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第90話「大切な物に手を出した報い」

前に一日二話以上登校する時は予め前書きに書いてほしいと要望があったので、書きます(/・ω・)/

この話は本日二話目です!

「いやぁあああああ! やめてぇええええええ!」

 ――服を切られながら泣き叫ぶ桜ちゃんを見た瞬間、俺の中で何かが壊れた。


 俺は、日が落ちかけて段々と薄暗くなっている足元に気を付けながら坂を駆け下っていき、桐山の刃物を持つ腕を掴んだ。


「何してんの、お前ら?」

「は、神崎? どうしてお前がここに――っ! ~~~~~~~~~~~!」

 

 俺は桐山が喋ってる途中で、桐山の股間を思いっきり蹴り上げた。

 そのせいで、桐山は声にならない叫びをあげながらのたうち回る。


「「キリちゃん!?」」

 突然の出来事に、取り巻きの二人は驚いた顔で桐山の方を見ている。


 俺はその隙に――桜ちゃんを拘束している方の男のあごに裏拳をくらわせて、軽い脳震盪のうしんとうを起こさせる。

 相手に気付かれると脳震盪を起こさせるのは難しいが、意識が桐山に向いてる今の状態なら、脳震盪を起こさせるのは簡単だった。


「ぐふぅ――!」

 俺に顎を思いっ切り殴られた男は、桜ちゃんの体から手を離し、足取りが定まらずに倒れた。


「て、てめぇ!」

 スマホで桜ちゃんが暴行を受ける姿を撮っていた男は、自分の仲間が二人もやられた事に怒りを見せる。


 俺はそんな男に対して後ろポケットに手を突っ込み――凛から渡されていたスタンガンではなく、財布を男の顔に向けて投げた。

 スタンガンを投げなかったのは、相手にミスミス武器を渡す訳にはいかないためだ。


 急に自分の顔面目掛けて物が飛んできた事で、男は顔面を両腕でガードした。

 俺はその隙をついて、その男の鳩尾みぞおちに本気で右拳を打ち込む。


「がはっ――!」

 俺に鳩尾を殴られた男は腹を抑えて悶え始める。

 だが、俺が撃ち込んだ拳は浅かった。


 だから、すぐに俺は凛から渡されていたスタンガンを取り出し、男に当てた。

「ぎゃあああああああああああ!」

 スタンガンをくらった男は、叫び声をあげながら気絶した。


 俺はすぐにもう一人の脳震盪を起こしている男にも、同じくスタンガンを使った。

 この男もいつ回復するかわからないから、確実に意識を奪う為だ。

 脳震盪を起こしていた男も、先程気絶させた男と同じように叫び声をあげながら意識を失った。


 俺が奇襲を仕掛けてたたみかけたのは、相手に反撃のチャンスを与えないためだ。

 人数や腕力で俺はこいつらに劣る。

 一瞬でも相手に立て直す隙を与えれば、たちまち立場が入れ替わっていただろう。

 だから俺は、最初に仕掛けた奇襲によって優勢になり、そのままたたみ込むことによって、優勢を維持したというわけだ。


「お兄ちゃん後ろ!」

「死ね神崎ぃいいいいいいいいいいいい!」

 桜ちゃんの声に反応して後ろを見ると、桐山がナイフを片手に俺に向けて走ってきた。


 俺はそんな桐山に対して――スマホを取り出し、ライトを桐山の目へと向けた。

「め、目がぁああああああああ!」

 もうあたりが暗くなっているため、急に光を目に向けられた桐山は一時的に視力を失ってしまい、両目を手で抑えた。


 俺はそんな桐山に対して、さっきの男と同じように鳩尾を狙った。

 ただし、今回は握りこぶしではなく、膝でだ。


「がっ――!」

 

 鳩尾を俺にやられた桐山は、地面に崩れ落ちた。

 ここで桐山にスタンガンを使えば、全て終わる。


 だけど俺は――桐山にはスタンガンを使わなかった。

 

 その代わり、腹を本気で蹴る。

 本当は顔面を蹴り飛ばしてやりたかったが、そんな事をしてこいつの意識を奪う訳にはいかない。

 俺の一番大切な物に手を出したんだ。

 死んだほうがマシと思えるようにしてやる。


 それから俺は、腕や足――腰など、決して意識を失う事にならない場所を狙い、本気で蹴り続けた。

 その度に桐山は悶え続けるが、俺としては知った事じゃあない。


「お、お兄ちゃん、もう止めて! それ以上やったらその人が死んじゃう!」

 俺が桐山を蹴り続けていると、桜ちゃんが泣きながら悲壮な声をあげた。


 何故桜ちゃんは泣いているのだろうか?

