表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/43

第31話 依頼を受ける

「クリムさんには大変申し訳ないですが……」


 ギルド職員のピートさんが私に話し出す。

 倒れている冒険者たちが受けた依頼を私に引き受けてほしいと。


「他の冒険者に任せることはできないんですか?」

「すべてBランク以上の依頼ばかりでして……。ここにいる冒険者ではランクが足りないのです」


 それはわかったけれど私もBランク冒険者なんだけど?

 全部の依頼を1人でこなすのは厳しいような気が。

 ピートさんにそう言うと笑いながら否定された。

 いやいや、冒険者カードにはBランクって書いてあるよね?


「勇者や魔王と戦える伝説のクリムさんがBランクなわけないです!」


 力強く宣言すると周囲のギルド職員や冒険者も大きく(うなず)く。

 ユーウィンみたいに知らない間にランク上がってるとかないよね?

 でも冒険者たちを倒したのは私だし仕方ないから引き受けますよ。


「わかりました。どんな依頼が残っているのか見せて下さい」

「は、はい! クリムさん、ありがとうございます!」


 ギルド職員たちの表情に明るさが戻ったよ。

 さっきまで倒れそうな顔色だったし。


「クリムさん、これが彼らの依頼になります」

「えっと、なになに……」



 魔物が街道を塞いでいるので何とかしてほしい。

 鉱山を荒らすロックリザードの討伐を求む!

 誰もいないはずの屋敷で夜中に声が聞こえるから調査をお願い。

 大事な家畜が魔物に食べられる前に退治して下さい。

 引っ越しを手伝いをお願いします。

 少ない食材で節約レシピを教えてほしい。

 告白するために恋愛相談のアドバイスを。

 お金がないので貸して!

 等々……。



 後半はどうでもいい内容が多い気がする。

 どさくさに紛れてずっと残ってた依頼も引っ張り出してない?

 ギルド職員たちは私と目を合わせないよう違う方向を向いてるし。

 これがBランク以上の依頼なんて変だよね。


 まあ恋愛相談に関してはBランク以上かもしれないけれど。

 ちなみに日本人の時から恋愛経験ないから依頼は無理だよ?


 あと節約レシピも無理。

 こう見えても料理は苦手なのよね。

 異世界、ロンシスタへ来たときに魔法で作り出そうと頑張ったけれどなぜか失敗ばかりで諦めたのだ。


(パンならカレーでも焼きそばでも作れるのに)


 不思議だけれど今は深く考えないようになったよ。

 それからはお店に食べに行くようになったしね。


「……あれ?」


 依頼を読んでいく中で気になった一文を見つけた。

 手に取って詳しく読んでみる。


「火山に住み着いたドラゴンを退治してほしい。これの詳細は?」

「この依頼は――」


 アヴェハイム帝国が(まつ)る神聖な火山に最近、大きなドラゴンが住み着いてしまったらしい。

 冒険者ギルドでも最重要依頼で何組かの冒険者たちを送り込んだけれど全員が依頼失敗で中には命を落とした冒険者もいたとか。

 当初は脅威度Aとして扱っていたけれど失敗続きで脅威度Sに引き上げたけれど、そうなるとアヴェハイムでは誰も受けられない状況になってしまった。


「今までは脅威度Sの依頼は勇者が受けていたのですが……」


 そう言ってまた(うつむ)いてしまうピートさん。

 他にもSランク冒険者はいたけれど戦争が始まると他の冒険者ギルドへ移動してしまったみたい。

 国に仕える騎士たちと違って冒険者は自由だからね。

 まさか宰相(さいしょう)が無理やり私をここに送り込んだのはこれがメインとか?


「ピートさん、先にこの依頼を受けようと思うけどいいですか?」

「クリムさんの実力は先ほど見せてもらっていますけれど大丈夫でしょうか? 本当に危険な依頼なので他にも数組の高ランクと一緒に……」

「たぶん大丈夫だと思うけど危なそうなら帰って来ますよ」


 やっぱり異世界なんだしドラゴンは見ておきたい。

 それに何となくだけど大丈夫な気もするんだよね。


「ありがとうございます! アヴェハイムの冒険者ギルドでは手に負えない依頼なのでクリムさんに全面的にお任せします」

「これらの依頼の期限はいつまでですか?」

「できれば早めにお願いしたいのですが……」

「わかりました。今から行って来ますね」


 床に倒れている冒険者たちはギルド職員たちがちゃんと介抱してくれるみたいなので任せておこう。

 ちなみに引っ越し依頼から下は全部冒険者ギルドに丸投げしておいた。

 少し残念そうな顔をしていたけれど恋愛相談とか節約レシピは無理。




 ☆☆☆




 まずは街道を塞いでいる魔物を退治する。

 現場に向かうと大きなゴーレムが街道を荒らしていたので正拳1発で終わらせた。

 岩というより鉄に近い感じだったけれど私的にはどっちも変わらない。


 次に鉱山へ向かうと鉱山夫の人たちが集まっていたので話を聞く。

 数匹のロックリザードとそれを束ねるリーダー的なリザードの情報を教えてもらったので鉱山を適当に歩き回って出会ったロックリザードを殲滅させる。

 1匹だけキラキラしたリザードを見つけたので同じように倒した。


 最後に家畜を襲う魔物だけれど……。

 まさに襲い掛かろうとしていたのでジャンプして撃ち落とした。

 上半身が人間の女性、下半身は鳥のような魔物で驚いたよ。

 だけど胸の大きさが私よりも……。

 いつもより力を入れて倒した。



 ――3時間後。



「ただいまー」

「あれ、クリムさん?」


 ギルド内を片付けていたピートさんに話しかけられる。

 床に倒れていた冒険者たちは意識を取り戻してどこかに行ったらしい。


「クリムさんのことは説明しておきましたが……」


 ああ言う人たちって何度も突っ掛かって来るから用心しておこう。

 ピートさんみたいに改心してくれれば助かるんだけどね。


「ところでクリムさん、何か忘れ物ですか?」

「違いますよ。さっき受けた依頼をいくつか終わらせたので」

「……えっ?」


 ギルド職員たちが驚いて手が止まってた。


「あ、あの依頼をですか? まだ3時間しか経ってないですよ?」

「倒した魔物だけど確認します? あと買い取りもお願いします」


 解体作業場で依頼を確認してもらって後はゼイアさんにお任せだ。

 ギルド職員も作業員も驚いていたけれどね。


 それじゃ夕方まで宿屋で休憩しようかな。

 美味しいお店はすべてが終わってからのお楽しみってことで。


「それじゃ宿屋に向かいますか」


最後までお読みいただきありがとうございます。

ブックマークや☆☆☆評価をいただけると作者はとても喜びます!

タップするだけで終わりますのでよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