第81話「お店で騒ぐのは周りの迷惑」
『憑依彼女と死神と呼ばれた転生者(憑依彼女=ツキカノ)』を連載されております、真木悔人先生にレビューを頂きました(*´▽`*)
凄く素敵なレビューを書いて頂けましたので、皆さんも是非読みに行ってみて下さいヾ(≧▽≦)ノ
「うぅ……ここは……?」
「あ、目を覚まされたみたいですね」
眠りから目を覚ました俺が目を開けると、ミリス様の笑顔がそこにあった。
……それも、凄く近い距離に。
あれ……?
なんでミリス様がここに?
俺は夢を見ているのか?
……あれ、ミリス様ってオッドアイだっけ?
確か両目とも綺麗な青色をしていたはずだけど?
しかも何だか少し幼いし……。
それに何で俺、ミリス様に膝枕されてるわけ?
「お兄ちゃん、大丈夫?」
俺が今の状況を飲み込めないでいると、魔女みたいな帽子を被り、片目を眼帯で塞いだ可愛らしい女の子が俺の顔を覗きこんできた。
「みんみん!」
「え? え?」
みんみんを見た瞬間、俺はミリス様の膝から頭を上げ、みんみんの両手を自分の両手で握った。
みんみんは俺の好きなアニメキャラの中でもトップ3に入る子で、今会えたことに凄く感動している。
そして、やはりこうやって見ると凄く可愛い。
ただ、みんみんの身長が低い事は知っていたが、まさかここまで小さいとは……。
だが――それが逆に可愛い。
俺にいきなり手を握られたみんみんは驚いた表情をしていた。
こういう時の女の子キャラは頬を赤らめるのが一般だが、今のみんみんの頬は普通に肌色だった。
まぁ俺に手を握られた所で、みんみんが頬を赤らめるはずが無いか……。
「どうやら寝ぼけられているようですね……。起きてください!」
バシッ――!
「いった――!」
ミリス様がいきなり、俺の頭を後ろから叩いてきた。
「何するんですか!?」
俺がそう言いながら後ろを振り返ると――そこにはシスターみたいな帽子を脱いで、銀髪のウィッグを外した凛が居た。
「あ……」
笑顔を浮かべながら目だけが笑っていない凛を目の前にして、ミリス様とみんみんの正体に気付く。
……そういえば、ミリス様とみんみんのコスプレをした、凛や桜ちゃんと一緒に遊びに来てたんだった……。
うん、どうしようこの状況……。
俺が寝ぼけて桜ちゃんの手を握ってしまったせいで、凛の機嫌が凄く悪い。
そしてその片手には、先程俺を気絶させたスタンガンがあった。
……これ、下手な事を言ったらまた気絶させられるパターンだよな?
「お兄様、弁解をお聞きしましょうか?」
「えと、何についてだろうか?」
俺は冷や汗を掻きながら、凛に尋ね返す。
弁解って……要するに、俺が何か言ってもそれは言い訳と捉えられる訳か。
しかし、弁解って言われても、みんみんと間違えて桜ちゃんの手を握ってしまったって言えばいいのだろうか?