 こんな男がどうなろうと、かまわないだろうに。


 あぁそうか――桐山にされた事が辛くて泣いてたんだっけ? 

 やっぱり、こいつは許せないな。


「だめ、もうやめて……。その人を殺しちゃうと、お兄ちゃんが人殺しになっちゃう」

 桜ちゃんは俺の体を後ろから抱きしめてくると、そんな事を言ってきた。 

 俺はそんな桜ちゃんに笑顔を向ける。


「大丈夫だよ桜ちゃん」

「え……?」

「こいつらはクズだ。人間じゃぁない。だから、殺しても罪にならないんだ」

「お兄ちゃん……何を言ってるの……?」

 俺の言葉を聞いた桜ちゃんは、驚愕な表情をしていた。


 どうして彼女はこんな顔をしているのだろう?

 俺が言ってる事は何も間違ってないのに。 

 こんなクズ、人じゃあない。

 だから、たとえ死んだとしても構わないはずだ。


 俺はそう思うと、また桐山を蹴ろうとする。


 すると――

「か、かい君……?」  

 ――と、驚いた表情をしている咲姫が現れた。


 俺の後を追ってくる予定だったから、追いついてきたのだろう。


「お姉ちゃん、お兄ちゃんを止めて!」

 この場に現れた咲姫に対して、桜ちゃんがそう叫んだ。


「え、どういう事なの……? これは何……? なんでさっきから海君はその人を蹴り飛ばしてるの……?」

 咲姫は戸惑いを隠せない表情で、その場に座り込んでしまった。

 その表情は、まるで信じられない物でも見ているかのようだ。


「お姉ちゃん! お願いだから手伝って!」

 桜ちゃんはそんな咲姫に必死にお願いをしている。

 俺にはどうして桜ちゃんが咲姫にそんな事を言ってるのか理解できない。


「ち、違う……その人は海君じゃない……」

「お姉ちゃん……?」

「その人は海君じゃない! 優しい海君がこんな事する訳ないもん!」

 咲姫は俺の事を指さしながら、何故か俺が神崎海斗じゃないと言い出した。

 一体咲姫は何を言っているのだろうか。


 まぁ、いい。

 今はそれよりも桐山の事が先だ。


 俺は咲姫の事を意識から切り離し、桐山へと向けて右足を振り上げるのだった――。





「あ、あの馬鹿……! なんで一人だけで先に行ってるのよ!」

 パトカーを下りて山の中に入ってすぐ、桃井は一人で先に行ってしまった。


 桃井の速度について行けたのが、カミラと警察官の人だけだったからトロく感じたのかもしれないけど、夜の山道を一人で行くなんて何を考えてるのよ!


「もうすぐ……はぁ……はぁ……着く……」

「お姉さま、大丈夫ですか?」

「大丈……夫……」

 あまり走る事になれてないアリスは、警察官の人に支えてもらいながら、なんとか山道を走っていた。

 その様子は見てて凄くしんどそう。

 

