【番外編SS】至高のラブコメ
※ある程度話が進んでいる番外編です※
個別ルートに入ってるところまで読んでる方は大丈夫です。
「――か~いくん、ゲームしよ?」
「咲姫……」
「えっ、か、海君泣いてるの!?」
ここ最近更にかわいい女の子みたいなテンションになっている咲姫は、俺の部屋を訪れると同時にとても驚いた声を出した。
「別に、泣いてない……」
「凄く目が潤んでるけど……。それ、この前アニメで見てた奴の漫画? ほら、高校生が箏を弾く奴の」
咲姫は目ざとくも俺の手にある漫画に気付き、興味深そうに顔を近付けてくる。
「そういえば、咲姫はアニメ見てなかったんだっけ?」
「うん、テスト期間だったからね?」
「…………」
しまった、これは藪蛇だった。
「ほんと、一緒に見ようって言ってたのに、海君有料アニメサイトで一人だけ見ちゃったもんね? その上今度は漫画まで抜け駆けかぁ」
なんだろう。
ニコニコとかわいい笑顔なのに、とてつもない威圧を感じてしまう。
よっぽどアニメを一緒に見なかったことを根に持っているようだ。
「いや、あの、うん。だって俺テスト勉強必要なかったし……」
「ふ~ん? それで?」
「たまたま動画サイトでめっちゃいいシーンが流れてきたので、我慢できずにアニメを一から見てしまいました……」
「ほんと、酷い……! 一緒に見るの楽しみにしてたのに……!」
「すみません……」
昔のいがみあっていた関係はどこへやら。
現在俺たちはちょっと大人向けのゲームでさえ一緒にする仲だ。
そしてアニメ一つとっても、咲姫は一緒に見ないと拗ねてしまうくらいに仲良くなっている。
いや、うん……。
姉弟だからギリギリ許されているけれど、血は繋がっていなくて年頃の男子からするといろいろと思うことはある。
「でも、海君がアニメ見てすぐに漫画読むなんてよっぽどよかったんだね」
「あぁ、凄くいい。アニメの続きが観たくて漫画を買ったんだけど、これはもう青春音楽漫画というだけでなく、至高のラブコメだ……!」
「至高のラブコメ!? 海君がそんなこと言うところ初めて見た! というか、もう25巻読んでるの!? アニメ見てたのついこの間だよね!?」
「読む手が止まらなくてすぐに次々と買って読んでしまったからな……。いや、ほんともう最高過ぎるんだよ……!」
「へぇ、人がテスト勉強を頑張っている間に随分とお楽しみだったんだね?」
俺が熱く語っていると、咲姫はまたニコッと笑みを向けてきた。
うん、怖い。
最近こいつ桜ちゃんに似てきたな……。
さすが姉妹だ。
「ま、漫画貸すから許してください……」
「アニメも一緒に観てもらうからね!」
咲姫はそう言って、俺の本棚から一巻を取り出す。
そして当たり前のように俺の背中に持たれてきて、漫画を読み始めた。
今日でテストも終わりだったので、誰も止める者はいない。
俺は現在ある巻は読み終えてしまったので、もう一度アニメが終わった話の続きくらいから漫画を読み返してみた。
そうしていると、咲姫も数日前の俺のように読み終えては次の巻を、そして読み終えては次の巻を読んでいく。
途中ご飯に呼んでもおりてこない俺たちを桜ちゃんが部屋にまで迎えに来る、というちょっとした出来事はあったけれど、咲姫はご飯を食べてお風呂を上がってからも俺の部屋で漫画を読み続けた。
「――咲姫、そろそろ寝ないと明日に響くぞ?」
「もう一巻! もう一巻だけ読む!」
「おい、こら。キリがいいところじゃなくてもう一巻かよ」
「だめ……?」
「うっ――まぁ、いいけど」
咲姫の縋るような目に負けた俺は、仕方なく咲姫が満足するのを待つ。
結局咲姫は後一巻だけと言いながらも、そこから四巻くらい読み続けたのですっかり夜は更けてしまった。
いつの日かの再現だ。
「海君、これいいね……! すっごく、胸が熱くなったよ……!」
「あぁ、そうだな……」
「あれ、海君元気ない? 大丈夫?」
「眠いんだよ……! お前、ほんと熱中したら止まんないよな……!」
「ご、ごめん……」
最早三時を回っているので怒ると、咲姫はシュンとしてしまった。
本当にこういうところはずるいと思う。
こんな表情されたら怒れないじゃないか。
「はぁ……いいよ。それよりも、この先もっともっと熱くなるし、ヒロインめっちゃかわいくなるから」
「ほんと!? 凄く楽しみ……!」
「だからもう今日は寝ような? 明日も学校なんだし」
「……でも、これからもっと熱くなるって聞いたら先が気になっちゃうよね?」
「いい加減にしろよ……!? 桜ちゃんに言いつけるぞ……!」
まだ読み続けようとする咲姫に対し、さすがにこれ以上は明日に響くと思った俺は切り札を出す。
少し前に気付いたことだけど、めちゃくちゃかわいがってるくせに咲姫も怒った桜ちゃんのことは怖いようだ。
だから、桜ちゃんを持ち出すと驚くほどに言うことを聞く。
「むぅ……仕方ない」
「まぁ、明日も学校終われば貸すから」
「そうだね! それに明後日は休みだし、漫画読み終わったら徹夜でアニメみよ……!」
「あぁ……はいはい、そうだな」
咲姫がこう言い出したら俺が何を言っても駄々をこね始める。
だから素直に言うことを聞くのが一番いいのだ。
何より、俺ももう一度アニメを見直したいので望むところである。
――この次の日、俺が読んでいるところまで追いついた咲姫は凄く感動し、なぜか俺にベッタリとくっついてくるのだった。
めっちゃくちゃ大好きな作品に出会ってしまいましたので、
熱がこもりすぎて思わず番外編を書いてしまいました……!
いや、もう本当に三日か四日くらいで全巻買って読んでしまいましたね。(笑)
本当に至高のラブコメでした。(音楽漫画ですけど……!)
こういう作品に出会えるとモチベーションがかなり上がりますし、
新たに書きたい作品が出てきたりアイディアが浮かびます。
幸せな限りです。