第49話「力を貸してほしい」
「――お待たせしました」
俺が呼び出された公園に行くと、アリスさんは既に来ていた。
そしてその横には、昼間にも居た護衛の女性が立っている。
どうやら、アリアさんは居ない様だ。
「待ちくたびれた。カイの癖に生意気」
「え? あ、すみません……」
俺は一瞬アリスさんの言葉に驚いてしまった。
まさかそんな風に返されるとは思ってなかったのと、なんだかアリスさんの雰囲気が違うのだ。
昼間や前に会った時みたいな、怠そうな雰囲気が無くなっている。
というか、俺の癖に生意気ってなんだ?
何故俺は、こんな謂れもない責められ方をしている?
「率直に言う。カイの力を貸してほしい」
俺はアリスさんの言葉を聞き、アリスさんの表情を観察する。
だが、今のアリスさんは無表情だった。
これでは感情が読み取れない。
ならば、アリスさんの言葉から察するしかないか……。
とは言え、何故俺の力が必要なんだ?
タイミング的にはアリアさんと雲母の勝負にだろうが――正直、アリアさんの戦略がある限り、俺の力は必要ないはずだ。
それ以前に、俺に力を貸してほしいと頼んできたという事は、この人は俺がKAIだと気づいてるのだろうか?
「急にこんな事を言えば戸惑うのもわかる。アリスも本音を言えば、まだこの関係を楽しみたかった」
「関係を楽しむ……?」
「そう――だけど、状況が変わった。だからカイ――君にアリアを叩き潰してもらいたい」
「……は!?」
俺はアリスさんの言葉に耳を疑う。
今アリアさんを叩き潰せと言ったのか……?
何故、アリアさんの姉であるアリスさんがそんな事を……?
俺はアリスさんの隣にいる、俺より少しだけ年上であるだろう護衛のお姉さんの方を見る。
彼女はアリスさんの言葉に驚くどころか、何もなかったかのように平然としていた。
……何が狙いだ……?
「何故、そんなお願いを俺に?」
「アリアは、周りの人間を食い物にする事しか頭に無い。今はまだアリスの言う事を聞くけど、いずれ、アリスの抑制すらも無視する様になるかもしれない。だから、今のうちに一度徹底的に敗北させて、挫折させたい。だけど、アリアを叩き潰せる人間はそうはいない。一人心当たりがあったけど、今別の件で動いてるから、多分当分は無理。そう思ってたら、そのチャンスが来た。カイという存在をアリアにぶつける事が出来るチャンスが――」
アリスさんはそう言うと、強い視線を俺に向けてきた。
この言い方、俺がKAIだと言う事は十中八九バレているな……。
それに、アリアさんの事も納得がいく。
再会したばかりの雲母に勝負を挑むくらいだし、噂でも様々な所に手を出している事を耳にしている。
だからアリスさんも危険だと思ったのだろう。
とりあえず、一つ一つ話を進めていくか……。
「いつから、俺の正体に気付いていましたか?」
俺はまず最初にその事について聞いてみた。
俺がそう尋ねると、アリスさんの護衛が俺達から離れていく。
きっと、自分は聞いてはいけない話だと判断したのだろう。
「前に平等院システムズで会った時から気づいてた」
やはりか……。
「俺達の話をドア越しに聞いてたんですね?」
「それは違う。話し声がそれ程大きくないのに、聞こえたりしない」
「ならばどうして……?」
「アリスが平等院システムズに行った時、裏口から入ってきた茶坊主がカイのご機嫌を取りながら、すぐ傍の部屋に案内した事でおかしいと思った。茶坊主がご機嫌を取るような相手なのに、重役達を案内する奥の部屋に通さなかったことと、そもそも学生くらいの歳の子に、あの茶坊主がご機嫌をとろうとしたのがおかしい」
茶坊主……?
まぁ新庄の事を言ってるのだろうが――あぁそう言えば、権力者におもねる者をののしって茶坊主と言うんだったか?
