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第11話 ユーウィンの冒険者ギルド

新しい冒険者ギルドに到着するとつい絡まれる話を書いてしまいます。


「だいぶ形になってきましたね」


 あれからメイテさんのパン作りを指導中。

 なぜか一緒にいたテオだけでなくオーウェンさんまで生徒になっている。


 その間にパン窯を見せてもらったけれど大量に作るには小さいかもしれないので大きいパン窯を作って取り替えておいた。

 すべてお任せしますって言われてるしね。


「うん、こんなものかな?」


 私の魔法はパンだけでなくパンにかかわる物なら何でも作れるっぽいから便利なのだ。


「使い方はさっき教えた通りなので頑張って下さいね」


 焼き上がるまでの間、自分の用事を済ませるために出かける準備を始める。

 ユーウィンの街へ来たのはタルコットで退治したワイバーンの買い取りだったことを少し忘れてたんだよね。


「それじゃ行って来ますねー」




 ☆☆☆




 ユーウィンの街はタルコットと違ってかなり大きい。

 メイテさんに冒険者ギルドの場所を聞いてなかったら迷子になるところだよ。


「ここがユーウィンの冒険者ギルドね」


 建物の雰囲気はタルコットと似てるけど冒険者の数は圧倒的にユーウィンの方が多い。

 舐められないよう気合を入れて建物へ入ると真っすぐに受付カウンターへ向かう。


「こんにちは、素材の買い取りをお願いしたいんだけど?」

「はい、こんにちは。冒険者カードはお持ちでしょうか?」


 ギルドの女性職員に冒険者カードを見せる。


「はい、お名前はクリムさんですね。ランクは……Fランクの見習いですが合っていますか?」

「Fランクで合っています」


 私が冒険者カードを作った理由は身分証明とたまに森へ入って素材収集のためだけ。

 魔物を退治してお金を稼ぐ冒険者とは違ってパン屋の経営者なのだ。


「あ、でも失効期限が近づいてますよ?」

「えっ?」

「Fランクは見習い冒険者という扱いになるので上位ランクと違って有効期限があります。期限内に定められた依頼数をクリアしないと失格になりますからご注意くださいね」


 そう言えばそんな話を聞いたような気がする。

 基本的にタルコットの冒険者ギルドにはパンを配達しに行くだけだからすっかり忘れてた。


「あの、どうすればいいんでしょう?」

「手続きはこちらでも可能ですよ。クリムさんはユーウィンの冒険者ギルドでは初めてなので試験を受けていただきます。と言っても難しい物ではなく薬草10本と2種類以上の魔物の部位を4つ以上あれば大丈夫です」


 過去に倒した魔物の部位でも受け付けてくれるみたいでよかったよ。

 そうなると薬草10本を集めてくれば大丈夫かな。


「では手続きをしますので少しお待ちくださいね」


 受付カウンターに座りながら冒険者たちの話に耳を傾ける。


「おい、聞いたか? あの森の話?」

「ああ、確か増えすぎたゴブリン討伐の依頼を受けた奴が向かったらなぜか消えてたって話だろ?」

「ゴブリンの装備品なんかは一部残ってたみたいだが周辺の木々は薙ぎ倒されてたらしいぜ」

「他にも巨大な蟻(ジャイアントアント)の巣があった場所は大きな岩が落ちたみたいに大穴が開いてて全滅してたとか。あんなことができるのはCランクじゃ無理だって話だぞ」


 ヤバい。

 それ全部、私のことかも。

 まさかそんな噂が広まってるとは思わなかった。


「クリムさん、素材の買い取りをしますのでこちらへどうぞ」


 違う場所で出すんだと内心ホッとするけれど、受付カウンターから10歩程度移動しただけだった。


「あの、お姉さん。素材なんだけど量が多くて……できればもっと広い場所はないでしょうか?」

「ふふっ、心配しなくて大丈夫ですよ。見習いのみなさんは初めての買い取りで緊張しますけれどちゃんと私たちが対処しますから」


 そう言って笑顔を見せるお姉さん。

 どうなっても知らないよ?


「では、ゴブリン各種が60匹でジャイアントアントが100匹くらい。あとはキラーベア1頭とワイバーンが2匹です」


 騒がしかったギルド内が静かになる。


「あ、あのクリムさん? もう1度お願いしますか? ゴブリンが6匹――」

「違いますよ? ゴブリンは60匹でジャイアントアントが100匹。キラーベア1頭にワイバーン2匹です」

「……」


 ――バタン。


 あ、担当のお姉さんが後ろに倒れた。

 他の受付カウンターから違う女性職員さんが走って来て介抱してる。


「お客様、す、少しお待ち下さい! 誰かギルド長を呼んで!」


 だから言ったのに。


「お、おい、受付カウンターに座ってる女の子、何て言ってんだ?」

「いや、たぶん聞き間違いだと思うがゴブリン60匹とかキラーベアとか」

「他にもワイバーンって聞こえたけど違うよな?」


 ほら、ざわざわしてるし。


「おい、そこの女っ! 聞いてりゃ適当なこと言いやがって。ワイバーンなんて嘘だろう!?」


 こんな場所で嘘をついて私にどんなメリットがあるのよ。

 はぁと小さなため息を付きながら冒険者たちの方へ振り返る。


 そして<無限収納>からワイバーンの頭だけ引っ張り出してみんなに見せた。

 頭だけとは言え軽自動車くらいはあるので間近に見ればかなり怖い。



「「うわわぁぁーーっ!?」」



 私に絡んできた冒険者が叫び声をあげて思いっきりこけた。

 他の冒険者たちも何人か後退りをしている。

 これで少しは理解してもらえたかな。


「静かにしなさい!」


 1人の男性が女性職員と一緒にこちらへ歩いてくる。


「騒がしくて申し訳ありません。ユーウィンの冒険者ギルドでギルド長をしているクレマールといいます」


最後までお読みいただきありがとうございます。

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