 それでもアリスは、走る足を止めようとしない。

 それだけ桜が――ううん、多分、海斗の事が心配なんだと思う。


 パトカーの中で聞いた話だけど、アリスも私と同じ様に凄く嫌な予感がしてるらしかったから。

 まぁ、それを聞いたせいで桃井が一人で突っ走っちゃったんだけど……。


 私達は山道を登るしんどさに耐えながら、海斗達の元に向かった。


「――何よこれ……?」

 月明かりに照らされた、あまりにも有り得ない光景を目にした私は、思わずそう呟いてしまった。


 まず、私達のすぐ近くに桃井が俯いた状態で座りこんでいた。

 そして、三人の男達が地面に伏せており――海斗が、血だらけで倒れている一人の男に対して右足を振り上げていたのだ。

 桜はそんな海斗を止めようとしているみたいで、泣きながら必死に抱き着いている。


「カイの心が壊れてる!? まずい!」

 私に遅れてここに登場したアリスが、今まで聞いたことも無いような声を出したと思ったら、海斗に向けて坂を駆け下り始めた。

 私も少し遅れはしたけど、アリスに続いて坂を駆け下りる。


 恐らくアリスがしようとしているのは、血だらけの男を蹴ろうとしている海斗を止めようとしてるんだ。

 あの血だらけの男は、もう遠目からわかるくらい瀕死状態なの。

 これ以上すれば、怪我で済まなくなる。


 だから私もアリスに続いて海斗の元へと駆けた。


 だけど――もう既に海斗は足を振り上げていたから、私達は間に合わない。

 でも、海斗の足がその血だらけの男に当たる事はなかった。


 海斗が振り下ろした足がその男に当たる前に、海斗に抱き着いていた桜が二人の間に割り込んだのだ。

 当然二人の間に割り込んだ桜は、海斗の右足を思いっきり喰らってしまう。


「きゃああああああ!」


 海斗の本気のケリを喰らった桜は、背が小さくて軽い体をしてるせいで吹き飛ばされてしまった。


「え……?」

 突然体を割り込ませ、そして海斗のケリによって吹き飛ばれた桜を見て、海斗は戸惑いの声を漏らす。


「桜!?」

「ちびっ子天使!?」

 私とアリスはそんな海斗よりも、吹き飛ばれた桜へと駆け寄った。


「桜大丈夫!?」

 私が桜に声を掛けると、桜は蹴られた所が痛いのを我慢して、私に頷いた。

 でも私が居る事に驚いていない事から、多分意識が朦朧もうろうとしていて、私の事を完全には認識できていない。


「ごめん、ちびっ子天使をお願い」

 一応桜が無事だという事を確認すると、アリスはそう言って海斗の元へと歩いて行く。


 遅れてカミラと白兎は、私と桜の方に来た。

「桜ちゃん大丈夫なのですか!?」

「なんで神崎君、こんな事を……」

 カミラと白兎も、今目の前で起きた事が信じられないという感じだった。

 

 正直この状態の桜が無事なのか私にはわからない。


「見せてください」 

 私が白兎達にどう返事したものかと迷っていると、警察官の人が桜に近寄って様子を確かめ始めた。


「……この様子なら大丈夫でしょう。すぐに意識もハッキリとするはずです」

「そうですか……」

 とりあえず私は、警察官の人の言う事に頷いた。

 本当に大丈夫なのかどうかはわからないけど、今はこの人の言葉を信じるしかないから。


 とりあえず桜は無事という事で、私は意識を桜から海斗達へと移す。

 そこには、混乱する海斗に対して、アリスが話しかけていた。


「俺、俺、なんてことを……!? 桜ちゃんを蹴り飛ばすなんて……! いや、それだけじゃない……どうして俺は、桐山にこんな事をしてたんだ……!?」

「カイ、とりあえず落ち着いて……。大丈夫、ちびっ子天使は無事だから……」

「でも、でも……俺は何でこんな事を……うわぁあああああああああああああ!」

「カイ……」


 海斗は凄く混乱しているみたいで、アリスの言葉を受け入れずに頭を抱えて叫び声をあげた。

 そんな海斗を見てアリスは悲しそうな表情をしたけど、アリスの視線が海斗の手にある物に向く。

 それはスタンガンらしき物だった。


「貸して」

 アリスは海斗の手からそれを奪うと――そのまま、海斗に使った。

 いきなりスタンガンを当てられた海斗は、悲鳴をあげながら気絶した。


「ア、アリス……?」

 私がアリスの突然の行動に戸惑っていると、アリスが海斗の体を優しく抱きしめながら私に話しかけてきた。


「今は気絶させておくしかない……」

「そっか……」

 私は桜の事を警察官の人に任せて、アリス達に近寄る。

 

