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ボッチのオタクである俺が、学内屈指の美少女たちに囲まれていつの間にかリア充呼ばわりされていた   作者: ネコクロ
Aの思いとKAIの役目

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第63話「意外な一面」

 部屋に行った俺達は、現在俺のベッドの上で並びあって座っていた。

 俺はアリスさんと離れた所に座ろうと思ったのだが、アリスさんに横に座るように言われたのだ。

 Aさん事アリスさんに頭が上がらない俺は、言われるがままにするしかなかったという訳だ。


「とりあえず――よく頑張った」

 ベッドに一緒に腰掛けていると、アリスさんがそう言って俺の労をねぎらってくれた。


「ありがとうございます」

「うん……。正直……今回は驚いた……」

 俺がねぎらってくれたお礼を言うと、アリスさんは笑顔を浮かべてそう言ってきた。


「何に驚いたんですか?」

 多分俺がアリアのインサイダー取引の証拠を手に入れた事についてだとは思ったが、一応聞いておいた。


「理性を保っていながら……まさか犯罪に問われる行為を……あんなにするなんて……」

「すみませんでした!」

 アリスさんに犯罪行為の事を言われた瞬間、俺はすぐに頭を下げた。

 やはりこの人は、その事を怒ってるのだろう。

 だから、まず最初にその言葉が出てきたんだと思う。


「なんで……謝るの……?」

 しかし俺が謝ると、当のアリスさんはキョトンっとしていた。

「え……? だって、俺がやった事は許されない行為ですし……」

「まぁ犯罪だからね……。でも……アリスはよくやった……って褒めてる……」


 俺はアリスさんの言葉に首を傾げる。

 まさか、俺の行為を肯定されるなんて思わなかった。


 俺が戸惑っていると、アリスさんが『ふぅ――』と大きく息を吐き、そこからアリスさんの雰囲気が変わった。


「確かに世間から見れば、カイは駄目な事をした。それは罪に問われても文句を言えない事」

「はい……」

「だけど――カイは、金髪ギャルを確実に助けるために、そうした。そして、誰かを貶める為に違法行為に及んだわけでもない。そもそも、アリアの方が先に違法行為をしようとしていたんだしね。寧ろ、あの時に確実に勝つには、ハッキングでもして裏をとるしかなかった。誰かを助けたいんなら、カイがした事が正しい。本当に助けたくてその手が見えてるのなら、リスクに退いたら駄目。だから、カイがやった事は立派」

 アリスさんは真剣な瞳で、俺の事を見てそう言ってくれた。

 しかし、俺は自分がした事が正しかったとは思えなくなっていた。


「カイ――」

「え――!?」

 アリスさんが俺の名前を呼ぶと、急に俺の頭をグイっと引っ張ってきた。

 考え事をしていた俺はその行為に反応しきる事が出来ず、アリスさんに引かれるがまま倒れこんでしまった。


 ポフン――。


 そして、俺の頭が倒れこんだ先にあったのは、アリスさんの柔らかい太ももだった。

 ようは、膝枕をされている体勢になったのだ。


「なななな――何してるんですかアリスさん!?」

 俺はいきなりの展開に戸惑いが隠せず、慌てて頭を起こそうとする。


「だめ」

 しかし――起こそうとした頭をアリスさんに抑えられ、また太ももの上に戻された。


「大人しくしとく」

 アリスさんはそう言うと、まるで子供をあやすように、俺の頭を優しく撫で始めた。


 なんだこの状況!?

 なんで俺アリスさんに膝枕されて、頭を撫でられてるの!?

 

 俺は急な膝枕に、頭の中がパニックになっていた。

 しかも、アリスさんの太もも凄く柔らかい。

 普通の女の子よりも華奢な体付きをしていて、太ももにもあまり肉がついてなさそうなのに、プヨプヨとして気持ちよかった。


「ねぇカイ――自分がした事を悔やんでるんだったら、あのまま金髪ギャルを見殺しにしてる方がよかった?」

 俺の頭を撫でているアリスさんが、優しい声でそう尋ねてきた。

 いつもの気怠い雰囲気など今の彼女からは一切感じず、とても気持ちが落ち着く。


「それは――」

「出来ないでしょ?」

「はい……」

「だったら、仕方ない。カイは自分がどうなってもいいから、大切な人達を助けたい子だもんね」

 そう言えば……昔、そんな話もAさんとしたな……。

 俺がオタク趣味に走ったばかりの時、よく漫画やラノベの話をAさんにして、俺の思いとかも言ったりしていた。


 それは俺にとって痛い過去だから、もう忘れて欲しいんだけどな……。

 Aさんはいつも素っ気ない返信をしてきてたから、普通に流されているものだと思っていた……。


「でも、犯罪行為を肯定してしまったら、殺人などを犯す犯罪者たちと変わらないんじゃないでしょうか……?」

「何を目的にするかによって違う――と言っても、今度はテロ集団と変わらないってカイは言うだろうね。だったら、これからは犯罪に手を染めなくても、大切な人を救える人間にならないとね」

 アリスさんは優しく微笑むと、そう言ってきた。


「相変わらず簡単に言ってくれますね……」

 俺はそう苦言を言いながらも、思わず笑みが漏れる。


 この人が言うと、なんでこんなに心にすんなりと来るのだろうか。

 本当に出来そうに思えてくるから、不思議だ。


 うん――少し気持ちが楽になった。

 だから、もうこの膝枕はいいんだが……。

 凄く居心地が良いんだけど、半端なく恥ずかしい……。

「あの、なんで膝枕をされたんですか……?」

 とりあえず、そこから聞いてみる事にする。


「これは――カイへのご褒美」

 俺の質問に対して、アリスさんは優しい笑顔を浮かべたまま、そう言ってきた。


「ご褒美ですか?」

「そう、カイはアリスの我が儘を聞いてくれたから。頑張ってくれた子にはご褒美を与える。昔からそうだったでしょ?」

 確かにAさんはプログラムが完成すると、よく褒めてくれたし、報酬などにも色をつけてくれた。

 しかし、このご褒美はどうなんだろうか……?


