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第76話「尊過ぎる妹」

「………………何してんの?」

 布団で眠っていた俺は、起きて最初の一言にそんな疑問を口にする。


「おはようございます、お兄様」

 俺の疑問に対して、凛は可愛らしい笑顔と弾んだ声でそう返してきた。

 だから、俺はもう一度疑問を口にする。


「いや、何してんの?」

「看病です」

 凛はまた弾んだ声でそう返してくる。


「そうか……これは看病なのか……」

「はい、看病です」


「「……」」 


 俺の疑問に対して看病だって言い切る凛と、二人で黙ったまま見つめ合う。

 そして、俺は頭を抱えた。


「お前……看病で添い寝する奴が何処に居るんだよ……」

 そう――何故俺が目を覚めた時にあんな疑問を口にしたのかと言うと、布団で寝ていた俺にくっついて、凛が添い寝をしていたのだ。

 あまりのドッキリに俺は一瞬頭の中が空っぽになったくらいだ。

 

「美少女に添い寝してもらうのがお兄様の夢だと思いまして」

 凛は相変わらずの笑顔で俺にそう言ってくる。


 いや、確かに俺は美少女に添い寝をしてもらいたいと思ってるし、凛は紛れもなく美少女だが――自分で美少女だという奴が何処に居るんだ?


 ……いや、思い返してみれば、結構言いそうな奴に覚えがあるな……。

 でも、凛にはそんなキャラにはなってほしくなかった……。


「と言うか、咲姫や桜ちゃんはどうしたんだ?」

 なんだかここ最近のあの二人を見るに、咲姫は凛が俺に添い寝する事を許しそうにないし、桜ちゃんは心配して俺の傍に居そうなんだけど、二人の姿が見えない。


 咲姫はともかく、桜ちゃんが居ないのは何気なにげにショックだった。

 俺はあまり心配されてなかったのだろうか?


 いや、心配して欲しいとか、そんな気持ち悪い事は言わないけどなぁ……。


「お兄様に毒を盛った人は知りませんが、桜さんなら今お着替えに行かれております」

「着替えに……?」

 てか、毒を盛った人って……。

 ま、まぁ……突然意識がなくなるほどの効果はもたらしていたけど、流石に毒は可哀想だろ。

 ……色も毒みたいに紫だったけども……!


 ……あれ?

 今、桜ちゃんの事を『桜さん』って呼んだ?

 確か俺が起きてた時には『ちびっ子』って呼んでたような……?

 いつの間にか仲良くなったのだろうか?


「はい、そろそろお兄様が起きる頃だと思いまして、桜さんには私の用意した服に着替えてもらいに行ってもらいました。その間、私はお兄様と添い寝をして、お兄様が目を覚ますのを待っていたわけです」


「……本当に、俺が目を覚ますのがわかってたの……?」


「もちろんです! 妹はお兄様の事ならなんでもわかるのです! 言わば当然の事です!」

「いや当然って、それで本当に当たってるのが怖いんだけど!? それにお前は妹じゃなくて従妹だろ!」


 こいつ昔からそうだけど、超能力でも持ってるんじゃないだろうな!? 

 俺が遊んでた子の名前を言わなくても誰と遊んでたか知ってたし、俺の趣味も把握してたり、エロゲーの事を話してないのにやってる事を知ってるし!


 ……起きるタイミングは適当に言ってるだけだとしても、エロゲーとかの事を知ってるって事は、盗撮されてるんじゃないだろうな?

 まぁ凛が家に入ったのは数年前だから、電池の関係とかでないとは思うけど――こいつの場合、何しでかすかわからないから、俺が知らないうちにって事も考えられなくはない。

 

 家に帰ったら、部屋をきちんと調べよ……。


「――り、凛ちゃぁん……。いくらなんでもこれはないよぉ……」

 俺と凛が話しをしていると、桜ちゃんがなんだか泣きそうな声を出していた。

 一体どうしたのだろうか?


「大丈夫です、桜さん! きっとお似合いになってるはずです!」

「こ、これでお似合いって言われても……嬉しくないよぉ……」

 そんな泣きそうな声で現れたのは――幼稚園児の恰好をした、桜ちゃんだった……!


「――っ!」

 俺はそんな桜ちゃんを見て、言葉が出ずに固まってしまう。


 今の桜ちゃんは、幼稚園児の恰好をしているからか、恥ずかしそうに涙目になっている。

 そして、背が小さいのと幼い顔付きをしているから、幼稚園児の恰好が凄く似合っているのに、アンバランスに育ってしまった大きい胸のせいで、なんだか背徳感すら感じてしまう。


 凛の奴……なんて良い仕事をするんだ……!


「あ、本当に起きたんだ、お兄ちゃん――って見ちゃあだめぇ!」

 桜ちゃんはそう叫ぶと、恥ずかしそうにふすまの裏に隠れてしまう。

 そして、チラチラと襖から顔を覗かせながら、俺達の方を伺う。


 ど、どうしよう……いつも天使くらい可愛いのに、今の桜ちゃんはさらに数倍可愛い……!


