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第23話 クリムvs盗賊 その3

クリム無双の続きです。

あまり過激な表現にならないよう抑えめにしています。

それでも物語の都合上ある程度はお許しを。


「終わりましたよ」


 馬車の前は終わったので後ろへ戻ってラウルさんに声をかける。

 てっきり戦闘中だと思ってたのに私の姿を見て全員が止まってた。


「どうしたんですか?」

「今、前の方からもの凄い音がしたんだが魔物でも出たのか?」


 さすがに大木が倒れた音はこっちにも聞こえてたみたい。

 もし魔物が出たのなら人間同士で争っている場合じゃないしね。


「それって大きな木が倒れただけですよ」


 私が原因で……とは言わないでおく。

 さすがに抱き潰したなんてちょっと恥ずかしいし。


「そうか……ってクリムちゃんは大丈夫なのか!?」

「はい、大丈夫ですよ」


 周囲を見渡すと数人の盗賊が斬られて血を流して倒れていた。

 馬車の前と違って激しい戦闘だったことがわかる。

 そしてラウルさんたちも大勢の盗賊たちを相手にして体のあちこちに傷を負っていた。


「ラウルさん、ここに回復薬がありますから使って下さい」

「すまん、助かるっ! ところで馬車の前はどうなってる?」

「あ、終わりましたよ」

「応援が必要ならウィルを向かわせ……。終わった?」


 剣を構えながら思わず私の方を振り向くラウルさん。

 その隣では私の応援に向かうために急いで準備をしていたウィルさんが声をかけてくる。


「クリムちゃん、本当に終わったのかい?」

「倒した盗賊たちは御者のおじさんに借りたロープで縛ってありますよ」

「……」


 うん、無言になるのはわかる。

 相手は大人の男でしかも複数の盗賊たち。

 私みたいな子供が倒したと言っても簡単には信じてもらえないよね。

 逆の立場なら私だって無言になるよ。


「もう抵抗しないと思うけど武器だけは取り上げました」


 あれだけ脅したけれど何が起きるかわからないから武器は回収済み。

 それを<無限収納(ストレージ)>から取り出して見えやすい場所へ並べてみた。


「長剣5本、弓1張、短剣2本っと。これで全部でしたよ」

「……本当に倒したんだ」


 ウィルさんだけでなくジュードさんやラウルさんも驚いていた。

 すると別の方向から声が聞こえる。


「おいっ、ガキ! 俺たちの仲間に何をしたっ!?」

「何をしたって言われても……。襲って来たから倒したんだけど?」


 素直に答えると盗賊側で何か揉めているっぽい?


「アイツら何をしてるんだっ!?」

「小娘だからって油断し過ぎだろうが! 酒でも飲んでたのかよっ!?」

「しかし向こうは8人いたはずだぞ?」


 やっぱり見た目って大事なんだね。

 私が熊みたいな大男の冒険者だったらこんなこと言われないんだろうな。


 盗賊たちが仲間内で騒いでいる隙を狙ってラウルさんが動き出す。

 目の前にいた盗賊を袈裟斬りにして、そのまま横の盗賊へ斬りつけた。

 ウィルさんもすぐに行動を開始して別の盗賊を狙っている。

 ジュードさんは何かを呟いていると思ったら<火球(ファイアボール)>を飛ばして盗賊の1人が地面に倒れる。


「おぉ、ジュードさんって魔法術士なんですね!」


 私の言葉が聞こえたのかジュードさんが照れたように微笑む。

 魔法術士じゃなくて可愛いおじさんでしたよ。

 そんなジュードさんとの会話を邪魔するように盗賊の声が聞こえる。


「くそっ、死にやがれっ!」


 2人の盗賊がジュードさんを目掛けて弓を放つ。

 魔法を放った直後では動きが鈍いのか飛んできた矢を避けられない……んだけれど私が横にいるしね。

 飛んできた2本の矢を掴むと盗賊へ投げ返す。


「うぎゃっ!」

「ぐうぅぅ……」


 盗賊の1人は肩を、もう1人は足を貫通して呻きながら倒れた。

 ジュードさんは私の動きに驚いていたけれどすぐに戦闘態勢へ戻る。


「クリムちゃん、ありがとう!」

「いえ、どういたしまして」


 それじゃ今度はラウルさんたちの応援に向かいますか。




 ラウルさんとウィルさんは盗賊と戦闘中だ。

 いくらラウルさんたちがCランク冒険者とは言え相手が元兵士や傭兵の集まりだとさすがに分が悪い。

 さっき渡した回復薬で少しは怪我も治ったけれど疲労までは回復しない。

 肩で息をしているラウルさんとウィルさんに声をかける。


「ここからは私が相手をするので2人は少し休んでて下さい」

「はぁ、はぁ……、まだ大丈夫だ!」

「何を言ってるですか! 怪我が完全に治ったわけじゃないんですよ!?」

「それはわかっているが相手は5人。元兵士だけあって手練れなんだ。クリムちゃんが強いのはわかったがそれでも1人だと危険だ!」


 そう言って私を気遣ってくれるラウルさん。

 もの凄く嬉しいんだけれど早めに終わらせたい。


(それにちょっと嫌な予感がするんだよね……)


 このままだと私に任せてくれないので盗賊へ声をかける。


「えっと、今から私が相手をするけどいいかな?」

「ガキが何を言ってるんだっ!? 前の奴らがどうなったか知らねぇが俺たちを甘く見るなよ!」


 はい、交渉成立ってことで。


「いくよー?」


 この声を合図に私の前にいた盗賊目掛けて一気に距離を縮める。

 懐まで入るとしゃがんでから上へ伸びる勢いで相手の腹を掌底(しょうてい)で殴りつけた。


「うぼぉっ!」


 少し力が強すぎたのかそのまま数メートル上空へ飛ばされる盗賊。

 1~2秒ほどで落ちてきた盗賊が地面へ叩きつけられる前にキャッチする。

 すでに意識はないけれど息があるから大丈夫でしょ。

 その様子を見ていた盗賊たちが何かを言っている。


「な、何が起きたんだ?」

「……いや、早過ぎて見えなかった」


 混乱して動く気配のない盗賊の元へ移動して腕をしっかり掴む。

 そして別の盗賊へ向けて投げ飛ばすと2人が一気にダウンした。


 残りの盗賊へ目を向けるとすでに戦う気力もないらしい。

 私が近づくと一目散に逃げ出してしまう。


「私から逃げられると――」



『オオォォォーーッ!』



 暗い森の中に突然、何者かの咆哮(ほうこう)が聞こえる。

 馬車の側で待機しているラウルさんの方を振り向くと違う方を見ていた。


「ラウルさん、さっきの声って何ですか?」

「あ、あれは――」


最後までお読みいただきありがとうございます。

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