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第26話 アヴェハイム帝国へ到着

「アヴェハイム帝国へ到着しました」


 御者のおじさんが乗客に声をかける。

 あの騒動後は何事もなく到着するまでぐっすりだったよ。


 馬車を降りてから腕を上げて大きく伸びをする。

 変な姿勢で寝たのと馬車の振動で体がちょっと痛い。

 そこへアモルドさん家族がやって来て声をかけてくる。


「クリムさん、本当にありがとうございました。私の住んでいる街へ来る時があればぜひ我が家へお越し下さい。家族一同で歓迎しますよ」

「ありがとうございます、アモルドさん。その時はぜひ!」


 アモルドさん家族は乗車前より家族の仲が深まったみたい。

 盗賊たちの目の前で家族を守ったんだから尊敬もされるよね。

 3人で仲良く手を繋ぎながら街中へ歩いて行く姿が幸せそうだよ。


「あの、クリムさん?」


 アモルドさんたちを見送った後、若いお姉さんたちから声をかけられる。


「助けてくれて本当にありがとうね!」

「それにパンも凄く美味しかったしファンになったよ」


 私のパンのお得意様が増えたみたい。

 いつかタルコットに買いに来てくれるかもね。


「そんな、ありがとうございます。この後は観光ですか?」

「ええ、2人でアヴェハイムを楽しむわ」


 手を上げて去って行く若いお姉さん2人を見送る。


 ちなみに初日に意気投合していたお兄さんだけれど……。

 あの後、女性たちから完全に無視されていたよ。

 我が身可愛さに盗賊へ売り渡そうとした男に誰も笑顔なんて向ける訳がないしね。

 少しでもお姉さんたちを守るような発言をしていれば今日の観光は最高の1日になったはずなのにご愁傷さまってことで。


「クリムちゃん、今回は世話になったな」


 最後にラウルさんたちから声をかけられた。


「こちらこそ。あの盗賊たちはお任せしていいんですか?」

「もちろんだ。奴らは俺たちが責任を持って役人に突き出しておくさ」


 騒動後の盗賊たちはとても静かだった。

 私が近づくたびに小さな叫び声をあげるのはどうかと思うんだけど?

 こんな見た目でも中身は25歳の女性だし地味に傷付いた。


(たぶんアレが原因だよねぇ……)


 昨日の夜、すべてが終わって寝る前に盗賊へ脅しをかけたのだ。

 だって知らない間に何かを企んでたら危険だと思ったし。

 ただ、その方法がマズかった気がする。


 足元に落ちていた盗賊たちの剣を数本手に取って力任せに折ったのだ。


「あなたたちの両足の真ん中にぶら下がっている()()もこうなりたくないでしょ?」


 と、言って。

 もちろん全員が震えてたよ?

 盗賊たちだけじゃなくて乗客側の男性陣も一緒に。


 何であんなセリフを言っちゃったのかなぁ……。

 ただ盗賊たちに捕まっていたらアレで酷い目にあわされたんだろうなと考えたらつい?


 ラウルさんたちにも「ちょっと!?」って驚かれるし。

 若いお姉さんたちには「やっちゃえ!」って応援されたけど。

 それからの盗賊たちはとても大人しかった。


「それじゃ盗賊はラウルさんにお任せします。タルコットへ寄る時はぜひお店にも来て下さいね」

「ああ、必ず寄らせてもらうよ。じゃあな!」

「クリムちゃん、またね」

「次も美味しいパンを頼んだよ!」


 ラウルさん、ウィルさん、ジュードさんと別れを告げる。

 短い馬車の旅だったけれど案外楽しかったよ。


「さて、私も出発しますか!」




 アヴェハイムへ到着して最初に感じたのは復興があまり進んでいない?

 私がこの国を追放されてからだいぶ経つけれど街は未だに瓦礫に埋もれた場所が多々あった。


「もっと綺麗になってると思ってたのに」


 近くの商店のおじさんに話を聞いてみる。


「あの、この辺りってまだ復興作業が遅れてるんですか?」

「そうだよ、お嬢ちゃん。国王様は街よりも自分の城を優先して職人を全部そっちに回してるんだよ」


 おじさんがそう言うと他のおじさんやおばさんも参加してくる。


「魔族の国へ攻めるのに男手を連れて行って、負けて帰って来たら今度は魔族に攻め込まれてこんな状態なんだよ」

「あの国王様になってから街のことは後回しばっかりさ。もうこの国も終わりかねぇ」


 そう言って私が会話に参加していないのに4~5人くらいで愚痴の言い合いになっている。

 それだけ街の現状は酷いってことだよね。


 みんなに挨拶をして別れた後、城へ向かう前に寄りたい場所がある。

 私がアヴェハイムに住んでいた頃のお店だ。

 大通りを進んでひとつ路地裏に回ってその先にある小さなお店。


「……」


 そこは瓦礫の山だった。

 私のお店だけでなく近所の商店や家なんかも戦争によって壊されたままになっている。

 周辺を歩き回ると私のお店があった近くに手のひらほどの小さな金属プレートが落ちていた。


「……ムのパ……」


 近所に住む鍛冶屋のおじさんがくれた看板の一部。

 初日はパンなんて腹が膨れん!とか言ってたけれど3日目にはお店に並んでたっけ。

 その時にもらった看板だった。


 その看板の一部だった物を<無限収納>に入れる。

 いつかあのおじさんに出会ったら打ち直してもらおう。


「さてお城に向かおうかな」


最後までお読みいただきありがとうございます。

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