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第24話「不思議な女の子」

 うぅ……頭が重い……。


 昨日……というか、今朝方まで桃井と一緒にエロゲーをしていたせいで、俺が寝たのは朝の7時ごろだった。

 いや、エロゲーは6時には終わったのだが……もう冷や汗を掻きまくった俺は、汗が気持ち悪くて一度シャワーを浴びに行ったのだ。


 え……なんで冷や汗を掻いたかって?

 一度、女の子と一緒にエロゲーをしてみろ……。

 それで全てがわかる……。


 ――とかネットで書いたら、きっと炎上間違い無しだろう。 

 だが一つ言っておく、女の子とエロゲーするのなんてやめておけ。

 想像しているようなもんじゃないから。

 Hシーンに突入した時の気まずさとか、隣に女の子――しかもそれが美少女だった時、その子が恥ずかしそうにしながらも頬を染めてHシーンを見てる横に居るとな……マジで自分との戦いになるから……。


 まぁ、そんなこんなで俺は冷や汗を掻いていたんだよ……。

 そして、一度睡眠を取り今に至るわけなんだが……。

 

 ……寝なおしたい……。


 現在午前11時――俺の睡眠時間、約四時間……。

 とはいえ、今日は土曜日。

 本来なら学校もないからいくらでも寝れるはずなんだが……。

 今日、午後1時から顔合わせなんだよな……。


 え、遅くまでエロゲーなんかしてるからだって?

 …………仕方ないだろ、めてもめてくれなかったんだから……。

 それにあんな楽しそうにされたら、止めるのも気がひけるし……。

 というか――。


「――マジで、桃井可愛すぎだろ……」 

 俺は階段を下りながら、顔を覆いついそう呟いてしまった。

 

 あれがギャップ萌えという奴なのか……?

 最早今までの桃井とは別人だった……。


 学校でモテモテの桃井がモテる理由はわからないが、さっきまでの桃井がモテるって言うんなら、わかる気がする……。


 まじ、桃井の中学時代の同級生何やってくれてんだよ……。

 お前らが桃井に付きまとわなければ、俺は天使の様な妹(最近、恐怖を感じ始めた)と、女の子っぽい美人で可愛い義姉を手に入れられてたのに……。


 ……あいつ、目を覚ましたら元の桃井に戻ってるとかないよな……?

 なんか、お決まり展開すぎて怖い……。


 俺、もうあの桃井に言い返せないよ?

 一方的になぶられて終わっちゃうよ?


 俺はそんな風に、いつもどーりの脳内会議を開きながら、リビングへと入った。


「おはよう……」

「あ――おはよう、お兄ちゃん……というより、もうこんにちはだけどね」

 俺が挨拶をすると、桜ちゃんが『仕方ないな~』っと言った感じの笑顔で出迎えてくれた。


 よかった……もう機嫌はスッカリ直ってるようだ。

 

 桜ちゃんがいつもどーりの天使の様な妹に戻っててくれて、俺は胸を撫でおろした。


「いつもは休みでもしっかり起きてくるのに、どうしちゃったの? ラノベ読んでて、夜更かししちゃった?」

「あ――う、うん、そうなんだ」

 俺は桜ちゃんの質問に取り繕うような笑顔を向けて答える。


 流石に、朝まで桃井とエロゲーしてただなんて言えないよな……。

 というか、純情な桜ちゃんにはエロゲーという言葉を知ってほしくない。


 …………エロゲーはHが目的だけのゲームじゃないからな?

 実際、オープニングムービーとか凄く良いの多いし、歌も神曲有るし、何よりシナリオが良いからな!


 ……だから、俺は一体誰に話してるんだよ……。


「――お姉ちゃんも起きてこないね……。起こしてこようかな?」


 あ――。 


「待って」

 俺はそう言って、桃井を起こしに行こうとする桜ちゃんの腕を取り、引き留める。

「桃井は遅くまで生徒会の資料を作ってたんだ。だから、もう少し寝かしといてやってくれ」

「あ……うん」


 俺の言葉に桜ちゃんはニコッと笑って頷いた。


「――ふふ……」

「ん? どうかした?」

 いきなり桜ちゃんが口に手を当てて嬉しそうに笑い出したため、俺は桜ちゃんに声を掛けた。


「えっとね、いつの間にかお兄ちゃんとお姉ちゃんが仲良くなってるから、嬉しかったんだ」

 桜ちゃんはニコニコの笑顔でそう言ってきた。


 そういえば、この子には桃井と仲良くなってほしいと言われてたんだよな……。

 それで喜んでくれるなんて、本当この子はいい子だな……。


「昨日、二階で喧嘩を始めちゃった時はどうしようかと思ったよ~」

「……え!? 気づいてたの!?」

 俺の言葉に、桜ちゃんがキョトンっとする。

 

