第25話「手を出せば社会から消すよ?」
今回、なろうで「元ヤンキー現オタクが送るラブコメって!?」を連載されています『黒星の魔王』さんからレビューを頂きましたヾ(≧▽≦)ノ
黒星の魔王さん、ありがとうございました(^^♪
皆さん、読んでくださると嬉しいです(*´▽`*)
「――ねぇねぇ雲母ちゃん」
「ん~? な~に?」
私が先程買った苺ホイップのクレープを食べてると、私のグループメンバーの木村寧々が声を掛けてきた。
私達は今、ショッピング終わりに買ったクレープを食べてる最中だった。
「なんで最近神崎なんかと一緒に居るの?」
「「――っ!」」
寧々の言葉に、葵とみゆがビクンっと反応した。
もしかしたら、海斗の名前がトラウマになってるのかもしれない。
そんな事に気付かず、美紀も興味津々で話に加わってきた。
「そうそう、あれスッゴク驚きだったんだけど、どうしてなの?」
「ん~? ただ単に反応が面白いから、からかって遊んでるだけだよ?」
私は笑顔でそう二人に返した。
本当は違うけど、この子達にそれを言う必要は無い。
下手に教えて、海斗に興味を持たれると困るもん。
神崎海斗――見た感じ陰キャのオタクにしか見えない男子。
目立った感じが無く、一日二日ならクラスに居なくても気づかれないほど存在感が薄い。
話しかけてもまともに目を見て話す事すら出来ない――話しててイラつくような男子。
それが神崎海斗という人間だった。
でも、今私が抱いてる彼の印象は違った。
彼が陰キャに見えるのは前髪が長すぎて目が見えないからだ。
私は一度だけ彼の顔をきちんと見た事はあるけど、正直そこら辺のアイドルよりは遥かにカッコよかった。
あの前髪の下には凛としたカッコイイ目が隠れてるの。
それに、本当の性格はまともに喋れないどころか、結構上から物を言うタイプだ。
何故彼が学校で猫を被ってるのかは、はっきりとした理由はわからないけど、過去にあった出来事が原因というのはわかっていた。
そんな彼に、私は今付きまとってる。
……なんでって?
決まってるじゃない。
私が彼の彼女だからよ。
――と言うのは、私が彼とした約束を無理矢理そう言う風にしてるだけなんだけどね。
だって、そうしないと私は彼の傍に居られない。
私はそれほどの事を過去にしてしまっている。
……じゃあ、付きまとったら駄目じゃないのかって?
それは無理。
だって、彼の事気に入っちゃったんだもん。
知ってる?
彼が本気でキレた時のあの眼ってね――まるで支配者の様な眼なの。
あの目で見られると凄くゾクゾクする。
私はあの眼が気に入った。
もっとあの眼で見てほしいとも思う。
……とは言え、あの眼で見られると言う事は彼にとって敵として見られてるって事だから、それはそれで困る。
だって、彼に嫌われるのはヤダもん。
全く、ままならない物よね~。
それにね、彼は私を西条としてではなく、雲母として見てくれるの。
……え、何言ってるのかわからないって?
全く、しっかりしてよね。
彼はこれくらいでしっかり理解してくれるよ?
だからね、西条の家柄で私を見てるんじゃなく、一人の雲母って女の子で見てくれてるって事。
私の周りの子は、私が西条家の人間でお金を持ってるから近寄ってくる。
まぁ、私も美少女だから見た目で寄ってくる男子もいるけど、そんなのお断り。
見返りを求めて近寄ってくる人間には興味がないの。
だから、私の見た目で近寄ってくる男子って、要は体目当てって事でしょ?
本当勘弁してほしいよね。
鏡見直してから出向いてくれるかな?