 確かに凄く嬉しい。

 それはもう、お金など比べものにならないくらいにだ。

 しかし、同い年の女の子にこんな事をされて喜んでる俺って、周りから見れば痛い奴じゃないのか……?

 こんなとこ桜ちゃんに見られたら、もう顔を合わせる事が出来ないぞ……。

 でも、このまま続けて居たいという俺が居る……。


「カイはアリスにとって、凄く面白い存在」

「え?」

 この膝枕状態に抗うことが出来ていない俺に対して、アリスさんが急にそんな事を言ってきた。


「初めてアリスがAとして、カイにメールを送った時の事を覚えてる?」

「もちろんですよ。あの時の俺は、どの企業からも仕事をもらえなくて困っていました。そんな時にAさんから仕事をくれるというメールをもらった時は、凄く嬉しかったのを今でも覚えています」

 Aさんとの出来事は俺にとって大切な思い出だったから、忘れているはずがなかった。


「あの時、カイの事は結構噂になってた。まだ中学生なのにプログラムの仕事をもらおうとしている子がいるって。みんな馬鹿にしてたけど、アリスは中学生からプログラムの仕事をしようとしているのなら、試してみる価値があると思った。だからその中学生に連絡を取り、無理難題を押し付けた」

「やっぱり、あれっておかしかったんですね……。初めての仕事が高性能のアンチウイルスソフトってどういう事だよって思ってましたよ……」

 俺はアリスさんの言葉に苦笑いしながらも、そう答えた。


 まぁ普通に考えてありえないよな……。

 あの時の俺はよく作ったもんだよ、本当……。


「どれだけ時間がかかっても、諦めなければそれでいいと思ってた。根性のある中学生かどうかを見たかったから。それにもし作れたとしても、早くて二、三年かかると思ってた。なのに、カイは半年というありえない期間でアンチウイルスソフトを作りあげた。あの時は、アリスの読みが人生で初めて外れて、凄く興奮した事を今でも覚えてる」

 アリスさんは懐かしむ様な瞳で俺を見ながら、優しく口元を緩ませた。


 アリスさん、そんな風に思ってくれてたのか……。

 褒めてはくれてたけど凄くあっさりしてたから、当たり前の様に思われてるんだと思ってた。

 

「それからも、カイの成長はめざましかった。当時のアリスは、これからずっとカイに仕事を与えて育てながら、いつか平等院システムズに入れようと思ってた。だけど――」

 アリスさんはそこまで言うと、暗い表情をした。


 俺達の仲を引き裂いた、あの時の出来事を思い返しているんだろう。

 あの出来事は、未だに俺達の心に根強く残っている。


「アリスは、今の社会が凄く嫌い。アリスの大切な物を奪うばかりするから……」

「アリスさん……」

 俺はアリスさんの表情に、なんとも言えない気持ちになった。


 俺もこの社会が嫌いだ。

 人を食い物として見る人間ばかりで、足を引っ張る事しか考えてない人間が多い。

 俺はKAIとして生きてきて、そういう人間達をたくさん見てきた。

 きっとアリスさんも、同じように汚い人間ばかりを見てきたのだろう。


「カイは、アリスが作ったKAIが交わす契約内容の七番に疑問を持たなかった?」

 アリスさんは暗い表情からまた笑顔に戻ると、俺にそう尋ねてきた。


「疑問に思いましたね……。7番の内容は、6番――『KAIの勧誘を禁ずる』以外の事項を破った場合、賠償金として2億を請求するという事ですが、何故KAIの勧誘は禁止しなかったのかが凄く気になっています。本当なら、一番そこを禁止したいところですのに……。もしかしたら、Aさんからの何かのメッセージだったのでしょうか?」

 俺がそう尋ねると、アリスさんは笑顔で頷いた。


「そう、その解釈であってる。その契約内容を教えた時に、アリスは『KAIが進み続けるなら、いずれまた出会える』と、送ったよね? つまり、カイがプログラムの仕事を続けるのなら、時が来ればアリスが勧誘に行くから、禁止してないって意味だった」

 俺はもう何と言えば良いのかわからない。

 胸の中が色々な感情で、凄く一杯になっている。


 Aさんが俺を誘ってくれようとしていた事が凄く嬉しいという気持ちと、そんなわかりづらいメッセージは無理難題だろという気持ちがあった。

 でも、圧倒的に嬉しさが勝っている。


「あの時にはもう、アリアが平等院システムズを継ぐ事が決まってたから、アリスは陰ながら支える事になってた。だから、いつかどの企業からもカイを守れる様になったら、迎えに行くつもりだった。そして、先日カイのおかげで、平等院システムズは平等院財閥のグループの中でトップになれた。それはつまり、日本でもトップクラスの企業になれたという事」

「という事は――」

 アリスさんの言葉に、俺は期待を膨らませる。

 この話の流れで平等院システムズがトップに上がり出た事を言ってきたという事は、つまりそういう事なんだろう。

 アリアとのいざこざはあるが、その辺はどうとでもなる気がする。

 それにアリスさんなら、上手くやってくれそうだし。


「うん――だからカイ、アリスと一緒にはたらこ?」

「はい――!」

 笑顔で俺の頭を撫でて誘ってくれたアリスさんに、俺はそう返事をするのだった――。


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