表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

朝桜は

「おはよう。今日は何か予定でもある?」


記憶もない居候の分際で予定もなにもない。

そう思って首を横に振ると縁側に連れ出された。


「見て。桜がだいぶ咲いてきたんだ」

「ほんとだ!桜の花びらが朝露に濡れて、綺麗!」

「本当にね」


イケメンのお家には1本の桜が咲いている。1本だけど、存在感があって、満開じゃないのに美しい。


わたしがここで拾われた時はまだ蕾だったのに、もう綺麗に咲き始めてる。

彼と出会ってからまだ少ししか経っていないはずなのに、まるでずっと昔から一緒にいたことがあるみたいな気分になる。


「ねね、わたしたち、まだ出会ったばかりだけど、なんだかずっと一緒にいたことがあるみたいじゃない?」


なんて冗談めかして言ったら、途端に彼の瞳が濡れているように感じた。

どうしたんだろう。冗談でも嫌だったのかな。


「そんなことより、あなたは今日用事ないの?いつも忙しそうにしてたじゃん?」


わたしと彼の間に流れた、不思議な空気を変えるために、新たな話題をふる。

でも、これはずっと気になっていたことだ。


わたしはこの家でお世話になるようになってから何日か経つけど、彼の事を何も知らない。カヨさんは若旦那様と呼ぶから、名前も知らない。なぜだかわからないけど、自分から聞くのが憚られる。今までそんなことなかったのに。

それに、職業も知らない。でも、いつも和服を着ているから、華道とか茶道とか呉服屋さんなのかなって勝手に思ってる。家のつくりもすごく和風だし。



「今日も用事がある。ただ、朝桜が綺麗で、君にも見てもらいたかったから」

「そう。忙しいのにありがとう。桜、とても綺麗だった。もう少し咲いたら、お花見でもしたいね」

「そうだな」


彼はなんだかんだ言って優しいのだ。どうして見ず知らずのわたしに、こんなに親切にしてくれるか、いつも不思議でたまらない。


「いつもありがとう」

「急にどうしたんだ。何か変なことでも考えているのか?お願いだから、ここで大人しくしていてほしい」

「別に何かあったわけじゃないけど、ただお世話になりっぱなしだから、お礼を言っただけ。わたしはそんなお転婆じゃないし、きちんと大人しくしてるから、早く帰ってきてね」

「もちろんだ。行ってくる」

「行ってらっしゃい」


ここ数日で分かった事だが、彼はとても親切で過保護だ。

本当は外に遊びに行きたいけど、優しいから大人しく待っててあげる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