん。
まるで元気な妹ができた気分だよ。
「私よりもリコットさんの魔法の方が凄いよ」
「ふふっ、お姉さまに褒められました」
ちょっと頬が赤くなってるのが気になる。
もうキスとかは勘弁してよね。
炎による耐性の魔法をかけてもらって火口付近にある横穴へ向かう。
その奥に目的の祠があるらしい。
「あれです、お姉さま」
リコットさんが指を指す方向を見ると大きな広場の奥に小さな祠が見える。
その祠を囲むように巨大なドラゴンが横になって寝ていた。
「あれがギルドで言ってたドラゴンね?」
「……お姉さま、あのドラゴンは危険です」
「どう言うこと?」
「あれはドラゴンの中でも上位に位置する赤竜です! ギルドによる脅威度はSA……です」
脅威度SAって何?って聞くとSのさらに上だと教えてもらう。
リコットさんは驚きと恐怖で顔が青褪めていた。
これはかなりヤバい魔物であることは間違いない。
今までにもBランクやAランクの魔物も倒しているけれど気を引き締めた方がよさそうかも。
「お姉さま、まだ向こうは気付いていないようなので1度冒険者ギルドへ戻って他にも高ランクの冒険者を雇って連携した方がいいです」
こんなに真剣な表情のリコットさんを見たのは初めてだよ。
アホっぽい感じのリコットさんしか見てなかったけれど真面目な時はこんなに聖女様らしい表情の女の子なのね。
たぶん大丈夫な気もするけれど冒険者の経験で言えばリコットさんの方が間違いなく上だ。
そんな彼女がこれだけ言うのだから従った方がいいかも。
私よりも強い魔物もたくさん存在していると思うし。
「そうね。リコットさんがそう言うなら――」
その場を離れようとすると何かが動く気配がする。
『グオォォォーーッ!』
完全に目覚めたのかレッドドラゴンの咆哮が聞こえる。
ヤバい、気付かれたっぽい!?
爬虫類のような縦長の瞳孔で私たちを睨むレッドドラゴン。
赤黒い巨体に大きな翼はジャイアントトロールなんて比ではない大きさで圧倒的な強さを感じる。
魔王や勇者ですら手を焼く意味がよくわかったよ。
「リコットさん、やっぱりここで倒しましょう!」
「で、でも2人では……」
ここで私たちが街へ逃げればきっと追いかけて来ると思う。
そうなれば魔王戦で未だに疲弊しているアヴェハイムは大混乱だ。
「リコットさんは祠を守ってくれる?」
「お姉さまは!?」
「私1人で何とかやってみるから」
「そ、そんな危険ですっ!」
心配するリコットさんを祠付近に残してレッドドラゴンへ近寄る。
向こうもヤル気みたいだけれど、さてどうしようか。
ここは平地と違って火口付近に空いた巨大な洞窟の中なのだ。
あまり大暴れして火山に衝撃を与えすぎると噴火なんてことになり兼ねない。
「早めに仕留める方がよさそうだよね」
足に力を入れて一気にレッドドラゴンの懐へ踏み込む。
そして拳に力を入れて殴りつける。
『グォォァァーーッ!』
私の攻撃が効いたのか暴れるレッドドラゴン。
そのまま殴打で仕留めようとすると巨大な尻尾で吹っ飛ばされ岩壁に激突する。
「お姉さまっ!?」
今までの魔物ならこの1発で終わったはずなのに。
さすが脅威度SAと言われるだけはあるね。
「リコットさん、大丈夫だから!」
生きてるってことをアピールしておく。
今まで色々な魔物と戦ってきたけれどこの衝撃は初めてだよ。
立ち上がって体の砂埃を掃ってレッドドラゴンを見る。
「上空へ飛ぶのはズルいと思うんだけど!?」
そんな私の言葉を無視するように大きく息を吸い込むレッドドラゴン。
「お姉さま、炎の息吹ですっ! 逃げて下さいっ!」
リコットさんが叫んだ瞬間、私に向かって大きな炎が襲い掛かる。
間一髪で避けたけれど大事な服の一部は完全に焦げてしまった。
「さすがにこれはマズいかも」
避けた場所の地面はレッドドラゴンの炎の息吹で完全に溶けている。
こんな超高温の炎を全身で浴びたら骨まで残らないよね。
すぐに上空へジャンプしてレッドドラゴンの顔面を殴りつけると軽い脳震盪を起こしたのか地面へ落下してくる。
ついでに翼へ蹴りを入れて空を飛べなくしておいた。
『ウゴアアァァァーーッ!』
「まずは1個所っと。次は残りの――」
「お姉さまっ、後ろですっ!」
リコットさんの叫ぶ声が聞こえる。
目の前のレッドドラゴンじゃなくて後ろ?
振り返るとそこには別のレッドドラゴンが大きく息を吸い込んでいた。
そして――。
「お姉さまぁぁーーっ!」
私は背後にいたレッドドラゴンの炎の息吹に飲み込まれた。
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