なるほど、確かにあの男にピッタリなあだ名だ。
俺がアリスさんが呼んだあだ名について考えている間も、アリスさんの言葉は続く。
「だからアリスは入室手続きを調べた。そこには何かしらの会社の人間の名しかなかった。それに裏口から入ってすぐ近くの部屋に入ったという事で一つわかる事がある。それは――道中に防犯カメラが無いという事。だから、KAIだとわかった」
「なるほど……。しかし、それでは偶々(たまたま)という可能性も捨てきれませんよね?」
「確かにそう。だけど、それらはアリスがカイに教えた事。だから、間違いない」
「――っ!」
俺はアリスさんの言葉に驚いた。
アリスさんがカイに教えた事という事はつまり――。
「ねぇカイ――才能ある者は理解されず、苦しかったでしょ? 自分の利益しか考えない大人に追い回されるからね」
――俺はアリスさんのその言葉に、本当にこの人がAさんだったんだと理解する。
それは俺とAさんしか知らないやり取りだからだ。
「あなたがAさんなんですね……?」
俺の言葉に、アリスさんはニコッと笑って頷いた。
それは先程までの雰囲気とはまた違う、優しい感じだった。
しかし――これでは色々と謎が残る。
何故、こんな少女にあれだけの事が出来たんだ?
普通に考えてありえないぞ?
「色々聞きたい事はあると思う。だけど、今はそれよりも優先しなきゃいけない事がある」
俺はアリスさんの言葉に頷く。
そうだ、今はアリアさんを叩き潰すという事について話していたんだ。
しかし――アリスさんがAさんなら、アリアさんを止めるのは容易いんじゃないのか?
「アリスさんの手で、アリアさんを挫折させるわけにはいかなかったんですか?」
「アリスがしても、多分アリアは気にしない。挫折するんじゃなく、それが当たり前だと思うから。だからアリスじゃなく、別の人間がしなくちゃならない。それにアリアはアリスにとって大切な妹だから、潰すと言っても、抑え込むんじゃなく、この挫折を機に成長してもらいたい」
アリスさんはそう言って、少し悲しそうに笑った。
俺はなんとなくではあるが、その気持ちが理解できた。
それが必要な事だとは言え、自分の大切な人を傷つけるなんて本当は嫌なのだろう。
だけど、それがアリアさんの成長に繋がると思ってるから、挫折を味わわせようとしているのだ。
「しかし――Aさんはかなり年上の方だと僕は思っていましたよ……」
俺は率直な感想を言った。
少なくとも、Aさんが同い年の女の子だとは思いもよらなかった。
「昔カイに『Aさんは僕のもう一人の親みたいです』と言われた時、アリス中学生なのにママになっちゃったって思った」
アリスさんは思い出し笑いをするかのように、そう言った。
……そんな事言ったっけ……?
あぁ、でも言った気がするな……。
当時の俺は本当にAさんの事を親みたいに思っていたし……。
だけど――中学生のママか……。
なんだろう、惹かれるものがあるな……。
「ねぇカイ――昔アリスが『青陵学園に入ってほしい』って頼んだの覚えてる?」
俺がちょっと馬鹿な事を考えてると、アリスさんが真剣な声色――だけど、顔は無表情でそう聞いてきた。
「はい、覚えています。あの時アリスさんは通い続ければその理由がわかると言いましたけど……結局僕は今でもわかっていません。あれはどういう意味だったのですか?」
「あれは――アリスの罪滅ぼしなの」
「罪滅ぼし……?」
「そう、カイに青陵学園に入ってもらった理由――それは、カイを通して西条の子を助けたかったから」
「雲母を……?」
アリスさんは俺の言葉にコクリと頷いた。
どういう事だ……?
何故、アリスさんが雲母を助けようとしたんだ?
そもそも、一体何から助けるつもりだったんだ?
