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第75話「従妹の闇」

作品は違いますが、『貧乏学生の相手は大手企業!』の番外編を短編小説として書きました!


でも、その作品を読まれていない方にも出来るだけ話が分かる様に書いております。

その為前作を読んで居なくても、楽しんでもらえるのではないかと思います。


今回はバレンタインデーを主体にしているので、主人公とヒロイン達が織り成す物語になりますので、是非とも読んでみてください(/・ω・)/

「お兄様……」

 お姉ちゃんの料理を食べて寝込んでしまったお兄ちゃんの看病をしている凛ちゃんは、心配そうにお兄ちゃんの寝顔を見てる。

 桜はお兄ちゃんの顔じゃなくて、凛ちゃんの顔をジーっと見てた。

 その凛ちゃんの顔に見える色は、優しさや愛情――慈しみの色だった。

 本当にお兄ちゃんの事が好きで、一緒に居られることを幸せに感じているのと、倒れてしまったお兄ちゃんの事を心配してるんだと思う。


 でも――そんな凛ちゃんが全身に纏うモヤモヤの色は、黒色だった。

 お兄ちゃんやお姉ちゃんが纏う白色とは違って、黒色は悪い人を表すの。


 だから、凛ちゃんは悪い人。

 でも、今日ここに来た時の凛ちゃんに見える感情からは、どうにも悪い人には見えないの。


 桜やお姉ちゃんを見る時の感情は酷いけど、それは嫉妬の心だった。

 それは桜も持つ感情だったから、程度の違いはあってもそれだけでは悪い人には思えないの。


 それに昨日もお料理バトルで凛ちゃんが先に負けを認めた時、凛ちゃんは嘘をついてなかった。

 本当に心から自分の失敗を認めてて、桜に勝ちを譲ってくれようとしてたの。

 だから桜も引き分けにしてって言ったの。


 凛ちゃんが悪い人に見えなかったから、お兄ちゃんをとっちゃうのは可哀想って思ったのと、もし凛ちゃんが悪い人だったとしても、もしかしたら凛ちゃんが心変わりをして良い人判定に変わるかもしれないと思ったから。


 でも――凛ちゃんは素直に桜の言った事を認めてくれたのに、判定は悪い人のままだった。

 

 お兄ちゃんは仕草に見せないだけで、心では凛ちゃんの事を怖がってるけど、大切と思ってるのも桜にはわかる。

 だからお兄ちゃんが大切に思ってる子が、悪い子だとは思えないの。


 それに桜の従妹でもあるから、桜的には仲良くなりたいとも思う。

 その為にも、悪い人判定がどうして出てるのか知りたいと思った。


 幸い凛ちゃんは桜と同じ様にコスプレが好きみたいだから、お話する内容もあるの。

 頑張って凛ちゃんと仲良くなりたいと思った。


「今日のコスプレも可愛いね」

 お兄ちゃんのひたいにあるタオルを新しく濡らして絞ったタオルに変えてる凛ちゃんに、桜はそう話しかけてみる。

 凛ちゃんは一瞬だけ桜の方を見て、また作業に戻る。

 でも、ちゃんと桜の言葉に返事をしてくれたの。


「お兄様に見て頂く機会は滅多にありませんからね。ですからわたくしの自信があるコスプレ衣装を着ているため、可愛く見えるのは当たり前です」

 さも当然と言った感じで凛ちゃんはそう返してきた。

 凛ちゃんの言う通り、今のコスプレ衣装は凛ちゃんに良く似合ってて、凄く可愛いの。


 今日凛ちゃんがしているコスプレは、お兄ちゃんが持ってた漫画に出てくる、魔女って敵と戦う魔法少女の『あんこ』ってキャラのコスプレだった。

 あんこちゃんは赤髪のポニーテールだけど、凛ちゃんは髪がピンク色だから、ピンク髪のポニーテールにしてた。

 そして、衣装もあんこちゃんと同じ赤い色の服を着てて、空けている胸元にはルビーに似たガラス物のアクセサリがついてる。


 凛ちゃんは胸も大きいから、『胸元を開けるのは恥ずかしくないのかな?』って思ったけど、恥ずかしそうな感情は浮かべてないの。

 むしろ、お兄ちゃんには見て欲しいみたいで、お兄ちゃんが目を覚まさないのを残念そうにしてる。

 

「桜もね、コスプレ衣装を作って着てるの!」

「へ、へぇ……そうですか……」

 桜もコスプレしてる事を言うと、凛ちゃんは素っ気なさそうな態度で流しちゃった。


 でもそれは、興味無い様に振る舞ってるだけみたいで、凄く興味を持ってくれたってのが桜にはわかる。


「例えばね――これとか!」

 桜はこの前出来たばかりの、自分で作ったコスプレ衣装の画像をスマホで見せる。

 それは今度着る予定の、お兄ちゃんが大好きな猫さんキャラのコスプレ衣装だった。

 凛ちゃんは桜のスマホの画面を見て、目を輝かせる。


「凄いですね……これを手作りで作られたのですか?」

「うん! 頑張って作ったんだよ!」

「……ちなみに、他にも作ったコスプレ衣装の画像はあるのですか?」 

 桜が思った通り、凛ちゃんはコスプレ衣装の話題にくいついてくれた。


「桜はコスプレ衣装を作り出したばかりだから、あと一つしか作ってないけど――あ、これだよ!」

 桜はそう言って、この前お兄ちゃんと遊んでもらった時に写真を撮ってもらった、『竜王のショウギ!』のまなちゃんのコスプレをしてる桜の画像を見せる。

 すると凛ちゃんは、両手を頬に当ててまた目を輝かせたの。

「凄い……本当にまなちゃんですね……!」


 凛ちゃんもまなちゃんの事は知ってたみたい。

 凛ちゃんは食い入るように凄く画像を見てた。


「お兄様に近寄る事は納得できませんが――あなたは、他の人間とは違って見込みが有りそうですね。実は、前に自分では着れない事をわかっていながらも、作ってみたコスプレがあるのです。胸元の調整は必要でしょうが、お兄様が快復されましたら、着てみませんか?」

「え、いいの?」

「はい、わたくしが見てみたいので、良いですよ」

 そう言うと、ここに来て初めて凛ちゃんが桜に対してニコッと笑ってくれた。


「あ……うん!」

 桜はその事が嬉しくて、笑顔を凛ちゃんに返した。


 でも――凛ちゃんが纏うモヤモヤは、黒いまま……。

 なんでぇ……?


