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第7話 新米冒険者はスキルを確認する

「トリステン君とオルコットちゃんのスキルは、今日初めてクエストに出たとは思えないほど持ってたわ。使いづらいスキルもあったけど、重要なスキルも身についているわね。これまで誰かに習ったの?」


 スキルとは読んで字通り、技術のことである。

 基本的に誰かに習って習得して、鍛錬を積むことによって上級スキルとなる。

 ただし、先天的にスキルを習得していたり、自分で気が付くことによりスキルを習得することもある。

 そして、スキル屋はあくまでスキルの鑑定のみである。


「まず、トリステン君のスキルのうち、伸ばしたいのは『射撃』ね。弓矢なんかの飛び道具の命中率が上がるスキルよ。あと、これは性格からなのか、オルコットちゃんのおかげなのかわからないけど、『かばう』ね。誰かを守ろうとした場合、能力が上がるのよ」


 エルシーはその二つのスキルの効果を発揮したところを見ていた。あのポイズンウルフの群れが襲ってきたときに、ろくに練習していなかったボウガンで、しっかりと一頭仕留めてる。あの時、トリステンはふたりを守ろうとして『かばう』が発動したのだろう。


「あと、びっくりするのが『加護』が付いてるのよ。これは二人ともなの。全体的に能力が上がるスキルなんだけど、普通、神官の魔法とかで一時的に『加護』をつけるか、武器や防具、魔具なんかで常時つくスキルなんだけど、そういったものがなく、ついてるのよね。スキル屋さんも驚いてたわよ。おそらく先天的スキルだと思うのだけど、私は勇者以外で『加護』の先天的スキル持ってる人初めて見たわ」

「すごいじゃない! ふたりとも! もしかしてふたりは未来の勇者になれるかもしれないってこと!?」


 エルシーは喜び勇んで、ふたりを抱きしめる。


「エル姉さん、蝶子さんの話終わってない! 暑苦しいから離れて! 特にお兄ちゃんから!」


 オルコットに叱られて、やむなく離れるエルシーは、おとなしく蝶子の話の続きを待つ。


「オルコットちゃんのスキルで使えそうなのは『魔力増加』と『魔法範囲増加』ね。魔法使いとしてはこれ以上ないスキルよ。これに『魔法威力増加』のスキルが付けば理想的ね。あとなぜか変わったスキルで『調味料鑑定』なんていうのが付いてるわよ。もしかして料理上手なのと関係あるのかもしれないわね」

「そのことなんですが、魔法範囲増加はもしかしたら最近、身に着いたんじゃないかと思うんです。あのウルフにライトを放った時に思ったのです。村で使ってた時はあんなに大きい光の玉じゃなかったんです。あの時はとっさだったんで、あんなに大きくなったのかと思ったんですけど、スキルのおかげなんだって気が付いたんです」

「そうかもね。ちょっとしたきっかけでスキルが身に着くこともあるしね。でも、スキルの大事なところは、身に着けることよりもそれを鍛錬して、使いこなし、出来れば上級スキルにすることよ。身に着いたきっかけはあまり気にする必要はないわよ」

「ところで、蝶子さんのスキルってどういったものがあるんですか?」


 トリステンは、これから学ぶ先生のことをよく知っておこうと、質問する。


「いくつかあるし、すべてをあなた方に言うつもりはないけど、私のスキルで最重要なのは二つ、『神速』と『急所攻撃』よ。素早く動く『瞬足』の二つ上の上級スキル、これと正確に急所を攻撃する『急所攻撃』。この二つのスキルを組み合わせて戦うのが、私の戦い方」

「俺にもそのスキルを教えてください!」

「いいけど、向き不向きがあるから、今あるスキルを伸ばすのも大事よ」

「わかりました。先生!」


 キラキラした目で先生と呼ばれると、おじさんコンプレックスの蝶子も悪い気がしない。


「ちなみにオルちゃんはどんな魔法使いになりたいの?」

「本当はお兄ちゃんと一緒に、バンバン戦える魔法使いになりたかったんだけど……」

「だけど?」


 いつもはっきり言うオルコットにしては、珍しく言いよどんでいると、トリステンが助け舟を出す。


「回復魔法を先に覚えたいんだって、今日のことで」


 エルシーと蝶子は今日の戦闘を思い出す。たしかに半端な攻撃魔法よりは、回復魔法をかけながら、徐々に撤退出来た方が確実性があったかもしれない。


「エル姉ちゃんの血だらけの姿を見て、何も出来なかった自分が嫌だったんだって、なあ、オル」

「そ、そんなこと言ってないよ、お兄ちゃん! そう! お兄ちゃんが怪我した時に、エル姉ちゃんじゃなくてあたしが助けたいだけ、本当にそれだけだから! エル姉ちゃんも蝶子さんも、いいから飲んで!」


 照れ隠しに酒を進めるオルコットの顔は、酔ってるんじゃないかと言うくらい真っ赤になっていた。

 照れる美少女。お酒が進むわ~。


「ところでお蝶ちゃん。勇者パーティは解散したって言っていたけど、オルコットちゃんの先生に彼を紹介出来ない?」

「彼って、もしかしてバードナのこと? あー、やめといた方が良いと思うよ。能力的には最高の賢者だけど、あの性格だからね」


 そう言って、オルコットを見てため息をつく。

 オルコットとしては、勇者パーティにいたような人に教えてもらえるのはありがたいが、自分のような小娘では、やはり相手にされないのだろうと理解する。


「そう? でも、会ったら話しをしておいてよ」

「いいけど話しが出来たらね」


 そう言って蝶子は明後日の方向を見て、生返事をする。


「ところで、エル姉ちゃんのスキルって何があるの?」


 トリステンの言葉に、エルシーと蝶子は顔を見合わせて笑う。


「トリ君、わたしはポーターよ。スキルなんてあるはずないじゃない」

「いやいや、エルシーなら、『ドジ』と『怪力』くらいあるかもよ。今度、スキル屋で調べて来なさいよ」

「嫌よ、お金がもったいない。わたしも女なんだから、『酒豪』とか『大食らい』とか出たら、ショック死するわよ」

「あんた、一応、自覚あったの? アハハハハ」


 結局、エルシーは自分のスキルを何一つ知らないのであった。

 もしもスキル屋で調べていれば、エルシー特有のユニークスキル『情けは人の為ならず』に気がついただろう。

 エルシーのドジを助けたり、許したりすることによって、能力やスキルが勝手に上がったり、付いたりする特殊スキル。

 トリステンとオルコットの『加護』を始め、スキルの付加や能力アップはエルシーと出会ってから、これまでの二人の優しさの結晶であった。


 こうして、ドジっ子ポーターエルシーと心優しい新米冒険者の真の冒険が始まるのであった。

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