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第21話「地雷は何処にあるかわからないから地雷だよね……」

「「「……」」」

 

 ……き、きまずい……。

 俺達は今、いつもの三人で黙って食卓を囲んで食事をしていた。

 

 ただ黙っているとは言え、テレビがついている為、静寂ではない。


 そして、俺の目の前で食べている桜ちゃんはずっとニコニコしている。

 本当、可愛い妹の笑顔のはずなのに、何故だか俺の冷や汗は止まってくれない……。

 

 桃井はと言えば、先程から俺の方に『また約束を破ったわね?』と言った感じの眼を向けてきている。

 

 い、いや……確かにそれもあるんだが、これはそれが原因じゃないんだよな……。

 どう考えても、西条とのやり取りのせいだろこれ……?


 とは言え、そんな事桃井に言えるわけがない……。

 昨日だって、多分、『自分を追いつめた女と遊ぶなんて』って感じの理由で怒ってたし、そんな女に彼女発言されたなんて言ったら、どんな目にあわされるか……。


 何より、目の前で笑顔を絶やさず威圧してくる女の子をどうにかしたい……。

 いつもは癒しの笑顔のはずなのに、今はその笑顔から恐怖しか感じない……。


「――この人……さっきのお兄ちゃんの彼女さんみたい……」


「「――っ!?」」


 テレビを見ていた桜ちゃんの呟きに、俺の冷や汗は倍増した。


「へぇ――なるほどね……?」

 テレビに映る人物を確認した桃井は、光が抜け落ちた目を俺に向けてきた。

 

 俺はそれに気付かないふりをして、テレビの方見る。

 そこに映るのは、髪をツインテールに結んでいる金髪の女の子。

 確かに一見すると、西条に似ている。

 まぁ、西条は髪を片側だけに結んでいるんだが……。


 だが、髪染めしている西条とは違い、このテレビの少女――名を平等院アリアと言う女の子は、恐らく地毛だ。

 綺麗な天然の金色をしており、目は碧眼の綺麗な色をしている。


 彼女は平等院財閥と言う、西条の家と同じ日本三大財閥の一つと呼ばれている財閥の娘だ。

 何故そんな子がテレビに映っているのかと言うと、彼女は今話題の敏腕女子高校生社長だからだ。

 

 この子は女学園に通いながら四つの会社を抱えているらしく、そのうちの一つが今テレビ放送をしているテレビ局らしい。

 恐らくは親から引き継いだ物なのだろうが、高校に通いながら立派に社長を務めている事から、話題になっていた。

 

 自分のテレビ局の番組に出るのかよ……とは思うが、彼女はアメリカ人とのハーフらしく、その見た目は凄く可愛くて、経営者の腕前と合わせて注目を浴びている。

 だから、視聴率が取れるという事で出演しているのだろう。


 俺は彼女の事を少し前から知っていた。

 だが、別に面識があると言ったわけではない。

 ただ、ネットでは大分前からこの子が噂になっていただけだ。


 凄く強気な性格らしく、相手の弱みを握って無理矢理自分の要求を通すスタイルで、何かと攻撃的らしい。

 しかしそれなのに、一切無理が無く、深追いをしない事から、今まで取引を失敗した事がないとか。

 攻撃的なスタイルと深追いをしないと言うのが両立できるのかと疑問にはなるが、それが出来ているからこそ彼女の名が知れ渡っているのだろう。


 しかし……平等院財閥……か。

 実を言うと、今週の土曜日に俺はその平等院財閥の系列であるシステム会社に行くことになっている。

 新たにプロジェクトを引き受ける為の顔合わせなんだが……。

 正直、あまり行きたくないと言う気分だ……。

 

 人と話すのが苦手な俺にとって、こういう顔合わせは嫌いなのだ。

 だからこそ、今の俺は一番最初に顔合わせをして、それ以降は全てメールでやり取りをする。

 

 流石に顔合わせ無しは駄目だという事で、嫌々ながらそうしているのだが……。

 ちなみに、俺の名前は明かさずに、『KAI』というハンドルネームを使ってやりとりしている。

 

 まだ始めた時の頃は普通にフルネームで引き受けていたのだが――後々に色々とめんどくさい事になり、ハンドルネームに変え、住所を教えていないし、連絡先もメールアドレスしか教えていない。

 まぁそれが全て成り立つのは、完全にプログラムが仕上がってからお金を受けとるからというのもあるが――当然他にも理由がある。


 何故そんな特例が認められているのか――とか、何故それで企業から依頼が来るのか――などは、いずれわかるだろう……。


 それと、俺がどうしてそこまでして仕事を引き受けているかと言えば、前に言った通り趣味だからだ。


 いや、最初はただお金目的だったよ?

 でも、一から作り上げたプログラムが、自分の思い通りに動いた時の高揚感を俺は気に入っていた。

 そしてどうせ作るなら、ラノベやエロゲーを一杯買えるようにお金をもらえた方が良いから、企業から仕事を引き受け続けていた。


 まぁ、そんなお金は割とすぐに稼ぎ切っていたのだが……それのほとんどは、桃井の一件で使ってしまったしな……。

 

「――やらしい……」

「は……?」

 俺が今週末の事にちょっと気を重くしていると、意味不明な事を桃井が呟いたため、そっちを見る。

 すると桃井は、俺の方を光を失った目でジーっと見ていた。


 ……忘れてた……。

 その目をされてたから、テレビに視線を逃がしたんだった……。


「そんなにジーっと見つめちゃって、本当、金髪の女の子が好きなのね?」

「いや、それは誤解なんだが……」

「誤解? じゃあ、お兄ちゃんは好きでもない人を彼女にしたの?」

 俺が桃井に言った言葉に対して、桜ちゃんが敏感に反応した。


 あ――とうとう笑顔が消えて、頬を膨らませてる!

 なぜだろう、怖くない!

 でも、表情からして怒っている!


「えっとな、桜ちゃん。何回も言うけど、俺と西条は付き合ってないからな?」 

「でも、金髪のお姉さんは彼女だって言ってたよ?」

 このやりとり何回するんだよ……。


「だからな……西条が勝手に言ってるだけだってば」

「それは思わせぶりな態度をとった、あなたが悪いんじゃないかしら?」

 俺が桜ちゃんにもう何度目になるかわからない言葉を言うと、今度は桃井が反応した。


 まって、何この状況!?

 桃井姉妹が、二人がかりで俺を追いつめてくるんだけど!?


「桃井、お前ならわかるだろ?」

 俺は西条と俺との間に有った出来事を知る、桃井の説得にかかる。


「さぁ? 私が知ってるのは、あなたが西条さんにアゴクイや壁ドンをした事だけね?」

「へぇ……?」

 

 あぁああああああああ!


 思いっきり地雷踏んだ!


 桃井の奴、何言ってくれてんの!?

 何故かわからないけど、桃井の言葉に桜ちゃんがまたニコニコの笑顔になった!

 そして背景に『ゴゴゴゴゴゴゴゴ』って文字が見える!


 ――俺は桃井姉妹を納得させるのに、ここから一時間を費やすのだった――。

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