「ちょっとカイの事をお願い」

「え? あ、ちょっと!」

 私が近寄るとすぐに、アリスが気絶している海斗を私に任せてきた。

 その海斗は、真夏も全力で走ったりしたからか、すごく汗をかいていた。


「何をする気なの?」

「ちびっ子天使の恰好を見るに、この男達は手馴れてる。多分、他にも手を出した事があるはず」

 アリスはそう言うと、男達のスマホを抜き取り、私の所に戻ってきた。

 そして前に海斗が作ったというスマホのロック解除用のアプリを使って、男達のスマホのロックを外していった。


 そのままアリスはフォルダを開くのだけど――そこには、色んな女の子達が惨めな姿にされている写真だったり、動画が入っていた。


「やっぱり……」

「何これ……こいつら最低すぎでしょ……」

 一体この男達は、どれだけの女の子の人生を奪ってきたのか……。


 でも、私はこいつらがした事を桃井にしようとしていたんだ。

 ……そう思うと、今まで以上に凄く心に来た。


「これをこうして――」

 自分の過ちを悔いる私の横で、アリスは三つのスマホを操作し始めた。


「何してるの?」

「この男達の個人情報を全てネットに流してるの。画像とか詳細は載せないけど、性犯罪を行っていたという事もね。カイの誕生日を滅茶苦茶にした事、その人生で償ってもらう」

 態々(わざわざ)顔を見なくてもわかる。


 今のアリスは、凄く怒っていた。

 そしてその気持ちは私も同じ。


 海斗の誕生日を滅茶苦茶にして桜に手をかけただけでなく、様々な女の子を不幸にしたこいつらは絶対許せない。

 だから、アリスがしている事を私は止めなかった。


 アリスは全ての個人情報をネットで公開すると、三つのスマホを警察官の人に渡した。


「これ、全部証拠ね。後、上には連絡しておくから、この男達は一生刑務所から出さないで」

「は、はい……。ですがあの……私の立場からしますと、そちらの少年も逮捕しないわけにはいかないのですが……」

 警察官の人は申し訳なさそうにしながらも、私が抱きしめている海斗を逮捕すると言い出した。


「大丈夫、それについても話をつけておくから。それにカイには、アリスが凄くキツメなおしおきをしとく」

「いや、ですが…………いえ、なんでもありません、わかりました!」

 まだ反論しようとする警察官の人に対してアリスが無言で見つめると、警察官の人が汗をダラダラとかきながら頷いた。

 

「それでいい」

 アリスはその警察官に頷くと、今度は桃井の方に歩み寄った。


 そして――思いっきり桃井の頬をビンタした。


「え……?」

 いきなりアリスに頬をぶたれた桃井は、戸惑った表情でアリスの顔を見上げる。


「どうして妹と一緒にカイをとめようとしなかったの?」

「あ……」


「カイが怖かったから?」

「違う……」


「じゃあ、なんで?」

「だって……あの人は海君じゃないもん……」


「どういう事?」

 桃井が海斗の事を海斗じゃないと否定した。

 その事に対してアリスは眉をひそめながら、桃井に問いただす。


「海君は凄く優しい人なの! あんな誰かに暴力を振り続けるのは海君じゃない!」


 この子は一体何を言ってるのだろう?

 確かに海斗は凄く優しいけど、実際に目の前で暴力を振るっていた。

 なのに桃井はまるでその事実から眼を背ける様に、その暴力を行ったのは海斗じゃないと言い出した。


「あきれた……。自分が言ってる意味をわかってるの?」

 アリスは心底呆れたという表情で、桃井の事を見据える。


「何が……?」

「今の君はカイの存在自体を否定した。君にカイの隣に立つ資格はない」

 アリスはそう言うと、きびすをかえして私達の方に歩いてきた。


「え……?」

 そんなアリスの事を、桃井は呆然と見ている。


「君の傍に居れば、カイの人生は終わる。だから、カイはもらっていく事にする。それにちびっ子天使も君の傍に居させると不幸になるから、こっちで預からせてもらう」

「ちょ、ちょっとまってよ! そんなのおかしい!」

「何処が?」

「何で二人を連れて行くのよ!?」


「君の主張では、この子はカイじゃないんでしょ? だったら、連れて行っても問題ない筈。それにその場に居た訳じゃないけど、これだけはわかる。君はちびっ子天使の助けを拒否したでしょ? そんな人間がどの面下げて、この子の姉を名乗るの?」