 え……俺達が喧嘩したこと知ってるって事は、必然的に俺がエロゲーを持ってるって会話も聞いてたんじゃないの……?


 俺の背中に嫌な冷や汗が流れる……。


「え? だって、あんな大声でドアを開ける開けないの問答してたら、一階まで丸聞こえだよ?」

 不思議そうに俺を見上げながら、桜ちゃんがそう言った。


 あ……そっか……。

 焦った……。


「お、お兄ちゃんも……男の子だもんね……。仕方ないよ……」

「――っ!?」 

  

 え、桜ちゃん!?

 何が仕方ないのかな!?

 というか、なんで頬赤らめながら、俺の方をチラチラ見上げてるの!?


 ……今更だけど、この子が俺と桃井が喧嘩してて、心配しないと思うか……?

 喧嘩してたら、絶対見に来るだろ……?


 多分、俺達が喧嘩してる姿を隠れて見てたはずだ……。

 

 ……え、この子何処まで知ってるの!?

 俺達が一緒にエロゲーをしてたって事、知らないよね!?

 

 ……どうしよう、気にはなるが――答えを聞くのが怖い……。

 

 結局俺は、ニコニコして昼ご飯を作ってくれている桜ちゃんの後姿を見続けるのだった――。


 ――え、俺が料理をしていない理由?

 ……桃井に文句言われて以来、桜ちゃんが料理担当になったんだよ……。  


 



「――ふざけないでください!」 

 俺はそう言って、目の前に座るスーツ姿をしている四十代後半くらいの男性に怒鳴る。

 今は顔合わせの最中なんだが――俺は現在この人と揉めていた。


 ……普段の俺なら初対面の人にこんな事を言わないが、それでも譲れないものがある。

 ここで俺が引き下がれば、まためんどくさい事になるのだ。


 というか、こういう対応ももう慣れた。

 だから、俺はビジネスの時だけは普通に喋られるようになったのだ。

 ……とはいえ、人が苦手なものは苦手だから、普通に話せるとは言っても憂鬱なのには変わりない……。


「お願いです、そこをどうにか!」

 目の前に座る男の人はそう言って、頭を下げる。

 大分だいぶ年下の俺に対してそんな風に頭を下げる事が出来るなんて、素直に凄いと思う。


 本来なら尊敬にも値するような人なんだが……。

「それは契約違反です! そこまで言うのなら、僕はこのプロジェクトを引き受けません!」

 俺はそう言って椅子から立ち上がり、ドアの方に歩き出す。


「ま、待ってくれ! 君ほどの才能をこのまま野放しにしておくのは勿体ない!」

 俺の背中からそんな声が聞こえてくるが、俺は気にせずドアを開けた。


『KAI』という俺の一部しか知らないくせに……何が勿体ないだよ……。


 ドン――!


「「うっ――!」」

 ドアを開けて出た瞬間、何かにぶつかってしまった。

 だが、なんだか衝撃は軽い。


「うぅ……いたい……」

「え……?」


 俺は声がした足元を見る。


 そこには()()()()()()()()、俯いて尻餅をついてる金髪の女の子が居た。

 

 ……あれ? 

 どうしてこの子――。


 ――いや、それよりも謝らないと!

「すみません、大丈夫ですか?」

 俺はそう言って、右手を差し出す。


「大丈夫……」

 彼女はあまり大きくない声でそう言って、俺の右手を取り立ち上がった。

 

 ……軽い子だな……。


 その女の子は立ち上げると、俺の方を見た。


「――っ!」

 俺はその女の子の顔を見て驚愕する。

  

 平等院アリア……。

 

 目の前の金髪少女は、フワフワとした綺麗な天然の金色をした髪をしていて、それを下に真っ直ぐに下ろしたストレートロングヘアーだった。

 

 髪型はテレビで見た平等院アリアとは違うが――髪型を変えることなど珍しくない。

 何より、その顔立ちがテレビで見た平等院アリアだった。


 この会社は平等院アリアの管轄だったのか……。


 だけど……なんだ?

