第29話 態度が変わり過ぎ
みんな仲良く。
「な、な……」
僕の目の前で何が起こったんだろう。
受付で高ランク冒険者に蹴られた時に僕を助けてくれた女の子。
あんな可愛い女の子がBランク冒険者って聞いて驚いたよ。
そんな女の子が乱暴者が多いと有名なアヴェハイムの冒険者ギルドで高ランク冒険者たちと言い争いになっていた。
助けてもらった借りがあるから僕も止めに入ろうとしたけれど怖い。
まだゴブリンを倒す方がマシだよ……。
結局、女の子と冒険者たちで喧嘩が始まった。
「戦う気がない人は壁際で立って――」
女の子はそう言ってたから僕たちパーティーもそれに従う。
だけどここの冒険者ギルドは変だよ。
普通の喧嘩と違って女の子1人に冒険者30人以上だよ?
ギルドの人を見ると止める気配すらない。
「ねぇ、この手っていつまで上げてるのかな?」
僕の隣で同じように手を上げて立っているメンバーに聞かれたけれど僕だって知らないよ。
その時、女の子から30秒って呟きが聞こえる。
最初は何のことだろうって思ったけれどすぐに理解できた。
「えっ!?」
開始の合図と共に女の子の姿が消えたんだよ!?
そして冒険者たちが小さな呻き声をあげて次々と倒れていく。
――ドガッ!
中には壁や天井に吹き飛んだ冒険者もいたけれどどうなってるの?
だって何も見えないんだよ。
最後に僕を蹴り飛ばした髭の冒険者の前に女の子が現れてニコッて笑ったと思ったら僕と同じように蹴られて扉の方へ吹き飛んでた。
うん、何だかスッとしたかな。
ありがとう、Bランクの可愛い女の子さん。
☆☆☆
「ふぅ、終わりっと」
私の周囲では冒険者たちが横たわっていた。
中には壁と抱擁している人や天井の飾りになった人もいるかな。
もちろん壁際で両手を上げていた冒険者には手を出してないよ?
「ギルド職員の人、何秒だったか教えてくれる?」
「……え、あ、はい、18秒……です」
「18秒ね。思ったより早く終わったかな」
最初は30秒は必要だと思ったけれど半分で終わっちゃったよ。
相手は一応冒険者だからあまり怪我をさせないよう手刀で意識を刈り取るだけにしたけれど、何人かは殴ったり蹴ったりしたから多少の怪我はしてるかも。
だけど先に喧嘩を売ったのはあっちだしねぇ?
「あ、壁際の冒険者の人はもう手を下ろしても大丈夫ですよ?」
そう声をかけるけれど誰も手を下ろさない。
もう何もしないってば!
「本当に何もしないからね?」
聞こえてないと困るのでもう1度だけ声をかけておく。
だけど床で寝転んでいる冒険者をただ静かに見つめたままだったよ。
まぁ、大丈夫かな。
念のために2回も言ってあるしね。
それよりもギルド職員の方を向いて声をかける。
「ところで冒険者カードだけど確認する?」
「あ、いえ、大丈夫だ……です」
「それなら魔物の買い取りをお願いしたいんだけど?」
「それでしたらこちらへどうぞ」
数分前と同じ人物だと思えない。
最初からこうすればよかったのにね。
「買い取りはジャイアントトロールだけど大丈夫かな?」
「ジャイアントトロールですか? ま、まさか……!?」
ギルド職員と壁際の冒険者たちが騒然としている。
アヴェハイムの冒険者ギルドは高ランクの冒険者が多いからそんなに珍しくないと思ったんだけれど……。
それより壁際の冒険者たちっていつまで手を上げてるんだろう。
「ジャイアントトロールですが通常と違った部分がありませんでしたか!?」
なぜか興奮して聞いてくるギルド職員。
他の受付カウンターにいた男性職員も集まって来る。
「ジャイアントトロールを見たのは初めてなので違いと言われても……」
「では頭部の部分だけでもお持ちでしょうか? なければすぐにギルド職員を現場に派遣――」
「ああ、持ってるから大丈夫です」
そう言って<無限収納>からジャイアントトロールの頭を見せた。
踵落としで頭の形が不自然だけれど何も言われなくてよかったよ。
ギルド職員たちは頭部を見て話し込んでいる。
「このジャイアントトロールって……」
「これが例の魔物だと思います。この色味は他と違うので」
私だけ置いてけぼりなんだけど?
このジャイアントトロールが何なのか教えてくれないかな。
「お嬢さん、お手柄です!」
ギルド職員だけでなく冒険者たちからも拍手をされるけれど到着した時の雰囲気と違い過ぎて理解が追い付かない。
だって「お嬢さん」だよ?
「このジャイアントトロールは特殊個体と呼ばれる魔物です」
「特殊個体ですか?」
「そうです。特殊個体と言うのは――」
ギルド職員の1人が目を輝かせて説明してくれる。
簡単に言えば強く進化した魔物で脅威度は1ランク上になるとか。
「通常のジャイアントトロールは脅威度Aですが、こいつは特殊個体なので脅威度Sに相当します」
何でも2週間ほど前から暴れ回っているらしくアヴェハイムの冒険者ギルドに何度も討伐要請が入っていたみたい。
ただ勇者が追放されて戦争で高ランク冒険者が少なくなった今、討伐メンバーを向かわせても失敗ばかりで途方に暮れていたとか。
「このジャイアントトロールですがお嬢さんの他にどんな冒険者と一緒に戦ったのか聞いてもいいですか?」
「え、私1人ですよ?」
「……はい?」
「だからジャイアントトロールは私1人で倒しましたよ?」
私がそう言うと壁際にいた冒険者たちが集まって来た。
「どんな武器を使って倒したのですか!?」
「武器は使ってないですよ? 苦手なので」
「で、ではどんな方法で……?」
「蹴り1発です」
あ、ギルド内が静かになった。
「「「えええぇぇぇーーーっ!?」」」
冒険者たちの驚いた声が冒険者ギルドに響き渡った。
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