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第34話「義姉の眼が怖いんですが……」

「――ん、よし、出来上がり! 服もバッチリだし、凄くカッコイイよ海斗ちゃん!」

 服を買いに行った次の日――そう言って、如月先生が肩をポンっと叩いてきた。


「ありがとうございます。……それと、そろそろ本気でちゃん呼びはやめてくれませんかね……?」

 俺はお礼を言った後、怪訝な表情をして先生に言う。


「う~ん……それにしても、服はそれにしたんだ……。凄く似合ってるけど、一番似合ってた服を残したって事は、今日の子は本命じゃない?」

 相変わらず俺の言ってくる事を聞き流し、先生はそんな事を言ってきた。


 ……。


 本当、俺の言うことを聞かないよな、この人……。

 というか、もうちゃん呼びを止めさせようとするだけ無駄な気がしてきた……。


「別にそういうつもりではないですけど……」

「ふ~ん、そうなんだ~?」

 俺の言葉を聞いた先生は、何かニヤニヤしている。


 別に俺はわざと一番良いと言われた服を残したわけじゃない。

 ただ、あまり大人っぽい服で桜ちゃんと歩いてると、アンバランスに見えると思っただけだ。

 

「がんばって……!」

 俺が髪型をセットしてもらっている間横に居た華恋さんが、小さい声でガッツポーズをしてエールを送ってくれた。

「ありがとうございます」

 俺はそんな華恋さんに笑顔で礼を言った。


 俺が変な失敗をしない様に応援してくれるなんて、この子は桜ちゃんみたいに良い子だと思う。


 ……目がキラキラとしているのは、別に俺の思い過ごしだよな?

 なんか変な勘違いされてないよな……?


 ――というか、俺ここからまた家に戻るのかよ……。

 

 現在俺は、髪型をセットしてもらうために如月先生の家まで電車を使って来ていた。

 だから、華恋さんも一緒に居たというわけだ。

 

 本当なら何処かで待ち合わせをしたかったが、相手はあの方向音痴の桜ちゃんだ。

 下手なとこで待ち合わせしようものなら逆方向に行かれ、落ち合うのに倍の時間を使いかねない。


「じゃあ、桃井さんの妹さんに宜しくね~」

「はい、ありがとうござ――え、なんで相手が確定されてるんです……?」

 俺はお礼を言って如月先生の家を出ようとした時、今日遊ぶ相手が誰か教えてなかった筈なのに、如月先生が俺の今日遊ぶ相手を特定した事を、疑問に思って尋ねた。


「ん? なんとなくだけど、今日の服は大人しい服だから西条さんの趣味じゃないだろうし、神崎君が緊張した様にないから、慣れ親しんでて妹の様に可愛がってる、桃井さんの妹さんかなぁ~って思ったの」

 そう言って、如月先生はニコッと微笑んだ。


「……先生って、意外と凄いですね……」

 俺は思わず如月先生にそう言った。


 この人……なんでこの鋭い感性を普段から発揮しないんだ?

 そしたらポンコツ教師じゃないだろうに……。 


「ふっふっふ、私はこういう御洒落や恋愛関係には自信があるのよ」

 そう言って、如月先生はまぁまぁ大きめの胸を張った。


「もしかして先生って経験豊富なんですか?」

 俺は如月先生にそう尋ねた。


 もしそうなら、女性関係に困っている(地雷持ちの妹に、甘えん坊になってしまった義姉と、相変わらずストーカー気質のある金髪ギャル)事を相談に乗ってもらえるかもしれない。

「もちろん私ともなれば――」

 俺の質問に、如月先生が聞いてもいないことまで話始めた。 


 しかし、それなら俺としても有難い。

 案外この人とは友好な関係が築けるかも――

「お姉ちゃん、ああいう性格だから誰にも相手にされないの……。だからファッションとか色々勉強して、知識だけが身に着いてるみたい……」

 ――と、俺が考えてる最中に華恋さんがコッソリと教えてくれた。

 

 あぁ……所謂いわゆる耳年増みみどしまという奴か……。

 俺は未だに目を閉じて指を立て、何かペラペラと話し続けている如月先生を見る。


 ……でも、経験はないとは言え、この人のアドバイスは実際俺の為になった。 

 また何か困れば相談に乗ってもらおう。

 

 ………………そのかわり、困ったらまた助けてあげるとするか……。


「じゃあ、もう俺は行きます。先生にはよろしく言っといてください」

「うん、いってらっしゃい……!」

 俺は語り続けている先生はほっといて、華恋さんの可愛らしい笑顔に見送られ、家に帰るのだった――。





「ただいま~」

 俺はそう言って、家に入る。


「あらあら、どうしたの海斗君? 凄くカッコイイじゃない」

 俺が家に入ると香苗さんが出迎えてくれた。

 

