第25話 私の冒険者ランクって
「戻りましたよ」
ラウルさんと一緒に馬車へ戻るとウィルさんたちが駆け寄って来る。
「クリムちゃんにラウル、大丈夫だったか!?」
「私は大丈夫だけどラウルさんが怪我をしてるから治療をお願いします」
「ああ、わかった。任せてくれ!」
回復薬も10本ほど提供して後はウィルさんたちに任せる。
そして不安そうにしていた他の乗客たちへ向かって声をかけた。
「盗賊と魔物は退治したからもう大丈夫ですよ」
「はぁぁ、助かった……」
「……よ、よかった。本当によかった」
私の言葉に安心したのか乗客たちは地面へ座り込む。
アモルドさん家族は抱き合って泣いているし若いお姉さんたちも喜んでいた。
本当に冒険者以外の人たちに怪我がなくてよかったよ。
しばらくしてアモルドさんが声をかけてくる。
「クリムさん、本当にありがとうございました! こうして家族と一緒に過ごせるのも冒険者の方々やクリムさんのおかげです!」
その言葉を皮切りにみんなが私にお礼を言ってくる。
「私1人では無理でしたよ。ラウルさんたちがいたから」
「そんなことはないぞ?」
私たちの話が聞こえていたのかラウルさんが横から話しかけて来た。
怪我は回復薬で少しは落ち着いたみたい。
「盗賊たちだが人数が多くて俺たちだけでは無理だったさ。それに何とか撃退してもジャイアントトロールなんて魔物は想定外だぞ?」
ラウルさんが魔物の名前を出すと若いお兄さんが驚いている。
「ジ、ジャイアントトロールですかっ!?」
「ああ、そうだ」
「あの魔物の脅威度って確か……」
「ジャイアントトロールの脅威度はAだよ。そして俺たちはCランク冒険者だ。これが何を意味するかわかるかい?」
そう言うと黙り込む若いお兄さんと他の乗客たち。
アモルドさんが最初に口を開く。
「クリムさんがいなければ全滅でしたか……」
「そう言うことだ。本当にクリムちゃんには感謝だよ」
ラウルさんの言葉に乗客から拍手までされちゃった。
「俺も長いこと冒険者をやってるがこんなに可愛い娘があんなに強い冒険者なんて初めて聞いたよ」
可愛いって……。
日本人だった頃は1度も聞いたことがないセリフだよ?
てっきり都市伝説だと思ってた。
盗賊たちの見張りをしていたウィルさんやジュードさんがジャイアントトロール戦のことをラウルさんに聞いている。
やっぱり冒険者としてどんな活躍だったのか聞きたいらしい。
私がジャイアントトロールと力比べをしたことや大木をへし折ったことを話すたびに「なにっ!」とか「すごい!」と声が漏れている。
話が終わった頃には少年のような目で私を見ていた。
そんなキラキラした目でみないで下さい。
うちはパン屋なのでペット禁止なんです……、あ、おじさんなら平気か。
「クリムちゃんって冒険者なんだよな? ランクを聞いてもいいか?」
「私の冒険者ランクは見習いが終わってEランクですよ?」
「……」
なぜか不思議な表情をしているラウルさんたち。
「えっとEランクって聞こえたが……」
「はい、間違いなくEランクですよ? 冒険者カードを見ます?」
そう言って<無限収納>から冒険者カードを取り出して見せる。
「……」
「ねっ? つい先日見習い試験を受けてクリアしたばかりなんですよ」
「クリムちゃん、このカードにはBランクって書いてあるぞ?」
「……えっ?」
慌てて自分の冒険者カードを見直すと確かにBランクって書いてある。
記憶を探るとユーウィンの冒険者ギルドを去る時に「おめでとうございます」って言われたような気が……。
あれって見習い卒業してEランクになったからだと思ってたよ。
「そっか、私ってBランクの冒険者なんだ」
「おいおい、今日まで知らなかったのか?」
「普段はパン屋がメインなので。ははは」
「ふはは、こりゃ俺たちももっと頑張らないと可愛いパン屋に負けちまう」
そう言うとラウルさんたちは楽しそうに笑い出す。
「さて、後のことは任せてクリムちゃんや他の乗客たちは休んでくれ」
「でもラウルさんたちも戦闘で疲れてるんじゃ?」
「俺たちは馬車の護衛が仕事だからな。こんな怪我も仕事の一部だよ」
ドンと胸を叩くラウルさん。
そして隣のウィルさんが声をかけてくる。
「俺とジュードはラウルほど怪我は負ってないしクリムちゃんからもらった回復薬も残ってるから問題ないよ」
そう言うことならお願いしようと思う。
実は睡魔がかなりヤバいのだ。
その前にラウルさんやウィルさん、ジュードさんの疲労回復のためにパンを出そうかな。
あれだけ戦闘をしたのに見張りまでやってくれるんだもんね。
「それじゃ3人でこれでも食べて下さい。少しは疲労が抜けると思うので」
私が3人のために取り出したのは「ハムとたまごのサンドイッチ」だ。
菓子パンと違って生地がしっとりして食べやすいと思う。
「クリムちゃん、これは?」
「お店では出したことがない新製品ですよ。だけど味は保証します!」
私がラウルさんたちにお皿を渡すと他の乗客たちが集まって来る。
さっきまで眠そうにしてたよね!?
若いお姉さんなんて興味津々で見てるんだけど。
「みなさん、眠たくないんですか?」
「そうなんだけど新製品って聞こえたし……、ねぇ?」
食べたそうにしていたから出しましたよ、大量に。
お願いだから寝かせて!
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