かい君はどう……?」

 桜達が話してると、お姉ちゃんが恐る恐ると言った感じでお部屋に入ってきた。


 すると、凛ちゃんの表情が変わる。

「お兄様に毒料理を食べさせておいて、よくお兄様に近寄る事が出来ますね? 看病の邪魔ですから、どっかに行ってくれませんか?」

 凛ちゃんはそう言うと、お姉ちゃんの事をまるでゴミでも見るかのような目で見る。


 そしてその表情は――『死ねばいいのに』ってみたいな事を思ってる。

 凄く……怖いって思った。


 冗談じゃなく、本当にそんな風に思ってる。

 流石にお姉ちゃんに何かしようと思ってるわけではないみたいだけど、冗談で思ってるわけでもない。

 本気でお姉ちゃんに『死んでほしい』と思ってる……。


「り、凛ちゃん……?」

 凛ちゃんの表情は怖いと思ったけど、お姉ちゃんにこんな感情を向けてほしくなかった桜は、凛ちゃんの服の袖をクイクイっと引っ張って、桜の方に意識を向けてもらう。


「この人は本当にあなたの姉ですか? あなたは料理も凄く上手でしたし、何よりお兄様の好みをしっかり抑えられていました。それに私の事を見た目で判断せず、話しもわかる御方です。しかし――この姉の方は、他の人間と一緒で人を見た目で判断する、最低の人間です。いえ、それどころか、お兄様に毒まで盛りました。正直言って、生きてる価値が無いでしょう」

 お姉ちゃんが凛ちゃんの見た目に対して何か言った記憶は無いけど、お姉ちゃんの表情からしてそう思ったのかもしれない。


 確かに、お姉ちゃんは結構見た目で人を判断する。

 だから、最初はお兄ちゃんの事も嫌ってた。


 でも――それは、ほとんどの人がそうだと思う。

 だって普通の人は見た目にきちんと気を使い、見た目がおかしいって事は、きちんと自分の事すら出来ない人間なんだって判断する人が多いから。


 桜は見た目以前に人の心が見えるから、見た目なんかで判断しないけど――あ、違う。

 さっき凛ちゃんは『他の人間と同じ』って言ってた。  

 だから、凛ちゃんはお兄ちゃん以外の人が嫌いなんだ。


 もしかして――そこに、凛ちゃんが悪い人判定になるヒントがあるのかな……?


「何もそこまで言う必要はないでしょ!」

 お兄ちゃんに毒――じゃなくて、失敗した料理を食べさせてしまった負い目から、昨日からずっと黙って文句を言われ続けていたお姉ちゃんが、『生きてる価値が無い』と言われて、ついに怒っちゃった。


 はわはわ……ど、どうしよう……。


「なんですか? 私が言ってる事が間違ってるとでも言いたいのですか? 別に料理がまともに出来ないのに、私達に張り合おうとした馬鹿さについては何も言っていません。ただ――料理が失敗したのならさっさと捨てればいい物を、お兄様は優しいから無理して食べてくれるかもしれないって期待してもってきた所がムカつくのです」


「なっ――! それって張り合った事を馬鹿って言ってる様なものじゃない! それに、別に期待してとかじゃないし!」

「じゃあ、どうして持ってきたのですか? 食べてくれるかもしれないって期待してたから持ってきたのでしょ?」

「そ、それは――」

 お姉ちゃんはお兄ちゃんに食べてもらえるかもしれないって期待してたんじゃなく、自分の作った物も食べてもらいたいと思って持って来てた。


 でも、食べられるような物じゃなかったし、お姉ちゃんもその事は理解してて、それでも捨てる事が出来ずにあの場にもってきてしまっただけなの。

 だから、お兄ちゃんなら食べてもらえると思って持ってきたわけじゃないけど――心が見えない凛ちゃんにはそう見えていても仕方がなかったし、お姉ちゃんも言い返す事が出来ない。


 ――このままだともっと酷い事になると思った桜は、この二日間で少しだけ凛ちゃんの事がわかってた事から、ここを切り抜ける言葉を凛ちゃんにかける。


「ここで喧嘩しちゃうとうるさくてお兄ちゃんが起きちゃうから、場所変えよ?」

 桜が凛ちゃんにそう言うと、お兄ちゃんの事を第一に考える凛ちゃんは素直に桜の言葉に従ってくれた。

 お兄ちゃんの事を大切に思ってるのはお姉ちゃんも同じで、お姉ちゃんも黙って移動する。


 桜はそのままお父さん達が居る部屋にお姉ちゃん達を誘導し、再戦を始めたお姉ちゃん達をお父さん達に止めてもらうのでした――。


 どうしよう……凛ちゃんとは仲良く出来そうだけど、お姉ちゃんは凛ちゃんと凄く喧嘩しそう……。

 

 ――と、桜はこの先の未来に不安を覚えるのでした――。

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