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第71話「雷が苦手な可愛い妹」

「……どうしよう……?」

 俺は自分のベッドの上で横になりながら、思わず頭を抱えそうになる。

 しかし――俺の手は今両手とも思う様に使えない状態で、俺は頭に手を回す事が出来なかった。


 現在外は大雨が降っており、たまに雷が鳴っている。

 雨の音がうるさいなぁ――とは思いつつも、気を紛らわす事が出来る為、案外助かってるかもしれない。


 何故俺が気を紛らわせたいかと言うと――原因は俺の可愛い妹に有った。

 俺は自分の左手を見る。


 そこには―― 

「すぅ――すぅ――」

 ――と、可愛らしい寝息を漏らす、桜ちゃんの顔が有った。

 今俺は、桜ちゃんに腕枕をしているのだ。


 そして空いてる右手は、桜ちゃんの頭を撫で続けている。

 本当なら頭を撫でるのをやめないといけないのだが――何度かやめようとすると、この子が苦しそうにうなり始めるのだ。

 おそらく、雷の音が嫌なんだろう。


 こんなとこ咲姫や雲母に見つかれば、俺の命は本当に無いかもしれない……。


 なんでこんな事になったのか――俺は、数時間前の出来事を思い出す。





「――急に雨降ってきてビショビショだね、お兄ちゃん……」

 雨で全身ずぶ濡れになってる桜ちゃんが、苦笑いをしながら俺の方を見る。

 その姿は雨で濡れてるせいか、いつもとは違う雰囲気を持った、ちょっとだけ色っぽいとも思うような姿だった。


 ……ロリっ子のはずなのに……。


 しかも、今日は桜ちゃんが白い服を着ていたため、雨でぬれて下着が透けて見えていた。

 俺はその事に気付くと、慌てて顔を背ける。


 さ、桜ちゃん……幼い顔をして、なんて大人っぽい下着をつけてるんだ……。

 

 桜ちゃんが付けていたのは可愛らしい下着ではなく、黒を基調とした大人の女性が付けそうな物だった。


 あ、あぁ、そういえば、胸が大きい人のって可愛らしい下着はあまりなくて、どうしてもセクシーな物をつけるしかないんだっけ……?

 で、でも、桜ちゃんがそんなのをつけてるのか――。


「お兄ちゃん……?」

「はっ――!」

 俺が先程の桜ちゃんの姿から、無意識に良くない想像をしようとしていると、桜ちゃんが声をかけてきた。

 俺は今も尚桜ちゃんの方を見られないため、顔を背けながら話す事にする。


「今日、天気予報を見ずに遊びに行ったのは不味かったね……」

「うん、そうだね……。でも、朝早くから雲母先輩が迎えに来てくれたんだし、あまり待たせる訳にもいかなかったもん」

 そう、今日は先程まで、雲母と桜ちゃんの三人で遊んでいたのだ。

 