「カイにお願いする数か月前――今回と同じように西条の子にアリアが勝負を挑んだ」
「……それはどういった勝負だったんですか?」
正直、過去にも雲母がアリアさんと勝負をしたというのは、雲母の話からなんとなくわかっていた。
つまり、雲母が過去に逃げたというのは、アリアさんからだったのだろう。
「毎年アリス達の学園で行われてる人気投票で勝負だった。ただし、その時賭けたものは何もない」
「え……? それだけ……?」
それはおかしくないか……?
たったそんだけの理由で、雲母が逃げたりするのか……?
「勝負内容自体はそうでもないけど――結果が酷かった」
「……どんな結果だったんですか……?」
「西条の子が自分で入れた票以外、全てがアリアに入った」
……なるほどな……。
それは確かに心に来る。
そして、雲母がアリアさんを汚い奴と言った理由もわかった。
どう考えても、これは真っ当な勝負で行われたものじゃない。
「まさか、それほど二人の人気に差があったと言う訳ではないですよね?」
「うん。あの二人はタイプが違うけど、学園のツートップだった。活発に行動し皆を引っ張るアリアに対して、西条の子は大人しくて優しい友達思いの人間で、特に後輩から慕われていた」
……雲母が大人しくて優しい人間……?
馬鹿な、人違いをしていないか……?
「俺の知ってる雲母と随分イメージが違うようなんですが……?」
「それは、西条の子がアリアみたいになろうとしたからだと思う。今日会った時も、金髪に染めてたし、口調がアリアそっくりだった。昔は優しい喋り方をしてたのに……」
まぁそうなるのか……。
だとすれば、本当にアリアは許せないな。
どれだけ雲母の人生を狂わせるつもりなんだ。
「そうなると一つ疑問があるんですが――なんでそんな大人しい雲母がアリアと勝負をしたんですか?」
俺はもうアリアの事を呼び捨てにした。
敬称で呼ぶ必要がない人間だからだ。
「最初は勝負を断ってた。だけど――アリアは西条の子に勝負を受けさせるために、その親友を狙った。そして、その親友を庇う為に西条の子は勝負を受けた」
「……なんてずるい……。でも、ちょっと待って下さい。だとしたら、その親友はそこまでした雲母に票を入れなかったのですか……?」
先程アリスさんは、雲母に入った票は自己投票の一票だけと言った。
つまり、雲母以外は投票をしていなかったことになる。
「その親友の父親が経営する会社は、平等院財閥の取引会社だった。とはいっても、こっちが恵んであげてるような立場だったから、それを利用してアリアはその親友を脅してこちら側につけた」
「……他の人間にも似た様な事をしたんですね……?」
「それは色々。元々のアリアの人気で入れてくれる子もいれば、そういう風に脅しで入れる子もいた。他にも、アリアに媚びを売ろうとする子もいた。だけど、西条の子は普通に人気を集めようと努力しただけだったから、裏で動いてたアリアに完膚なきまでに負けた」
「……それで、どうしてそれをアリスさんが罪滅ぼしするんですか?」
アリアがした事を聞いていて気分が悪くなった俺は、話を切り替える事にした。
「アリアがした事は全て、アリスがそうするように教えた事だから」
アリスさんはそう言って、目を閉じた。
その姿はまるで懺悔をするかの様だった。
「なっ――!? つまり、雲母を陥れたのは、あなただったんですか!?」
俺はアリスさんの言葉に驚きが隠せなかった。
これは全てアリアが単独でやった物だと思っていたからだ。
「そう。当時のアリスは、アリアのしたいままにさせていた。アリアは幼い頃からアリスと比べられて辛い思いをしていた。あの子だって本当は凄いのに、周りの大人達は誰一人アリアを気にしなかった。あの子が今も尚周りを蹴落としてまで上に登ろうとするのは、そうする事でしか自分をアピール出来ないから。アリスは、アリスのせいでアリアに辛い思いをさせていたから、アリアが望むことを全て叶えてあげようと思った。だから、西条の子と勝負する方法と完璧な勝ち方を教えて欲しいというアリアに、全てを教えた」
「つまり……雲母がどうなろうと知った事がなかったと……?」
「そう。決着がついた時の西条の子が泣き崩れた姿を見ても、アリスは何も思わなかった」
「じゃあ、何故罪滅ぼしをしようとしたんですか……?」