 今日は日曜日で病院が休みの為、父さんも香苗さんも家に居た。

 と言っても、部屋に引き込んでいる俺は、朝の挨拶とかご飯の時にしか顔を合わせないんだが……。


「ありがとうございます。桜ちゃんは居ますか?」

「まぁまぁ、桜の為に御洒落をしてくれたの? たまに一緒にご飯食べる時に思ってたけど、随分仲良くなったのね!」

 俺の言葉に香苗さんが嬉しそうにした。


 自分の娘と、新しいパートナーになった人の連れ子が仲良くやってて嬉しいのだろう。

 俺としても、香苗さんにこんな風に喜んでもらえると嬉しい。


「へぇ……桜の為に……ふ~ん……?」

 俺と香苗さんが話をしていると、リビングから桃井が顔を出した。

 ただ、その顔は凄く不機嫌そうだ……。


「なんでそんな機嫌が悪いんだよ……?」

 俺は凄いジト目で見てくる桃井にそう尋ねた。


 おかしい……少なくとも、俺は何も怒らせる事をしていないはずだ……。

 昨日だって、俺がプログラムを作ってる横で、桃井は漫画を持って来て読んでいたはずだ。


 ……ちなみに漫画は俺のじゃなく桃井ので、何故わざわざ俺の部屋に来て読んでいたのかは謎……。


「別に機嫌悪くないし……」

「えぇ……お前、自分の顔を鏡で見て来いよ……」

「ふん、私はどうせいつも仏頂面ぶっちょうづらですよ~」

 俺の言葉に桃井はソッポを向く。

 その頬は子供が拗ねるみたいに膨れ上がっていた。


 なんでこいつ、こんな機嫌が悪いんだよ……。

 え、俺何もしてないよな……? 

 今日は俺が朝早く出たから、まず顔を合わせてないし……。


「あらあら、いくら桜の為に海斗君がカッコ良くなってるからって、妹にヤキモチをやくのは駄目よ?」

 そう言って、香苗さんがニコニコと桃井の頭を撫でる。

「別にやいてないし……」

 そういう桃井は香苗さんの手から逃れ、俺の方をまたジト目で睨んできた。


 ……香苗さん、流石にそれは見当違いもはなはだしいですよ……。

 桃井の機嫌がさらに悪くなってるじゃないですか……。


「えへへ、お兄ちゃん、お待たせ……!」

 俺達がこんな不毛な会話をしていると、凄くおめかしをした可愛い桜ちゃんが出てきた。


 淡いピンクをモチーフにしたフリフリがついているワンピースと、髪に結びつけた白いリボンが良く似合っている。

 ただこれは、ゴスロリ服までとは言わないが子供っぽい服だった。

 まぁだから、桜ちゃんに似合っているんだが……。

 というか、桜ちゃんなら普通にゴスロリ服でも着こなしそうだな……。 


「ど、どうかな……?」

 俺が桜ちゃんに見惚れていると、桜ちゃんが恥ずかしそうにワンピースの裾を持ちながら聞いてきた。


 か……かわいすぎる……!


「うん、凄く似合ってて可愛いよ桜ちゃん!」

「ほ、本当!?」

 俺が可愛いと言うと、桜ちゃんは凄く嬉しそうな表情で聞き返してきたため、俺はそれに笑顔で頷く。

 ワンピースは胸が大きい人が着ると太って見えてしまう為似合いづらいと聞いていたが、今の桜ちゃんはただただ可愛い。


「お兄ちゃんも凄くカッコイイよ! 昔のお兄ちゃんが更にカッコ良くなったって感じだね!」

「ハハ、ありがとう。桜ちゃんも本当に可愛いよ」

 俺は笑顔でそう言ってくれた桜ちゃんに、誉め言葉を返した。


「よかったわね、桜」

「うん! えへへ……」

 俺達の会話を笑顔で見守っていた香苗さんが桜ちゃんに声を掛け、桜ちゃんは嬉しそうに頬に両手をあて、頬を赤く染めながら笑っていた。


 ただ、俺はそれよりも気になっているものがある……。


 先ほどから桃井が、光を失った目で俺の事を睨んでいるのだ……。


 ……こ、こわい……。

 久しぶりに桃井のこんな顔を見た……。

 そんなに桜ちゃんを俺にとられるのが嫌なのか……?

 まぁ確かに、桃井の奴凄く桜ちゃんの事可愛がってるしな……。


 ………………俺、桃井に刺されたりしないよな…………?

 

 俺は昨日の華恋さんとの会話を思い出し、身の危険に震え上がるのだった――。

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