まぁ、それでイケメンだよって言ってくる男子の場合、好みじゃないから無理って断るけどね。
それでもって言うなら、神崎海斗って人間に生まれ変わったらいいよって答えてあげる。
……同姓同名だからって来たら、馬鹿じゃないのって言って社会から消してあげる。
まぁ、そんな冗談はともかく、私はそれほど海斗の事が気に入っていた。
それにね、海斗って私が付きまとって困らせても、嫌がるけど本気で拒絶したりしないの。
無視したりもせずに、普通に相手してくれる。
あれほどの事をした人間に対する態度としては甘いと思う。
でも、彼は私にもう気にしないって言ってくれた。
勘違いしたらいけないのは、それは許してくれてるわけじゃない。
私が『許してくれるの?』って聞いたら否定された。
落としどころにしたいだけだって。
だから、気にしない様にしてるから態度には見せないけど、彼の心の中では私はまだ許してもらえてない。
まぁ、私が彼に付きまとう理由はもう一つある。
それは、彼の存在が私にとって必要だから。
私が海斗にこの学園に来た理由でボカしたもう一つの理由――それは、あいつに勝てる人間を見つける事だった。
このまま社会に出ると、私はまたあいつに潰されてしまう。
だから、県内一生徒数が多いこの学校で優秀な人間を見つけようと思った。
最初に眼を付けたのは、桃井咲姫だった。
全国模試でも上位に入り、運動も男子並みに出来ると聞いて期待したのだけど――期待外れだった。
彼女は真面目だった。
真面目な人間じゃあ、あいつには勝てない。
それどころか、私にとって一番の邪魔な存在になってくれた。
……知ってる。
これは逆恨みでしかないって事は。
でも、私にはなりふり構ってる余裕がなかった。
だから、過ちを犯してしまった。
――でも、そのおかげで海斗という人に出会えた。
彼ならもしかしたらあいつに勝てるかもしれない。
だから、私が彼の事を好きになってなくても、結局付きまとってたと思う。
「――雲母ちゃんもひどいね~。そんな事したら神崎が勘違いしちゃうよ~」
私の答えを聞いた美玖がそう言って笑っていた。
「そうそう、だって神崎凄くキモいせいで友達もいないのに、雲母ちゃんみたいな可愛い子にあんな風に接しられたら、絶対惚れちゃうだろうしね~」
寧々も美玖に同調する。
葵とみゆの二人は冷や汗を流しながら私の方を見ていた。
彼女達は海斗の本性を知っている。
だから、私が彼に付きまとってるのも本気だとわかってるはず。
それなのに、私の想い人を美玖達が馬鹿にしてるから、私が怒るんじゃないかと焦ってるんだと思う。
だけど、止めに入ろうにもあの時の事を話せない二人には海斗を庇う事が出来ない。
でもね、私は海斗の悪口を言われても、気にしないの。
むしろ、もっと言ってくれてもいいくらい。
だってね、彼の魅力は私だけが知ってればいいもん。
彼の魅力に気づかれて、下手にライバルが増える方が困る。
彼の本当の姿――特に容姿に気付けば、絶対彼に言い寄る女子が出てくる。
だから、私も海斗の事を庇ったりはしない。
「うわ~それは困るな~」
私は二人に笑いながら冗談めかしにこう答えた。
あくまで、私は海斗をからかって遊んでるだけってスタイル。
「あ――でもさ、神崎って桃井妹に懐かれてるよね?」
「知ってる知ってる! 何故だか他の男子が話しかけようとしたら逃げるのに、神崎にだけは自分から近寄ってニコニコしてるんだよね!」
桃井妹は少し前から噂になってる女の子だった。
見た目が小学生っぽいけど、グラビアアイドルくらい胸が大きいという事だけでも凄く目立つのに、あの学校一のモテ女の妹って事で、この学校でもう知らない人間はいない。
しかも、姉譲りで凄く可愛い。
そんな美少女が、少し前から一人の男の傍にずっと居るという噂があった。
その相手が海斗だ。
…………正直、海斗が桃井妹に盗られるんじゃないかって心配した時もあった。
でも、海斗に桃井妹が抱き着いてる時に心配ないと確信した。
抱き着かれてる海斗が、妹の扱いに困るお兄ちゃんって感じにしか見えなかったからだ。
海斗は桃井妹の事を女の子として見ていない。
それなら、彼の傍に桃井妹が居る事を嫌がって海斗に嫌われるより、桃井妹が居ても気にしない方が良いと判断した。
とは言え、やはり他の女の子に優しくしてるのを見るのは面白くないから、私が海斗の傍について独り占めするけどね。
……ん?
矛盾してるって?
違うよ、桃井妹が海斗の傍に居ても追い払わなくて、私が先に海斗の傍に居たらあげないよって事。
「――まぁでも、雲母ちゃんが神崎の事好きじゃないなら問題ないよね?」
「え、何が?」
私が考え事をしてると、寧々が凄く良い笑顔で聞いてきた。
「ほら、なんか男子達が桃井妹に懐かれてる神崎が気に入らないからって、今度呼び出してシバくって話!」
……なにそれ……?
私、初耳なんだけど……?
「神崎ってオタクだし、社会のゴミって感じだから、やられちゃえ~って感じだよね」
美紀も寧々同様凄く良い笑顔をしていた。
海斗がボコボコにされるとこを早く見たいっといった感じに見える。
「あはは、ねぇねぇ美紀、それに寧々」
「ん、なにかな?」
私が笑いながら二人の名前を呼ぶと、二人がこっちを見た。
私はそんな二人に――
「海斗に何かしたら、そいつ社会から消すから」
――と、笑顔で告げた。
「「ひっ――!」」
私の言葉に二人は凄く怯えた表情をする。
あ、二人じゃなかった。
葵とみゆも怯えた表情をしていた。
まぁでも、これはこの二人が悪い。
海斗の悪口を言うのは許すけど、実害を加えるとなれば話が別だ。
私の大切な人を傷つけたら絶対許さない。
……それに、これはこの子達の為でもある。
海斗に手を出せば、どう考えても結果的に潰されるのは手を出した奴だ。
そりゃあ海斗はゴツく無いから喧嘩強くなさそうだし、集団で囲めばボコれるかもしれないけど、後で倍以上の仕返しが返ってくる気しかしないもん。
…………というか、海斗って実際どうなのかな?
これで喧嘩も強かったら、ちょっと神様、海斗に色々と与えすぎな気がするな~。
贔屓は良くないんだよ~、神様?
海斗に喧嘩スキルとかいらないからね?
与えてるなら、私が許可するから今のうちに消しといてよ?
私、海斗に支配されたいけど、痛いのやだからね?
――私は怯え続ける美紀達を横目に、そんな事を神様に語りかけてみるのだった――。