蕾だけど
「若旦那様、お目覚めになられました」
若旦那様?変な呼び名!
やっと起きたのかと話しながら入ってきたのはイケメンだった。
「あなた誰?勝手に私の部屋に入らないでよ」
「ここはお前の部屋じゃない。私の屋敷の離れだ」
「じゃあここはどこなのよ!もうお父様もお母様も、叔父様も叔母様も私のために出すお金はないの。わかったら私を家に帰して!」
「これは心外だな。君が落ちていたから拾ってあげたのに」
こんなところ知らないし、落ちていた理由なんてわからないし、家には帰れないし。
お父様とお母様に会いたい。
そんなことを考えていたら悲しくなってきた。
「泣くなよ。ここがそんなに嫌なのか?」
「そうじゃないもん。お父様とお母様に会いたい」
そう言うとめんどくさそうな顔をするイケメン。イケメンはどんな顔をしてもイケメンだ。
「イケメンうざいーーー!」
イケメンってどういう意味なんだと呟くイケメンは本当に意味がわからないみたいで、イケメンに加えて天然なんてありえないなんて考えていたら涙が引いた。
すると突然イケメンが私との出会いを語り始めた。
イケメンが言うにはこうである。
♢♢♢
イケメンが今朝、散歩をしている最中に咲き掛けの桜の木の下に何かが落ちているのを見つけた。
顔は日本人のように見える。しかし、髪の色は灰桜のような色をしている。人間の髪にしてはいささか不自然だ。
しかも、今までに見たことがないような奇抜な格好をしている。まるで痴女のようだった、
♢♢♢
「そんな軽いノリで私を拾うなんて、私を猫だとでも思っているの!?」
「お前の言うことは時々理解不能だ」
あなたの言ってることも意味が分からない。
髪も染めただけだし、服装だって少し露出が多いだけで、痴女だなんて言われる筋合いはない!なんて失礼な人なのだ。拾ってくれたことには感謝するが。
ただ、なんというか、残念なイケメンだ。
「まぁいい。名は何と言う」
「私の名前は、」
思い出せない。私の大切な名前。どんなに考えても思い出せない。考えれば考えるほど、思い出そうとすればするほど、頭がずきずきして。私は意識を失った。