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第32話 初めての

「いらっしゃいませ。『旅亭・不帰(かえらず)の旅人』へようこそ」


 宰相(さいしょう)に言われた宿屋へやって来た。

 思ったより大きくて綺麗な宿屋でびっくりしたよ。

 ただ名前がちょっと怖いんだけど。


(不帰の旅人って……、昔に何かあったの?)


 魔物は大丈夫だけれど霊的な物は許してほしい。

 物理攻撃が効かない相手だと私じゃ勝てないもん。

 受付へ向かうと笑顔の女性が応対してくれる。


「こちらの用紙にお名前をお願いします」

「はい。クリム……っと」


 用紙に名前を書いて渡すと何かに気付いたみたい。


「もしかしてお城から連絡がきているクリム様……でしょうか?」

「そうですよ。あ、そうだ!」


 宿の受付で渡すように宰相から手紙を預かったことを忘れてた。

 たぶん宿泊費がお城持ちだからその説明かな。


「し、失礼致しました! すぐにお部屋へご案内します!」

「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ?」


 今までは鍵を渡されて部屋番号を教えてもらうのが普通だったから部屋まで案内してもらうのが新鮮だったよ。


「こちらのお部屋でございます」


 女性が部屋の扉を開けてくれたので中へ入る。

 さすが宰相が紹介しただけあってとても綺麗で広い。

 普通に1泊したらいくらかかるのか気になるレベル。


「この窓からお城も見えるんですよ」


 窓を開けると眼下に帝都の景色が広がる。

 遠くに綺麗に修繕された城が見えて少しモヤるけれどね。


「そしてこちらのお部屋にはお風呂も完備しています」

「お風呂もあるんですかっ!?」

「そうなんですよ。お湯も出ますからぜひ入って下さいね」


 まさかロンシスタでお風呂に入れると思わなかった。

 貴族の中でも上流階級じゃないと設置されていないので宿泊施設で部屋の中にお風呂があるのは本当に凄いよ。

 ちなみに私も含めて平民は水浴びが普通だ。


「それではクリム様、ごゆっくり」

「ありがとうございます」


 案内してくれた女性が部屋を出て1人になる。




「はぁ、本当に変なことになっちゃった……」


 国王に会って手紙を叩きつけて帰るつもりだったのに、まさか冒険者ギルドの手伝いをさせられる羽目になるとは思わなかったよ。

 しかも宰相は他に何かありそうなんだよね。

 別れ際にチラッと見た時、嗤笑(ししょう)していたのが気になる。


「今は考えても仕方ないか」


 買い取りが終わるのは夕方過ぎだし、それまで観光しようと思ったけれどせっかく部屋にお風呂があるなら入らなきゃ勿体ない。


 さっそく脱衣所で服を脱いで浴室へ入る。

 中はそんなに広くはないけれどちゃんと洗い場と浴槽が独立していた。


「シャワーがないのは残念だけどそこまで贅沢は言えないかな」


 小さなハンドルを回すと蛇口からちゃんとお湯が出た。

 今まではすべて水だったからこれだけでも感動だよ。

 横に置いてあった石鹸で体と頭を洗い流して湯船にゆっくり浸かる。


「ふわぁぁ、気持ちいいー!」


 やっぱりお風呂のある生活は最高だね。

 最後に湯船に浸かったのなんていつなんだろう。


 いつかタルコットの家にもお風呂を設置してみたい。

 貴族のベルトランドさんなら何か知ってるかもしれないし今度聞いてみようかな。

 今までは普通に生活できればいいと思っていたけれど、のんびり生活するためにお金を稼ぐっていうのもアリかもね。


「あとはトリートメントかコンディショナーがほしい」


 髪も石鹸で洗ったからギシギシときしむんだよ。

 ロンシスタの女性も髪を洗うのは苦労しているみたいだし何か方法を考えてみようかな。

 久しぶりのお風呂を楽しんだ後、簡単な衣服に着替える。


「はぁぁ、気持ちよかったぁ」


 この後はご飯でも食べに行こうと思ったけれど眠くなってきた。

 お城から冒険者ギルドと色々あったし疲れが出たのかも。


「夕方まで少し時間あるし寝ようかな」


 寝室へ向かうと大きなベッドが置いてある。

 好きな人と一緒に寝転んでも余裕があるほどの大きさだ。

 もちろん私1人だと大の字になっても何の問題もなし。


 ただ……気になることが。

 布団の中央が盛り上がっている。


「えっと、ここって相部屋だったっけ?」


 大きな枕なんだと思い布団を(めく)ると1人の女の子が寝てました。

 変な男が寝てるんじゃなくてよかった……ってそうじゃない。


 寝顔を見ると気持ちよさそうに規則正しい呼吸音が聞こえる。

 知らない女の子だと思ったけれど、どこかで見たことがあるんだよね。


「あのー、ちょっと?」


 顔をツンツンと指でつつくとゆっくりと目を開ける女の子。

 まだ寝ぼけているのか私と焦点が合っていない。

 ゆっくりと女の子の腕が私の首に伸びて引き寄せられる。


「……う、うぅん、お姉さま……」



 ――チュッ。



 ロンシスタで初めてキスされました。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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