「どうですお兄様! 私の見立ては完璧だったでしょ!?」

 俺の隣に居る凛は、まるで『褒めて褒めて』といった感じで、俺の顔を見る。

「よくやった凛! 流石俺の従妹だ!」

 テンションが上がってしまった俺は、大きな声で凛の事を褒める。


 そんな俺達のやり取りを、桜ちゃんは恥ずかしそうにしながらジーっと見ていた。


「桜……こんなに幼くないもん……!」

 いや、どうやら少し拗ねてるみたいで、いつものニコニコ笑顔じゃなく、頬を風船の様に膨らませていた。

 ただ、その姿は全然怖くなくて、余計に幼さが増してるせいで滅茶苦茶可愛い。


「桜さん、そのコスプレが似合うのは凄く良い才能です!」

「全然嬉しくないよぉ……!」

 桜の事を目をキラキラさせながら見ている凛に対して、桜ちゃんは余計に涙目になる。


 やばい、もう桜ちゃんとうと過ぎて、俺どうにかなっちゃいそう……。

 

 でも、一つだけ気になる事があった。

「なぁ凛、お前が桜ちゃんにコスプレの衣装まで貸すなんて、いつの間にそんなに仲良くなったんだ? お前にとって桜ちゃんは目障りだと思ってたんだが?」

 俺が凛にそう尋ねると、凛は俺の目を真っ直ぐと見て口を開いた。


「どうやら、お兄様は何か勘違いをされているみたいですね」

「勘違い?」

「はい。お兄様は多分、お兄様の周りに居る女性全てを私が嫌っていると思っていますよね?」


「……違うのか? だって、昔は俺が遊ぶ女の子全員を陰で追い払ってたじゃないか」

「あれは、お兄様の見た目に寄ってきた最低な人間ばかりだったからです。至高の存在であるお兄様にあのような方々が近寄って、穢されてしまったらかないません! ですから追い払っていたのです!」

 凛は力強く、そう説明してきた。

 俺はそんな凛の事をジーっと見た後――

「で、本音は?」

 ――と、聞いてみた。


「お兄様に近寄る女など、全員地獄に落ちろ――です!」

 さっきまで力説をしていたのがなんだったのかと聞きたくなるくらい、凛はあっさりと手の平返しをした。


 うん、そうだよな……。

 こいつはこういう奴だもん……。


「でも、桜ちゃんは良いのか?」

 凛の本音を聞いたところで、俺は初めの質問に戻る。


 凛は今も尚襖の裏に隠れて俺達をチラチラと見ている桜ちゃんの方を一瞬見ると、俺にだけ聞こえるように小さい声でつぶやいた。


「あの方は――不思議なのです。お兄様に近寄る邪魔な女のはずなのに、何故だか嫌いになれません。いえ、それどころか好意的にすら見えます」

 凛は首を傾げながら、そう答えた。


 さ、流石桜ちゃん……。

 うちの天使は、俺以外虫くらいにしか見ていないこのヤンデレ従妹にまで好かれるのか……。


「まぁ桜ちゃんは見てるだけで癒されるし、可愛い子だもんなぁ……」

 俺が桜ちゃんに対して思っている事を凛に言うと、凛は首を横に振った。


「いえ、確かにそれもあるかもしれませんが――あの方は、お兄様に近い感じがするのです」

「俺に近い? 桜ちゃんがか?」

「はい」

「……いや、寧ろ正反対だろ?」

 

 まず、見た目は言わずもがな――性格だって似ていない。

 勉強だって数学しか出来ない俺に対して、桜ちゃんはうちのマンモス校で学年三位に入るほど勉強が出来る。

 それに俺は運動は得意な方だけど、多分桜ちゃんは運動が苦手だろうし……。


 あ、いや、逃げ足は凄い速いらしいから、実は得意なのか?

 咲姫だって運動が出来るくらいだし。


 でも……似てると言っても、他に思い浮かぶ点がないよな?


「流石にお兄様の様な至高な存在とは言いませんが、あの方は私達と違う物を見ている――そんな感じがします」

「……」

 俺は思わず、凛の言葉に黙り込む。


「まぁ、あくまで私の女としての勘でしかありませんが、お兄様が寝ている間に彼女と話した際に、私の考えが読まれてるのではないかと思いました」

「そうか……」


 俺は凛の言葉に神妙に頷くが――心の中で、こう思うのだった。


『凛、お前――中二病、こじらせすぎだろ……』と――。


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― 新着の感想 ―
いくら童顔ちびっ子とはいえ、いくらなんでも幼稚園児のコスプレが似合う!?なんて『神』降臨!そんな子いるなら死ぬまでに一目拝んでみたいわ~
今までのこと考えればもうちょっとわかるだろ主人公さんよ、、、、
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