……余計、怒られそうな気がするな……。
「寝ぼけられていたのは仕方ありません! ですが――ミリス様より、みんみんを取るとはどういう事ですか!?」
どうやら凛は俺が桜ちゃんの手を握った事を怒ってるのではなく、凛の推しキャラがミリス様だったみたいで、そのミリス様を押し退けてみんみんの手を取った事に怒っているみたいだった。
確かにミリス様も凄く可愛いから大好きだけど、みんみんの方が好きなのだから仕方がない。
これだけはいくら凛であろうと、譲るわけにはいかないのだ。
「桜ちゃん、ちょっと」
俺は桜ちゃんに声を掛けて、手招きをする。
桜ちゃんは不思議そうにしながらも、テクテクと俺に近寄ってきてくれた。
俺はそんな桜ちゃんの両肩を掴んで、凛に見せつけるように俺の前に立たせる。
「よく見てみろよ、凛! このあどけない表情に、可愛いらしい幼気な顔を! しかもみんみんはロリっ子なのに母性キャラという、男心をくすぐる様なキャラなんだぞ!?」
「いえ、その表情も可愛らしいお顔も桜さんの物ですよね? みんみん全く関係ないですよね? それにみんみんって所構わず特殊魔法を打ちたがる事から、街の人達から『頭のおかしな子』という別称で呼ばれてますよね? それに比べてミリス様は、『このすご!』の世界のキャラ達から信仰されている女神様なんですよ!? しかも凄く優しいだけでなく、お茶目っ気もあって可愛い女神様じゃないですか!」
俺達は自分の一番の推しキャラの良い所を言い合うと、『むむむ……』と顔を寄せ合う。
推しキャラ談義はオタクの性なのだ。
そんな俺達に挟まれて、桜ちゃんは顔を赤くしていた。
何故顔を赤くしてるのだろうか?
「あ、あの、お客様……? もう少しお静かにお願いいたします……」
気まずそうな表情をした店員さんが、俺と凛――それに俺達に挟まれている桜ちゃんの事を見ながら、そう言ってきた。
あ、そういえばここって、お店……?
周りを見れば、お店に来て紅茶やコーヒー、それにケーキを楽しんでいたお客さん達が俺達の方を白い目で見ていた。
「「「す、すみませんすみません……」」」
俺達三人は、店員さんとお店に来ているお客さん達にペコペコと謝った。
凛は周りの人間を気にしない様に見えて、実際は自分のしている事を正しいと思って気にしていないだけで、自分が悪い事をしたらきちんと謝る事が出来る。
……何処かのポンコツ教師とは大違いだ。
その後、喫茶店に居続ける事が気まずくなった俺達は、元々予定していた映画館に向かった。
岡山県も最近では遊ぶとこが多くなったみたいだが、やはり俺や桜ちゃんが住んでる県に比べると不便だ。
なんせ、車が無いとロクに遊ぶところにいけないのだから。
俺達が住んでいるとこでは地下鉄や電車での移動が一般なんだが、岡山県では車移動が一般な為、娯楽施設に行くには車が必要な場所が多い。
まぁ公共のバスで遊びに行けたり、娯楽施設自体がバスを出してくれたりもしているから行けなくも無いが……車が無いと、不便なのには変わりない。
当然車の運転など出来るはずが無い俺達は、数年前に出来た西日本で一番大きなショッピングモールにある、映画館で映画を見る事にしたのだ。
このショッピングモールは岡山駅のすぐ近くにあるため、俺達が行く分にも困らないしな。
「どの映画を見ます、お兄様?」
「う~ん、そうだなぁ……」
俺は今どんな映画が上映されているのかを、モニターで確認する。
そしてその中に、一つ気になる映画を見つけた。
「あ――これ、もう映画化してたんだ……」
その映画は――俺や咲姫が好きなラノベを原作としたアニメが、映画化した物だった。
そういえばここ最近ずっと忙しかったから、新作のアニメやエロゲーもチェック出来ていなかったな……。
だからこの作品が映画化する事は知っていたけど、いつするのか時期を知らなかったのだ。
「これを見たいの、お兄ちゃん?」
俺が呟いた言葉に桜ちゃんが敏感に反応した。
「あ、いや……これはいいや。それよりも、桜ちゃんはどれが見たい?」
この映画は原作を知らないとわからないだろうし、咲姫もこの映画を見たいだろうから、明日咲姫と一緒に見たかった。
「うぅん……じゃあ、これがいいかな」
桜ちゃんは俺の顔をジーっと見た後、笑顔で恋愛映画を指さした。
後は凛なのだが――俺が咲姫と見たいと思った映画化している原作を知らないのか、凛も桜ちゃんに同意した。
そして俺達は恋愛映画を見るのだが――上映中ずっと、右手は桜ちゃん、左手は凛にホールドされたまま映画を見るのだった――。