「勝負に敗れた西条の子が学校に来なくなってしばらくして――西条の子が家を勘当されたという話が耳に入った。そして、アリアが脅して味方につけた子達……本当は西条の子を慕っていた子達皆から笑顔が消えた。中には学校に来なくなった者もいる。私達は、たくさんの人間の笑顔を奪ってしまった。だから、アリスは後悔し、西条の子の勘当を防ごうと思った」
なるほどな……。
学校でツートップと呼ばれるくらい人気があった雲母だ。
そんな人を本気で慕っていたのなら、自分達のせいで雲母が家を勘当されたと思ったのかもしれない。
いや、それどころか雲母が勝負に敗れた時に、激しい罪悪感に襲われたのではないだろうか。
雲母が気づかない様にアリアは裏で動いていた。
だから、脅された子達もその話は自分にしかされていない――自分のたかが一票が入らなくても、雲母の人気なら差し支えないから大丈夫と思ったはずだ。
しかし、『塵も積もれば山となる』という言葉があるように、全員がそんな考えをしてしまったせいで、結果雲母には一票も入らなかった。
本当なら人間不信になってもおかしくない。
なのに、今は平然としている雲母は本当に心が強いだろう。
「雲母が勘当されないで済むように、俺にアリスさんが指示して雲母をサポートする事により、学校のヒエラルキーで1位がとれるようにしようとしたんですね?」
「そう……だけど、あの事件が起きたせいで、カイとの繋がりを切らなければならなかった」
……繋がりを切らなければならなかったか……。
つまりあのまま連絡をとってれば、他の人間が関与してくるおそれがあったという事だろう。
「でも、辛い過去を持つカイなら西条の子の気持ちを理解できる。アリスが指示をしなくても繋がりだけを持たせれば、どうにかなると思って、カイと西条の子が三年間同じクラスになるようにだけ手を打っておいた」
「……え?」
俺はアリスさんの言葉に首を傾げる。
手を打っておいたって、俺の学校公立校なんだけど……?
私立みたいに融通がきいたりはしないだろ……?
でも、実際二年間は同じクラスだったしな……。
というか、そうなると来年も同じクラスという事か?
「大人は皆権力に弱い。特に、アリスの場合は公立の職員の方が話が通しやすい」
俺が質問をしても居ないのに、アリスさんは俺が気になっている事を教えてくれた。
ただ、なんだよその話が通しやすいって……。
本当、どんなコネを持ってるんだ……。
「今日も二人で遊びに来てたみたいだし、上手くいったみたいでよかった。……本当、遊ぶようになるくらい仲良くなるなんて……」
……なんだろ?
最後ら辺の言葉のイントネーションが下がった気がしたんだが……?
「話を戻すけど、カイはアリアの策がわかる?」
俺が少し気後れしていると、アリスさんがそう尋ねてきた。
「その前に一つ聞きたいんですが、アリアは株の知識が無いと言うのは本当ですか?」
「うん、アリアは株の知識がない」
アリアは――か……。
「その言葉を聞いて確信しました。ですが――俺にはどれがアリアが狙ってる物かがわかりません」
「ううん、他の人間にはわからなくても、カイにならわかるはず」
俺の言葉に、アリスさんが無茶な事を言ってきた。
「あなたは俺をなんだと思ってるんですか……? 俺は超能力者じゃないんですよ? 他の人間がわからないのなら、俺がわかるはずがないでしょ?」
「本当にそう思う? 心当たりは何もない?」
俺はその言葉で、一つだけ心当たりがある事を思い出す。
だけどあれは、時期的に無いと判断したものだ。
しかし、他に心当たりなどない。
となると……。
「もしかして、発表の時期が早まりましたか?」
「そう。大分前にアリスが発表の時期を早める様にアリアに指示をしていたから、それの発表されるタイミングは二週間を切ってる」
……そんな簡単な物じゃないはずだけどな……。
発表の時期を変えるとなると、色々と手続きが必要なはずだ。
という事は、製作が間に合うかどうかもわからないタイミングから発表を早める様に動いていたはずだ。
……だから、あの時新庄が安堵していたのか。
発表の時期がすぐに迫ってるのに、肝心のプログラムが間に合わなければ洒落にならない。
「じゃあ、納期を縮める指示もアリスさんが出したんですね?」
「そのとおり」
「どうしてそんな事を?」
「納期が三ヵ月とか、カイがなめた事言ったから」
……はい?