 顔立ちはソックリなんだが、受ける印象が違う。

 

 目の前の少女の瞳は、綺麗な碧眼の色をしているが、なんだか透き通った――まるで飲み込まれそうになるような大きな瞳をしていて、全てを見通しているんじゃないかとさえ錯覚させられるようだ。

 そして、なんだかボーっとしているようにも見える。


 テレビで見た平等院アリアは、強気なツリ目をしており、ハキハキと喋っていた。

 ……別人なのか?

 

「やっぱり考え直して――アリスお嬢様!?」

 俺が彼女とぶつかりドアの前に居たせいで、何か勘違いした後ろにいた男性が来たのだが――俺の目の前に居た少女に気付き、驚いていた。


 アリスか……。

 やっぱり、別人だったようだな……。

 平等院アリアの家族か?


「ど、どうしてアリスお嬢様が……?」

 後ろにいた男性が平等院さんに駆け寄り、質問していた。


 彼にとっても、彼女の登場は予想外だったようだ。


「ぶつかって……転んだだけ……」

「誰とぶつかったんです!? まさか――!?」 

 そう言って、男性が俺の方を見る。


 俺はこれだけで察する。

 めんどくさいことになった――と。

 この男に口実を与えてしまった。


「なんて事してくれたんですか!? この御方は平等院財閥のご令嬢ですよ!? どう責任取ってくれるんですか!?」

 

 ……やっぱそう来るよな……。

 この男は、どうしても俺にあの条件を飲ませたいんだ。

 これ幸いにこの状況を利用するだろう。

 

 ……さっきまで、尊敬できる人間だと思っていたのに……まぁ、こんなもんだよな……。

 自分の立場が下の時はあくまで下手、立場が上回れば手の平を返す。


 本当……反吐が出る……。


「大丈夫……やめて……」

「え?」

 平等院さんが男の服を引っ張り、首を横に振った。


「しかし――」

「アリアに知られるよ……?」


「「……?」」 

 平等院さんの言葉に俺と男の人が首を傾げる。

 その態度にアリスさんが不満そうな顔をした。


 どういう事だ?

 平等院アリアに知られる?

 俺が彼女にぶつかった事をか?


 しかし例えそうだとしても、その責任をここで俺に負えと言ってきてるのだから、知られた所で問題ない筈だが?

 それに、それをその男に言ったところで、そいつは何も困らないだろ?


「説明、しないといけないよ?」

「――っ!」


 そう言う事か――!

 

「どういうことですか?」

 男性は意味が分からないと言った感じで、平等院さんに首を傾げている。


 ……この男、気づいていないのか……?

 どうして、彼女が俺にじゃなく自分にそんなことを言ってきているのかを……。


 平等院さんは疲れた様な顔をして、溜息を吐く。

「もう……いいよね……?」


 平等院さんは、今度は俺の方に話しかけてきた。

 俺はそれに頷くと、彼女は満足そうに微笑んだ。


「でも……この人納得していない……から……」

「あぁ……はい……」

 俺は平等院さんが言いたい事を理解し、男の方を向く。

 俺の不注意が原因だし、丸く収めるには仕方ないか……。


「先ほどそちらの女性を転ばせてしまった事をお詫びします。申し訳ありません。とは言え、故意ではなく、あくまで事故ですので、あの件は飲めません」

「しかし――」

 俺の言葉を不満そうに男性は受け取る。

 だが、俺は言葉を続けた。

 

「とはいえ、言葉だけのお詫びだけでは納得頂けないでしょう。だから、先程お断りさせて頂いたプロジェクトはやらせて頂きます」

 俺はそう言って、頭を下げた。

 