 昨日咲姫と雲母の揉め事があった後、咲姫が帰ってすぐ、雲母も自分の家へと帰る事にした。

 もちろん、雲母みたいな子を夜道に一人で帰らせるわけにはいかないから、俺は送って行った。


 その時に雲母と少し話をしたのだが――あいつはあいつで、まだ悩んでいたらしい。

 俺との約束で一生償っていくと決めたのはいいけど、未だに咲姫に何もしてあげられていないという事に。


 そんな中咲姫が友達なら許せるかもしれないから、友達になってみろといった事で、雲母は自分がしないといけない事がわかったらしい。


 ただそれは、凄く厳しい道だと思う。

 咲姫が言った友達になってみろという事だが――普通、あれだけの事をした人間の事を友達だなんて思う事は出来ない。

 そしてこれから絡んでいくという事は、相手に嫌な態度を示されても我慢しなければいけないし、辛い思いをする事が増えるだろう。


 それなら、まだ困った時にだけ助けるといった方が、雲母は気持ち的に楽だったんじゃないかと思う。


 だが、その事を咲姫と雲母はわかった上で、二人ともがそう決めたのだ。

 ならもう中途半端な当事者でしかない俺が、口を挟む事ではないだろう。


 ただ雲母には、咲姫が許すと言うまでは、咲姫に償い続けてもらうがな……。


 結局雲母を家まで送ると、俺はすぐに家に帰った。

 なんせ、桜ちゃんを一人にしておくのは心配だったからだ。


 というか桜ちゃんもついてくればよかったのに、雲母に気を使ったのかもしれないな。

 見た目や歳は一番幼くても、あの子は俺達兄妹の中で一番大人なのかもしれない。 


 ……どうしよう……桜ちゃんが一番大人かもしれないって、俺達姉弟大丈夫かよ……。


 俺はそんな感じで自分の人生に不安を抱えながら、その日は帰路についた。


 そして次の日の朝――雲母が遊びに行こうと誘いに来たのだ。

 桜ちゃんも乗り気だった事から、俺達は雲母と遊ぶことにした。

 動物好きな桜ちゃんの為にペットショップにも行ったりしたのだが、子猫にメロメロになってる桜ちゃんに、俺と雲母は癒されていた。


 うん、猫好きの俺が猫に見向きもしなかったのは、人生で初めてかもしれない。


 そんなこんなで18時頃まで遊んで帰ってると――急に雨が降り出したのだ。

 そしてそれはもう土砂降りってレベルじゃなく、ジャングルの雨かよってくらい、大雨が降ってきた。


 家がすぐ近くだから傘を買わずに帰る事を選んだ俺達は、見事にずぶ濡れになったという訳だ。

 とりあえずこのままだと桜ちゃんが風邪をひいてしまうし、俺も目の置き場に困るため、桜ちゃんにはお風呂に入ってもらおう。


「桜ちゃん、風邪をひかない様にお風呂に入っておいで」

「え、でもお兄ちゃんは?」

 俺が桜ちゃんをお風呂に促すと、桜ちゃんは心配そうに俺の顔を見る。

 俺が風邪を引いてしまうかもしれないと心配しているのだろう。

 やっぱりこの子は優しい子だ。


「俺は後で大丈夫だから、早く入っておいでよ」

「でも……」

「いいから、な?」

 俺がそう言って頭を撫でると、桜ちゃんは一瞬驚いた表情をして、俺の顔を見た。

 でも、すぐに嬉しそうな顔に変わり、そのまま素直にお風呂に向かってくれた。

 まぁお風呂と言っても、シャワーにだけど。


 しかし――俺は自分で自分の行動に驚いていた。

 

 俺……桜ちゃんの頭撫でちゃったな……?

 いや、初めてではないけど、自分から撫でたのは初めてだし、何より無意識にしてしまった。

 俺はそんな自分の行動が信じられなかった。


 少しすると桜ちゃんがお風呂から上がってきて、交代で俺はお風呂に入る。

 そしてシャワーで体を温めていると、外で雷が落ちだした。

 それも短スパンですぐ近くに。

 でも俺は雷が怖いって人間ではないため、特に気にしない。


 だけど――桜ちゃんはそうではなかったみたいだ。


「ど、どうしたの……桜ちゃん……?」

 お風呂を上がった俺は、何処から持ってきたのかわからない毛布を、体にグルグルと巻き付けて震えている桜ちゃんに声をかけた。


「お兄ちゃん――!」

 俺が声を掛けた事によって俺の存在に気付いた桜ちゃんが、毛布から抜け出すと俺に抱き着いてきた。


「え、本当にどうしたの!?」

「こわいの……」

「え、怖い?」

「うん……ひぅ――!」

 雷がまた近くに落ちると、桜ちゃんが小さく悲鳴を上げた。

 そして、ギュッと俺に抱き着いてくる。


 あぁ……怖いって、雷か……。


 泣きそうになっている桜ちゃんには悪いけど、俺は今の桜ちゃんが凄く可愛いと思った。

「大丈夫?」

 俺がそう聞くと、桜ちゃんが首を横にブンブンブン――と凄く振った。


 相当雷が苦手な様だ。

 

