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第28話 やっぱり冒険者ギルドはお約束

やっぱりお約束は書いてしまいます。


「ここが言ってた場所ね」


 城を出て宿へ向かう前に冒険者ギルドへやって来た。

 先日倒したジャイアントトロールの買い取りをお願いするためだ。


「こんにちは……?」


 大きな扉を開けて中へ入るとたくさんの冒険者で溢れていた。

 ただ他の冒険者ギルドと違って雰囲気の悪さが気になる。


 冒険者同士で言い争いをしているのはもちろん酒樽のような物を抱えて床で寝ている冒険者もいれば低俗な話で盛り上がっている冒険者もいる。

 そして私の姿をジロジロ見て下卑(げび)た笑いを浮かべる冒険者たち。


 こんな場所で長居は無用かな。

 さっさと用事を済ませるために受付カウンターへ急ぐ。


「魔物の買い取りをお願いしたいんですけど」

「あぁ? お嬢ちゃんは冒険者なのか?」


 他のギルドと違ってアヴェハイムの受付カウンターは全員男性職員だ。

 確かに綺麗な女性職員だと野犬の群れにエサを投げ込むのと同じだね。


「そうですよ? 冒険者カードもあります」


 魔法の鞄(マジックバッグ)から冒険者カードを取り出そうとすると横の受付カウンターで髭の冒険者と若い冒険者たちが何やら騒いでいた。


「早くどけっ!」

「で、でも今は僕たちの順番で……」

「お前らみたいなゴミランクが俺に意見するんじゃねぇよ!」


 髭の冒険者が若い冒険者を蹴り飛ばす。

 そのまま私の方へ倒れて来たので受け止めて声をかける。


「大丈夫ですか?」

「あ、ごめんなさい。大丈夫です」


 近くにいたメンバーも急いでこちらへやって来る。


「ここのギルドって普段からこんな感じなんですか?」

「はい。この街は高ランクが多いので腕に覚えのある人が多くて喧嘩が絶えないんです。僕たちみたいな低ランクは仕事もなかなか……」


 そう言って少し寂しそうに介抱されながら去って行った。

 私の順番を譲ろうとしたけれどもう少し人が減るまで待つみたい。


 蹴り飛ばした髭の冒険者は気にもならないのか見向きもしない。

 そしてギルド職員も普通に受付をこなしている。


 ここって無法地帯なの?

 なんだかなーって思っているとギルド職員に呼ばれる。


「そこのお嬢ちゃん、買い取りどうするんだ?」

「あ、お願いしたいけど……大きい場所はないの?」


 だって今から取り出すのはジャイアントトロールだよ。

 いくらアヴェハイムの冒険者ギルドが大きいからって3階建てビルに相当する魔物をここで出すと大変なことになりそうだし。

 ギルド職員に聞くと別の場所から声が聞こえる。


「おいおい、もっと大きい場所だってよ!」

「子供から見ればゴブリンや牙の猪(ファングボア)でも大きく見えるんだろ?」

「確かにファングボアは怖いな! がはは!」


 無視していると今度は別の冒険者から声をかけられる。


「おい、俺たちはCランク冒険者だけど一緒に組まねぇか? 金を稼がせてやる代わりに夜は俺たちに付き合えよ?」

「嬢ちゃん、俺たちなら1日銀貨1枚やるからこっちと組もうぜ?」

「それって娼婦を連れてるのと一緒だろ! うはは」


 ここは動物園か何かなの?

 いや動物園に例えたら動物に失礼か。


「あなたたちと組む気はないです。これでもBランク冒険者なので」


 ここでEランクだったらもっとバカにされるところだよ。

 Bランクにしてくれたユーウィンの冒険者ギルドに感謝しておこう。


「なんだとっ!?」

「お前みたいな子供がBランク?」


 冒険者カードをギルド職員に見せる。

 私がBランクだと宣言したことで全員の興味が私に集中していた。


「……確かにBランク冒険者だな。偽物ではなさそうだし」


 冒険者カードをゆっくり確かめるギルド職員。

 偽物なんてあるんだとちょっと驚いたけど。


「どこのギルド出身なんだ?」

「私はタルコット出身の冒険者だけど?」


 街の名前を出すとなぜか笑い出すギルド職員と冒険者たち。


「タルコットってあの小さい街のことかよ!」

「あんな田舎にも冒険者ギルドってあるんだな」

「うはは! あの田舎でBランクって殺人熊(キラーベア)でも倒したのか?」

「俺の実力ならタルコットでSランク冒険者じゃねぇか」


 キラーベアは脅威度Cの魔物だっての!

 ギルド職員も私を見て面倒臭そうにため息を付いてるし。

 タルコットが小さな街だって言うのは否定しないけれど、こんな人たちにバカにされる言われもない。


「確かにタルコットの冒険者ギルドは小さいけれどここの冒険者ギルドほど腐っちゃないわよ? 私みたいな子供をバカにして憂さ晴らししかできないような無能は冒険者なんていないしね」


 そう言うとギルド内がシーンと静かになる。

 まぁ、売り言葉に買い言葉ってことで。


「なんだと、てめぇ!」

「ガキのくせに調子に乗るんじゃねぇぞ!」

「お前がBランクってのも荷物持ち(ポーター)としてくっ付いてるだけだろうが!」


 私にバカにされたのが悔しいのか騒ぎ出す冒険者たち。


「はぁ、弱い犬ほどよく吠えるって……ね?」


 そう言って周囲を見渡すと顔を真っ赤にした冒険者たちが近寄って来る。


「お前、ただで済むと思うなよ?」

「ガキだと思って許してもらえると思ったら大間違いだからな?」

「殺しはご法度だが喧嘩は不問だしな。俺たちが軽く揉んでやるよ」


 結局はこうなるんだよねぇ。

 私って冒険者じゃなくてパン屋なのに何してるんだろう?


「私と戦う気がない人は壁際に移動して両手を上げててくれる?」


 さすがに全員が敵対してると思わないけれど知らない人たちだし間違って怪我させちゃ悪いもんね。

 何組かの冒険者たちが無関係って感じで壁際に移動する。

 さっきの若い冒険者たちも壁に立って両手をあげていた。

 敵対したらどうしようと思ったけれど安心したよ。


 ちなみにギルド職員は全然止める気配がない。

 喧嘩は日常茶飯事だから面倒事は自分たちで解決しろってことかな。


「そこのギルドの人、開始の合図と同時に時間を計ってくれる?」

「はぁ、何で俺がそんなことを」


 ぶつぶつ言いながら手を上げて準備をするギルド職員。

 敵対する冒険者たちは見た感じで30人以上。

 30秒くらいあれば足りるかな?


「それじゃいくぞ? 開始っ!」


最後までお読みいただきありがとうございます。

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