【番外編SS】ハッピーハロウィン
こちらは185話の後に書いていますので、ネタバレが嫌な方は185話以降に読んで頂けると幸いです(>_<)
「「トリック・オア・トリート!」」
アリスさんに呼ばれて家を訪れると、なぜか可愛いちびっ子二人が玄関で待っていた。
ちびっ子という事からわかるように、玄関にいたのは桜ちゃんとカミラちゃんだ。
桜ちゃんは猫耳のカチューシャや尻尾を着けており、服装の見た目からしても猫娘のコスプレをしているようだ。
カミラちゃんは魔女のハットを被ってフリフリがついた黒いドレスを着ている事から、魔女のコスプレをしているのだろう。
……どうしよう?
二人とも可愛すぎるんだけど。
というか、二人がコスプレをしているところを見て思い出したけど、今日はハロウィンだったのか。
だからアリスさんも、お菓子を大量に買ってくるように言ってきたのだろう。
俺の両手には今、大量のお菓子が入った袋がある。
ここに来る際にどこかで買ってくるようアリスさんに言われたのだ。
「お兄ちゃん、どうかな……?」
二人の可愛い姿に癒されてると、桜ちゃんがモジモジとしながら聞いてきた。
「うん、凄く可愛いよ」
「えへへ……」
俺が褒めると、凄く嬉しそうに桜ちゃんの頬が緩んだ。
何この子。
本当に可愛すぎるんだけど。
「早くお菓子くれないと、なぎ――いたずらしちゃいますよ!」
天使のように可愛い桜ちゃんを見つめていると、今度はカミラちゃんが業を煮やしたように話しかけてきた。
今この子言い直したけど、絶対なぎ払うって言おうとしただろ?
見た目は可愛いのに、本当思考がぶっそうな子だ……。
「はい、お菓子だよ」
「わぁ、ありがとうです!」
しかし、大量のお菓子を渡すと、たちまち目を輝かせる。
この子もこの子でやっぱり可愛い。
……日頃は、凄く嫌われてるけど……。
今日はコスプレをしてて機嫌がいいんだろうな。
普段だったら近寄っただけで怒るのに。
「そういえば、アリスさんはどこにいるの?」
俺を呼んだ張本人の姿が見えない。
「お姉様なら、あそこにいるですよ?」
カミラちゃんが指差すほうを見ると、廊下の曲がり角から綺麗な金色の髪がはみ出ていた。
この家にいる金髪の人間となると、アリアかアリスさんしかいない。
先程カミラちゃんが教えてくれた事からも、アリスさんで間違いないだろうが――どうして隠れているのだろう?
「アリスさん、どうしたんですか?」
出てこないアリスさんに声をかけてみると、アリスさんの体がビクッと震えたのがわかる。
でも、やっぱり出てこようとはしない。
「…………? そっちに行きますよ?」
「だめ……!」
アリスさんに近寄ろうとすると、珍しくも大きな声で止められた。
一体どうしたというのか……。
「――お姉様早く出て来てください!」
痺れを切らしたカミラちゃんも、アリスさんに呼び掛ける。
「猫耳爆弾……後で……おしおき……!」
「なんでです!?」
少し急かしただけでおしおきが決定してしまい、カミラちゃんがすっとんきょうな声を出した。
なんだか憐れだ。
「…………はぁ……。カイ……目を瞑ってて……」
アリスさんはなぜか溜め息をつき、俺に目を瞑るように言ってきた。
なんというか……どうしてアリスさんが出てくる事に渋っているのか予想がついた。
ここは言う通りにしておこう。
……逆らうと、後が怖い。
目を瞑っていると、アリスさんがゆっくりと近寄ってくるのがわかった。
「――いいよ……」
許可を得てゆっくりと目を開けると――目の前に、とても可愛い巫女さんがいた。
俺は息をするのも忘れて見惚れてしまう。
それほど、綺麗で可愛かった。
「何か……言って……」
見惚れていると、沈黙が辛かったのかアリスさんが拗ねたような声を出す。
「あ、えっと……可愛いです……」
「…………そう……」
アリスさんは俺の言葉に短く返すと、背を向けてしまった。
思わず出た言葉とはいえ、可愛いと言ったのは失敗だったか……?
「お姉様……お顔真っ赤ですけど、お熱でもあるのです?」
俺が後悔していると、アリスさんの顔を覗き込んだカミラちゃんが心配したような声を出した。
「猫耳爆弾……! もう知らない……!」
「え、えぇ!? さっきからなんで私怒られてるのです!?」
アリスさんがプイっとそっぽを向いてしまい、カミラちゃんが涙目で驚いていた。
なんというか、本当に憐れだ。
とりあえず今声を掛けると俺にまで飛び火しそうだから、気になってる事は桜ちゃんに聞こう。
「ハロウィンなのにどうしてアリスさんは巫女服なの?」
「えっとね、カミラちゃんのリクエストかな? でも作ったのはよかったけど、最初は全然着てくれなかったの」
あぁ、やっぱり桜ちゃんたちが着てるコスプレ衣装は桜ちゃんが作ったのか。
この子はコスプレ衣装を作る事を趣味にしているし、たまに着てみせてくれていた。
そのクオリティはお店で売ってるものと遜色ないほどだ。
本当、桜ちゃんって咲姫とは違う方向でハイスペックだよな……。
「あのアリスさんがよく着てくれたね?」
正直、頑なに着そうにないんだが。
「だめって言われて落ち込んでたら、最終的には着てくれたの」
なるほど。
さすがのアリスさんでも、シュンっとした桜ちゃんには勝てなかったか。
この子の落ち込んだ表情って反則なんだよな……。
絶対ほっとけないもん。
まぁそれはそれとして――。
「桜ちゃん、写真撮ってもいい?」
――涙目で謝っているカミラちゃんを横目に、俺は妹の猫服姿を写真に収めるのだった。
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