「お兄ちゃん……ギュッってして、頭撫でて……?」

 桜ちゃんは俺の顔を涙目で見上げながら、そうおねだりしてきた。

 こんな可愛い妹の頼みが断れるはずがない俺は、桜ちゃんのお望み通りにする。


 俺が桜ちゃんの体をギュッと抱きしめて頭を撫でてあげると、桜ちゃんは安堵したような表情を浮かべて、俺に抱き着いてる腕に更に力をこめる。

 

 ……やばい、どうしよう……。

 桜ちゃんが可愛すぎるんだけど……。


 俺はもう、桜ちゃんの可愛さに胸の中が凄く満たされていた。

 たがしかし、今日は家でご飯を食べる事になっていたため、ご飯を作らないといけない。

 

 でも今の桜ちゃんには料理が出来ないだろう。

 代わりに俺が作る事にしよう。


 そう思った俺は桜ちゃんに『ご飯を作るから離れて』と言ったのだが――桜ちゃんはさっき以上に首をブンブンと横に振った。

 そしてグリグリと自分の顔を俺のお腹に押し付けてくる。

 何気にそれが痛かった。


 結局妥協案として、俺がご飯を作っている間桜ちゃんは、俺の背中に抱き着くという事になった。

 その後もご飯を食べる間やテレビを見ている間など、桜ちゃんは一切俺から離れなかった。

 俺はそんな桜ちゃんの事を凄く可愛いと思い、正直ウハウハだった。


 だがしかし――桜ちゃんは寝る時まで離れようとしなかったのだ。

「あ、あの桜ちゃん……? 流石に一緒に寝るのは駄目だよ?」

「やだ……。お兄ちゃんと一緒に寝るもん……」

 俺から離れようとしない桜ちゃんは、珍しくもそう言って駄々をこね始めた。


「いや、ね? 流石にそれは駄目なんだ」

「お兄ちゃんは……桜の事が嫌い……?」

 桜ちゃんは泣きそうな目で、俺の顔をジーっと見る。

 

 いつもの俺ならここでコロっと頷いてたかもしれないけど、流石に昨日の今日で咲姫に怒られそうなことをするわけにはいかない。

 あいつの大切にしている妹と一緒に寝たとバレた日には、一体どうなる事やら……。


「ごめん、流石に無理だ」

「うぅ……お兄ちゃんのいじわる……」

「うっ――!」

 泣きそうな顔でそんな事を言ってくる桜ちゃんに、俺は凄く罪悪感を感じてしまう。


「どうしても……だめ……?」

 桜ちゃんに悪いなと思っていると、桜ちゃんは上目遣いでそう聞いてきた後、更にギュッと抱き着いてきた。


 ……もう、無理……。


「わかった、いいよ……」

 桜ちゃんの可愛さに負けた俺は、ついにOKしてしまった。


「ありがとう……!」

 桜ちゃんはそう言うと、また抱き着く腕に力をこめた。

 本当に雷が怖いんだろう。


 そして桜ちゃんと寝る事になったのはいいが――何故か腕枕を要求され、雷から意識を逸らしたいからという事で、頭を撫でて欲しいともおねだりされた。

 もう一回桜ちゃんに折れてしまった俺は、その要望に従って桜ちゃんに腕枕をしていたというわけだ。


 桜ちゃんが寝付くまでの間は一緒にお話しをして、すごく楽しかったのだが――これ、咲姫や雲母にバレたらどうしよう……?


 俺はそんな不安を抱えたままなのと、寝ぼけて抱き着いてくる桜ちゃんに翻弄されてしまい、その夜は寝付くことが出来なかったのだった――。


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― 新着の感想 ―
雷が怖い桜ちゃんがシャワーを浴びてるときに駆け込むんじゃないかと期待したが残念!雷怖くても理性は保てるのに一緒に寝てなんてすがりつくなんてズルい~ 保護欲が爆上がりしてしまうぢゃないか(;^ω^)
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