「あ……」

 アリスの言葉に心当たりがあったのか、桃井は俯いてしまった。


 普通なら、家族を連れ去ろうとしてるアリスの方が無茶苦茶だよね。

 でも、桃井はそれ以上否定する事が出来なかった。


「もう二度と、カイ達に関わらないで」

「そ、そんなの……そんなの嫌……」

 海斗達に関わるなと言われた桃井は、涙を流しながら首を横に振る。

 そんな桃井の事をアリスはいつもの無表情ではなく、凄く冷たい眼で見ながらこう言った。


「いつまでも逃げ続けるからこうなるの。これは君が選んだ道。恨むなら、弱い自分を恨んで」

 アリスのその言葉に、桃井は完全に泣き崩れてしまった。


 私は黙ってその光景を見続けていたけど、本当に桃井の心は凄く弱いんだと思った。


 桃井は海斗達を連れて行かれようとしているのに、最初に座り込んでいた場所から、まだ立ててすらいない。


 本当に海斗達を連れて行かれたくないのなら、アリスに喰ってかかるべきなのに、それも出来ていない。 

 ただ、その場で駄々をこねているだけ。

 

 それはまるで――お菓子を買ってもらえずに駄々をこねる、子供みたいだった。


「これ、あの別荘の鍵」

「え?」

 アリスは私に近寄ってきたと思ったら急に鍵を渡してきたから、私は訳が分からずアリスの事を見返す。


「後は君の役目。彼女が成長できるかどうか――それは君の頑張り次第」

「……嘘でしょ……? ここで丸投げ……?」

「これは君にとっても必要な事でしょ? ただ、ここで彼女が成長すると、凄く手ごわい子になる。償いの為にライバルを育てるのか、それともまた別の機会を待つのか――それは君の自由だけどね」

 つまりアリスは、心を折られた桃井に私が寄り添う事で、私達の仲が深まる様にしてくれたという訳ね。


 確かにここで彼女を立ち直せられたら、そうなるのかもしれない。

 だって今の彼女は、自分の大切にしてきた者を二つも奪われてたせいで、り所を求めてるもの。


 だけど、言葉で言うのは凄く簡単でも、実際に行うのはとても難しい。

 だって、海斗と桜が抜けた穴を私が埋めなきゃいけないという事だから。


 そしてそれをすれば、桃井はもう心が弱い桃井じゃなく、海斗と正面から向き合える子になる。

 それはつまり、私は自分の手で恋のライバルを育てるという事。


 ……とんでもない事を言ってきたわね、アリス……。

 

 だけど、ここで拒否するなんて選択、私には無かった。

 だって、私は桃井に償いたいんだもん。

 そしてここで桃井が成長して良い女になったとしても、私がその上をいけばいいというだけの話。


 だから、私はアリスに頷いた。


「じゃあ、この鍵を使って。桃井の子とここで二人暮らししてもらうから」

「……何で桃井も……?」

 てっきり桃井が岡山に居る間、私がこっちで暮らせるように鍵を渡してくれるのだと思っていたのに。


「だって、カイを連れて行くんだよ? 桃井の子をこのまま連れて帰れば、あの従妹が何をやらかすか……。本気で命の心配をしないといけなくなる。だから、はい」

 アリスはそう言うと、私の手に鍵を握らせてきた。


 ……私と桃井、岡山に居て無事でいられるの!?


 アリスの冗談に聞こえない発言により、私はそんな心配を抱える事になった。


 この後は警察の応援の人達が来て、桜に酷い事をした三人の男達を連行し――とはいっても、一人は病院に送られた。

 そして警察の人達が海斗と桜を抱えてくれて、そのままアリス達は帰って行った。


 私と桃井は山の中でアリス達と別れて、数人の警察の御供を連れてアリスの別荘へと帰るのだった――。

いつも読んでいただき、ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
ちょっと言葉になりませんね~ 海斗でなくとも自身が大切にしている人、モノ,ことを傷つけられれば自制しきれなくてプッツンしますよ。実際に何でと思うような事件多くないですか?誰にでも当てはまりそうですもん…
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