聞き間違いでしょうか?
今、納期三ヵ月をなめているとか言われた気がしたんですが……?
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!? 普通ああいうプログラムって数年単位で作る物ですよ!? それを三ヵ月でなめてるってどういうことですか!?」
「それは普通の人間がすればでしょ? カイはAI知識もアンチウイルスソフトについても熟知してたし、元となるプログラムも完全に把握している。それに、過去に今回のようなAIに近い物も作らせた事があったはず。だから一ヵ月あればできるはずなのに、三ヵ月とかふざけてる」
えぇ……この人なんでこんな急に厳しくなってるんだよ……。
俺、KAIとして称賛されることは結構あったが、こんなに駄目出しされたの初めてだぞ……?
「で、でも……俺今回結構睡眠時間を削って一杯一杯で作ったんですが……?」
「それは、他の事に気をとられてたから。特に女の子にのぼせ上がるとか、カイの癖に生意気」
……バレてる……。
えぇ、この人一体どこまで知ってるの……?
怖い、それを確認するのが怖い……。
「だから、カイが間に合わなければ、アリスがおしおきしてあげようと思って、発表の時期も縮めた」
「……おかしい! それは色々とおかしいです! そんな理由で発表の時期を縮められたら、会社の人間がかなわないでしょ!?」
「アリアには、もしそうなったらKAIを獲得できると言ったら、喜んで変更してくれた」
「……この姉妹、やる事がぶっ飛んでる……」
俺がアリスさんにそう言うと、アリスさんは楽しそうにニコッと笑った。
……おかしい、俺は褒めてないのに、何でこの人はこんな表情をしているんだよ……。
あぁ――もう!
今はそんな事どうでもいいんだって!
とりあえず、アリアがどれを狙ってるか分かった以上、俺も手が打てる。
「アリアを叩き潰す事は了承しますが――いいんですか? これで平等院財閥は多大なダメージを受けますよ?」
俺は頭を切り替え、そうアリスさんに尋ねた。
「心配いらない。確実に勝つにはカイはまだアリスに話があるはず」
「……そこまで読まれていましたか……」
俺はアリスさんの言葉に苦笑いをする。
こちらから交渉することにより、有利な条件で話を進めようとしたが、こっちの思惑はもうバレてしまっている。
「ただその前に、今回の勝負、アリスもアリア側で参加をするから」
「……なんでそうなるんですか……?」
俺はアリスさんの言葉に、そう尋ね返す。
だっておかしいだろ!?
アリアを叩き潰せと言っておいて、なんでこの人が向こう側につくんだよ!?
そこは静観を決めとけよ!
「とは言っても、アリアに頼まれた事をするだけで、後は何もしない」
「……なるほど、つまりあなたが読む役なんですね?」
俺の質問に、アリスさんは肯定も否定もしない。
だけど、それだけで肯定しているのだとわかる。
まぁ、それだけしか参加をしないというのなら問題ない。
そもそも、確実に勝つために手を抜かないと思っていたから、アリアが株の知識が無い以上読む役が居るとは思っていた。
なら、もうそれは気にしない。
「わかりました――それではアリスさん、取引をして下さい」
俺はそう言って、アリスさんと取引をするのだった――。