「いや、それだけで――」

 男はまだあの件に拘ろうとする。

 まぁ、この男の立場からすれば仕方ないのだろうが――その行為、自分の首を絞めている事に気付けよ……。


「それでいい」

 男の声を遮る様に平等院さんが口を挟んだ。

「いや、しかしアリスお嬢様――」

「行って」

 平等院さんは男の言葉を無視し、俺に行くように告げた。


「それでは失礼します」

「あ、ちょっ――!」

 俺が平等院さんの言葉に従い頭下げて背を向けると、男の呼び止める声が聞こえた。


 だから俺は振り返ったが、平等院さんがそれを止めたため、俺は歩きだした。

 男の方はまだ何か言いたそうだったが、相手は平等院財閥のご令嬢だ。

 強く言う事も出来ないのだろう。


 しかし――やられたなぁ……。

 

 あのアリスという女の子、俺がぶつかった時、俺の方に体の正面を向けた状態で尻餅をついていた。

 

 普通なら、気にする事ではないように見えるかもしれないが、ドアを出た直後に俺とぶつかったにしては、その体勢はおかしい。

 もし廊下を歩いている状態でぶつかって転んだのなら、横向きで倒れているはずだ。


 つまり、俺の方に正面を向いていたという事は、部屋に入ってこようとしていたか、ドアの方を向いたまま立っていたという事。

 しかし、あの部屋は社員が使う小さい会議室だったため、俺と変わらない年頃の彼女が一人で入ってくるのはおかしい。

 という事は、ドアの前で立っていたのが濃厚っという事。


 じゃぁ、何故立っていたのかって事だが……それは俺にもはっきりとした理由はわからない。

 中の様子に聞く耳を立てていたとしても、その理由がわからなかった。


 だけど、俺が彼女にぶつかったせいで、あの場を丸く収めるには俺が断ったプロジェクトを引き受けるのがベストだった。

 向こうが契約違反をしたせいで断る事になったが、元々俺は引き受ける為に来ていたのだし、向こうもきちんとお金を出してくれる。

 だから、あのプロジェクトを引き受けるのは俺にとってもあの会社にとってもプラスで有り、マイナスではない。

 

 つまり、あの子が俺がプロジェクトを引き受けなければいけない様にした可能性が高い。

 

 それと、あの男が要求しようとした件を飲むのをアリスさんが止めたのに、今回のプロジェクトならお詫びに引き受ける事を彼女が認めた理由についてだが――今回のプロジェクトは元々予定されていたもの。

 だから、俺が引き受ける引き受けない関係なしにプロジェクトは元々あり、上にも承認を頂いていたはずだから、態々(わざわざ)申請する必要が無く、あの場で起きた事を上が知る事はない。


 だが、あの男が要求してこようとしたものは、予定されていなかったもの。

 平等院さんが何処まで知っているのか――という謎は残るが、上の承認がきちんと要る内容だった。


 という事は、上に説明しなければいけなくなるのだが――あの男が誤魔化して上に報告したとしても、今回無理矢理用件を飲まされた俺は不満を持っているだろうから、正直に『今回ご令嬢を転ばせた責任をとったんです』と、報告する。

 しかしそれを報告すれば、詳しい状況説明が求められる。

 つまり――あの男が俺に契約違反を働き、俺が怒ってドアを出た際にご令嬢にぶつかったという事を上が知る事になる。

 そう――あの男が『契約違反をしてプロジェクトの為の交渉を失敗した』という失態を、自ら上司に進言する様なものだ。


 だから、平等院さんも彼を止めたのだろう。

 彼女にとって、プロジェクトが破綻にならなければいいだけであって、それ以上を望んでいなかったし、自分が引き起こしたせいであの人が責任を問われるのを良しとしなかったんだと思う。


 ――とはいえ、これは全て俺の仮説だ。

 全てを知るのはあの――平等院アリスと言う女の子ただ一人。


 ……しかし――。

 平等院アリアの名は有名だが、アリスさんの名前は初めて聞いたぞ?

 あれほどの少女が知られずに、何故アリアさんの名前だけが広まっている?

 アリアさんという女の子は、あれ程の子が陰になる程凄い存在なのか?

 

 それとも――やはり、俺の考えすぎなのだろうか……?

 ……何はともあれ、このプロジェクトが終わったら平等院財閥とは関わらない方がいいな……。

 平等院アリアに目を付けられても困るし……。


 俺はそんな事を考えながら、帰路につくのだった――。

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